ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 19 "Potentially Fatal Situation"






Action24 −祝品−








 大苦戦したが、大勝利。カイが立てた作戦は予想外の事態に遭いながらも、類稀な幸運と仲間全員の総力によって見事完遂された。死傷者はゼロ、文句の付けようもない完勝である。

全員で戦っただけあって、誰もが皆傷付いている。スーパーヴァンドレッド誕生により傷こそないカイ達も、連戦による疲労が濃い。ニル・ヴァーナ艦内のクルー達も同様である。

それでも地球母艦という巨大な敵を相手に、実質に連勝を成し遂げたのは大きい。残る母艦は三隻、少なくとも敵戦力の3分の1は削れたのだ。


未来への光明が見えてきたという点においても、今回の勝利には大きな意味があった。


「あー、疲れた。腹も減ったし、もうクタクタだ」

「だらしがないぞ、カイ。勝利した後だからこそ、気を引き締めるんだ」

「じゃあ青髪、母艦の外に行って助けを呼んできてくれ。俺達、ここで待ってるから」

「むっ……」

「やめな、カイ。メイアも、今回は勝利の立役者なんだ。引き締めるのも大事だけど、今くらい勝利の余韻を味わっておきな」

「了解です」


 擬似進化を成し遂げた敵を倒して、スーパーヴァンドレッドを分離。パイロットのみならず、機体の損傷も綺麗に修繕されているが、そのまま帰る気にもならずに腰を下ろしている。

ウイルスにより母艦のメインシステムは完全に沈黙、セキュリティも生体兵器が破壊して丸裸。無人兵器も行動不能となっており、母艦内は安全となっている。

見渡すかぎり広い空間の中、全員が一箇所に集まって寄り添っている。広々として見応えはあるが、歩き回る気力もなかった。


イベントクルー見習いであり、ジャーナリスト志望のミスティだけは、座りつつも写真を撮っている。


「お姉様をお助けするのが第一目的だったんだけど、あたしが此処に来たのって地球の母艦内部を取材に来たのもあるんだよね」

「戦場の撮影か、見上げた根性だけど危ない奴だな」

「戦場も確かに撮りたかったけど、刈り取り施設の撮影もするつもりなんだ。絶対にあるでしょ、連中の目的を考えたら」

「――先のミッションで敵が放った生体兵器も、母艦内にはあった。人間を殺戮する兵器の搭載、目的を考えれば刈り取り用の兵器もあるだろうな。
カイの推察が正しければ、先程の人機兵器も刈り取った人間の臓器が使用されていたようだからな」

「人間の脳を取り込んでの、人機合体――無茶苦茶するわね、敵も」

「美学もないもない醜悪な兵器よ。とことん、ジュラの気分を悪くさせてくれるわ」


 人機合体、スーパーヴァンドレッドの雛形。人にロボット、そして人外。あらゆる素材が揃っていたカイ達に対し、敵側は足りない部品に人間の臓器を使用して創り上げた。

狂気の理想が生み出した、醜悪な人機兵器。進化を遂げたのは見事であれど、捻れていては醜いだけだ。真なる進化に為す術もなく倒されて、灰燼と化した。

ウイルスでシステムも停止していたので、地球にはこの捻れた進化は伝わっていないだろう。スーパーヴァンドレッドも知らないまま、これでようやく有利となった。

もはや灰も残っていない人機兵器に、ディータは疲れた目を向ける。


「お墓、作ってあげた方がいいかな……?」

「敵の母艦の中だぞ、辛気臭いだけだ。故郷に持って帰ってやりたいが、何処の誰かも分からねえ。せめてここで、手を合わせてやればいい」

「うん、そうするね!」

「撮影はしてある。彼らの無念は此処で消さず、全世界に公開して晴らしてやるわ。犠牲になった人を、数字のままで終わらせたりはしない」


 悲しくも強く決意するミスティを、カイは静かに見守った。利己的に望む英雄と、真っ直ぐな正義感を持った女の子。手段は異なるが、考え方は似ている。

彼らの死を刃で報いるカイに対し、ミスティは真実で晴らそうとしている。犠牲になった人達の死をこのままにはしない。その強い気持ちは、共有出来る。

同じ道を進むことは、恐らく出来ない。やり方が、違う。勇気の使い所も、異なる。その点が、カイとミスティを本当の意味で結び付けない。


けれど、少年少女は同じ場所で戦っている。


「これからどうするつもりなの、カイ。あんたの作戦通り、地球の母艦は分捕れたけど」

「そうだな……ピョロ、この母艦が今タラーク・メジェールに一番近かったんだよな?」

「そうピョロ、だから同じ針路を進んでいたピョロ達とぶつかったんだピョロ」

「だったらまず、この母艦を本格的に使えるように調査と改造かな。多少の猶予は出来たんだし、ここらで戦力強化を行うべきだと思う。
リズとの取引で得た情報だと、この先の針路上では人が住める星はないらしいからな。ラバットに紹介された星を、除いて。

タラークとメジェールには既に、刈り取りの情報を送ってるんだろう。だったら無理に急がず、腰を据えて今後に取り組もう」


 カイの提案は、一長一短ある。時間をかければ大幅な戦力強化を行えるが、その分故郷にかける時間は少なくなってしまう。

確かに刈り取りの情報は既に伝わっているが、タラークとメジェールからの回答は今だにない。伝わっていないのか、握り潰しているのか、自国で対応するつもりなのか。

いずれにしてもすぐに戻って話し合えば、もしかすると故郷との連携で戦える可能性も出てくる。手に入れた母艦か、それとも故郷での戦力教科か。どっちにも、一長一短あるのだ。

そういう意味で、カイの提案は故郷への不信が滲んでいると言える。だとすれば、故郷を捨てたマグノ海賊団が選ぶ選択は決まっていた。


「ガス星雲での戦いで相当負担を強いたし、ドレッドやニル・ヴァーナも一度全体的に整備をしておきたいね」

「スーパーヴァンドレッドの効果的な運用方法を思案する上でも、可動実験を行いたいところでもあります」

「今回大活躍だったピョロも見て欲しいピョロ。今度はピョロも戦いに出るピョロ!」

『この母艦、ますたぁーのモノになるんでしょう。ユメが協力して、住み良くしてあげる』

『私も協力いたします、マスター。ウイルスにより停止したシステムを書き換えて、マスターへの忠誠を誓わせましょう』


 方針を決めると、各課題も自然に浮き彫りとなる。後先を考えられるようになったというのは、悩める面も多々あるが大きな前進だ。

辛いのは選択肢が少ないこと、これまでの戦いでは持てる札も少なく、限られた資源や戦力をやりくりするだけで、新しい手段を考えるゆとりもなかった。

ここに至って敵戦力も全貌が見えて、大きく戦力を削げた上に、巨大な戦力を分捕ることまで出来た。加えてスーパーヴァンドレッドという素晴らしき力、夢も希望も未来もある。


今日、この時だけは素直に、勝ったことを喜べそうだった。


「色々やることは山積みだが、今日ばっかりはやめておこうぜ。さすがにこれ以上、働けねえよ。かまわないですか、リーダーさん」

「皮肉を言っているつもりか、カイ。残念だったな、今日のリーダーは私ではない」

「ふぇっ!? も、もしかして、ディータですか!?」

「もしかしなくても、アンタでしょう。言っておくけど、もう手伝わないからね。あんたの尻拭いで、ジュラはもうボロボロよ」

「だ、大丈夫……ディータには、お友達がいるから!」

「えっ、あたしが手伝うの!?」


 ダラダラとこうして喋るのははたして、何時ぶりだったか。ここしばらくは緊張した日々も続き、さまざまな事件に遭遇して気を張り詰めていた。

異星人ミスティの出会いに続き、カルーアの誕生、病の星、シャーリーの乗艦、ミッションでの攻防戦、ミッションの少女ツバサの同行、そして地球母艦との死闘。

休む間もなく、他者を厭う暇もない。だからこそだろう、久方ぶりに訪れた休息がとても居心地が良かった。



戦いに勝ったのだ、しばらくは何もかも忘れて休もう――



「よし、そろそろ帰ろうか。祝勝パーティ、やろうぜ」

「疲れているくせにお祭りごとには張り切るね、カイ」

「年食った事言ってんなよ。たまには若者に混ざって騒ごうぜ」

「美味しく酒が飲めるようになってからいいな、坊や」


 ガスコーニュとカイ、二人が軽口を叩き合いながら肩を貸し合う。無事に生き残れて良かった――その想いが一番強いのが、この二人だった。

お互いに庇って起こした、事故。あの時どちらも、自分が助かることを考えていなかった。自分よりも目の前の人を、庇ったのだ。

自分を疎かにしたのではない。あの時、あの瞬間、悟ったのだ。自分よりも大事な存在が、この世には在るのだと。



恋よりも、愛よりも――血よりも濃い繋がりが、結ばれている。

























<to be continues・・・LastAction −遺影−>







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