ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 19 "Potentially Fatal Situation"






Action23 −完勝−








 "人機合体、スーパーヴァンドレッド"



 人と人外、そして機械。あらゆる全てを飲み込み、吸収し、合体せしめた究極の兵器。進化の最果てに辿り着いた力とは、一体の巨人であった。

ヴァンドレッド・ディータのように猛々しく、ヴァンドレッド・メイアのように凛々しく、ヴァンドレッド・ジュラのように雄々しい機体。巨いなる翼を持った、剛き人。

偽ニル・ヴァーナの人型タイプと比肩しても見劣りしない、絶大なる存在。地球の進化を物ともしない、新しい合体兵器が今ここに誕生した。


スーパーヴァンドレッド――その一つ名しか、この機体には当て嵌まらない。生まれたその瞬間より、歴史に名が刻まれる。


「すげえぜ……本当に全部、合体出来たぞ!」

「ディータと私、そしてジュラ。理論上は考えられるケースだったが、実現は出来なかった。その理由も、今ならハッキリと分かる。
ペークシス・プラグマの暴走に同じく巻き込まれた、ピョロの存在が鍵――そして何より、パイロットの一体感が必要だった」


 メイア達は、全機による合体そのものの構想は既にあった。合体兵器ヴァンドレッドを生み出せるのは、ペークシスの暴走に巻き込まれた四機のみ。

四機もあるのなら、組み合わせを考えて当然。例えばディータ機とメイア機、ジュラ機とメイア機、もしくは三機合体。あるいは――全機での、合体。

合体と一言で言えど、融け合って無理やり一つになるのではない。各機体が変形し、一つとなるように組み合わされるのだ。機体の変形が行えるのなら、他の合体パターンも考えられる。


組み合わせパターンを想定して、何度も実験。結果として、単に激突して終わっただけだった。


「違いますよ、お姉様。この合体に無くてはならない存在は、もう一つあります!」

「ディータとミスティだよね!」

「一つって言ったじゃない、もう。カッコつけたかったのに、ディータの馬鹿!」


 そして何より驚くべき点は、コックピットにある。複合シート、各ヴァンドレッドシリーズに則ったシートがそれぞれ用意されていたのだ。

小型モーターボート程の大きさを保有するコックピット、中央にはカイとメイアが順列で座っている。前方にはディータとミスティ、操舵グリップに二人の手が重なっている。

ヴァンドレッド・メイアと、ヴァンドレッド・ディータ。各シリーズの役目を果たす象徴として、パイロットが座っている。


となれば――ヴァンドレッド・ジュラの役割を果たす席も、必然として準備されていた。


「……、は……? ここは何処? アタシは何してるの? 何で、バーネット?」

「よかった、ジュラ! 怪我も何もないなんて、すごいわこの機体!」


 大いなる奇跡の前には、救われし命への感謝感激すらも飲み込まれてしまうらしい。当然のようにジュラは生きていて、怪我一つなく座らされている。

ジュラに限った話ではなく、搭乗する乗員全ての身体が元通りの健康体となっていた。治療されたのではない、機体と同じく復元されたのだ。

単なる治療であれば、踏み潰されたジュラに助かる見込みはない。文字通りぺちゃんこ、圧死したのだ。彼女は治ったのではなく、データのように復元されたのである。


ペークシス・プラグマの暴走は機体だけではなく、パイロットも飲み込んでいる。人体のデータも、保管されていたのだろう――と、彼女達が語っている。


『わーい、やったぁー! ユメもますたぁーのお仲間だー!』

『マスターの機体に組み込まれていた二つのペークシス結晶も、取り込まれています。貴方と私がいれば、人体の復元も行えますね。間に合ってよかった』


 ヴァンドレッドシリーズはそれぞれ各機能が特化されていた、合体兵器。スーパーヴァンドレッドの特筆すべき点といえば、"二枚の翼"であろう。

紅と蒼の光翼、ペークシス・プラグマの光で現出する翼。翼は単に、空を飛ぶだけの部品ではない。この翼こそが鳥類の象徴であり、バランスであるのだ。

二枚の光翼がスーパーヴァンドレッドを機能する莫大なエネルギーを安定出力させており、無類のエネルギーを発揮する器官となる。

この翼があってこそ二つのペークシス結晶搭載が成り立っており、システムの進化も実現出来ている。


「あんた達、はしゃぐのはその辺にしておきな! 敵さんが待ちくたびれているよ。
今日からお前さんがあたしの相棒だ、よろしく頼むよ"新デリシステム"」

『合点承知だピョロ、姐さん!』


 システムの進化が生み出した『司令塔』、巨人の頭脳を司る頭上に"長"が陣取っている。副長役の新システムを載せた司令官、ガスコーニュ・ラインガウ。

手足を使いこなし、操舵の指揮を行い、システムの分析を引き受ける役目。人機合体、複合パーツを見事組み合わせられるのは、各部品を扱うレジ店長以外ありえない。

この人ならば納得、この人でしか扱えない――それこそが"ガスコーニュ・ラインガウ"という、部品。スーパーヴァンドレッドに必要だった、最後のパーツであった。


「敵に先を越されたのは癪だが、先手そのものを打ったのは俺達だ。その進化、その学習を伝える事は地球に出来ねえ」

『ピョロのおかげピョロ、感謝して敬えピョロよ』

「カイの作戦じゃない。あんたの手柄だけど、あたし達の努力の賜物。さあ、やっつけるわよ!
引退してからしばらく操縦してなかったから、ウズウズするわ。ふふ、一度はヴァンドレッドに乗ってみたかったのよ」


 そう、この作戦は結局一貫して幸運に恵まれたのである。"スーパーヴァンドレッド"、この究極進化を地球側が知ることは永遠にない。

敵が先に進化を遂げた形だが、この進化は言うならば出来合いの代物。追い詰められて偶然発現した、この作戦の延長上にあったものにすぎない。

再び同じ作戦が実施され、同じ恐々に追い詰められ、同じ経過をたどり、同じ結果を出さなければならない。こんな条件を、今後実現するのは絶対に不可能だった。


敵に学習能力があると知っている以上、カイ達は同じ作戦を絶対に使わない。敵の敗因はスーパーヴァンドレッドそのものではなく、この不運にあった。


「おい、金髪。いい加減ボケっとしてないで、態勢整えろよ。防御の担当はお前だぞ」

「だーかーら、何がどうなっているのか、説明しなさいよー!!」


 敵の"スーパーヴァンドレッド"が攻撃、紅の光を次々と放つが、ジュラが混乱しながら押しまくったスイッチによる防御で全て防がれる。これもまた幸運であり、敵の不運。

新システムは複雑怪奇極まりないが、ソラとユメがサポート役でありナビゲーター。司令塔に指示を求め、各担当者に操縦方法を説明。

ジュラが防ぎ、メイアが回避し、ディータが攻撃。カイが操縦し、ミスティが助言し、バーネットが補佐。ガスコーニュが指示を出し、ピョロが機体をコントロール。



全てが一体、全てが一致――ゆえに人機合体、スーパーヴァンドレッド。



「どんなに粋がろうと、どんなに気取ろうと、お前らのは所詮お仲間ごっこだ」
「守る意志がない限り、守ろうとする行為に意味などない」
「どんなに学習したって、アタシ達は成長しづける」
「何が起ころうと、ディータ達は絶対に負けない」
「ジュラの仲間は、誰も何も奪わせない」
「あたし達は海賊、何もかも奪い取ってやる」
「産まれてきた命を、今ある仲間の命を、必ず守るピョロ」
『ますたぁーを傷つけるアンタ達なんて、大っ嫌い!』
『人と機械、そして私達。力を合わせて、乗り越える」

「母艦に無人兵器、ありがたく頂いていくよ! そう、あたし達が――」





"ヴァンドレッドだ!!"





 ――この戦いの記録は、残されていない。当然だ、作戦はウイルス投入の時点で完了していたのだから。

皆で力を合わせて、作戦を成功させた。これはその延長戦、当然の奇跡にすぎない。だから生き残るのも当たり前で、笑って勝利を祝える。



全員一致こそ勝因、輝かしき完全勝利であった。

























<to be continued>







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