ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 17 "The rule of a battlefield"






Action14 −兵獣−







 ドゥエロ・マクファイルとアイ・ファイサリア・メジェールのミッション調査結果は、ニル・ヴァーナのメインブリッジに報告されていた。敵接近の緊急連絡と共に。

刈り取り兵器の奇襲速度は既に計算済みで、アマローネ達の探索も早い。敵がミッションに到着するよりもずっと早く、敵の規模やその動きまで観測出来ていた。

予想外も度重ねれば、予想は可能。どれほど驚愕すべき事実であっても、予想の内に含まれる。


「敵です。レーダー網の死角を突いて来ています」

「相変わらずの学習能力だね……もっとも観測は難しくとも、人間には予測も出来るさね」


 ヴァンドレッドシリーズが目立ち気味だが、ペークシス・プラグマの暴走による改良は何もカイの蛮型やドレッドのみに留まらない。メインブリッジの機器も、性能が向上している。

特にメインブリッジは操舵手のバート・ガルサスの影響を一番強く受ける場所で、地球母艦戦や病の星での彼の覚醒により基本スペックに至るまでヴァージョンアップされていた。


観測レーダー機能もその一つであり、機能向上されて観測範囲や距離も大幅に拡大されている。そのレーダーの死角を、敵が突いて来ているのである。


観測が不可能というのは、宇宙戦において致命的なハンディとなる。敵影が補足出来なければ出遅れてしまい、戦争では一歩も二歩も遅れを取る。致命打にすらなりかねない。

それでもマグノ達が慌てずに済むのは、彼女達が機械のみに頼っていないからである。機器機能の向上と比例して、観測者達の実力もアップしている。

優れた機能と、優れたクルー達。頭目マグノ・ビバンが安心して任せられる、ニル・ヴァーナの顔であった。


「敵の第一目標は我々ではなく、ミッションのようです。居住区に一直線に向かっております」


 ニル・ヴァーナの目と耳が的確に敵動向を掴んだのなら、その情報を生かして戦略を練るのが頭脳の役割である。マグノは、熟考する。

地球の刈り取り兵器の目的は人間の臓器、ミッションが狙われているのならば中継基地に住まう住民の臓器が狙いと考えるべき。ドゥエロ達の報告から、既にその推測は出来ている。


  ただ、今回の刈り取りには疑問がある。交渉に向かったブザム達の報告によると、住民に共通項が見受けられないのである。


例えば同盟を組んだメラナスの住民は、男女問わず非常に美しい肌をしていた。タラーク・メジェールは男女で分かれ、生殖器が統一されている。

病の惑星は言うに及ばず、病気に感染した人間ばかりだった。この中継基地ミッションにはさまざまな人種が住んでいて、老若男女入り乱れている。

内蔵のような目には見えない臓器だと判断のしようがないが、刈り取り目標がハッキリと見えないのは些か気持ちの悪さを感じる。とはいえ、分からない事を悩んでいても仕方がない。


どの惑星も、どんな住民であっても、刈り取りは必ず阻止すると決めている。敵に奪われるなど、海賊の誇りが許さなかった。


「兄ちゃん、ドッキングを解除。外側の敵を叩くよ!」

『了解!』

「ただし、ミッションを傷つけないようにね」

『えっ……!? ちょ、挑戦してみます!』


 震え声混じりのバートの返答に、マグノは苦笑いする。自分でも難しい注文だと分かって命令したのに、バートは出来ないと泣き言を言わなかった。

恐らくではあるが、無傷でドッキングを解除するのは無理だろう。バートは決して自惚れ屋ではなく、明るく気取っているが操舵の能力及び経験不足は自覚している面がある。


それでも、"出来ない"と口にしないのは――家族が出来たからだろう。シャーリーがこの船に乗っている、家族にみっともない真似は見せられない。


バートはシャーリーを家族として引き取る決意を固めた。父親であり、兄を自認する手前、安々と白旗は上げられないのだ。子は常に、親を見ているのだから。

エズラに散々説教されているのも、聞いているのだろう。彼はシャーリーの模範となるべく、頑張っている。マグノは、バートの頑張りが堪らなく嬉しかった。

彼女もまた、親代わり。たとえタラークの男であっても、バートはマグノの孫に等しい存在だった。


「ドッキング、解除――敵、来ます!」


 何と、マグノの予想すら覆してバートは奇跡的に無傷でミッションとのドッキングを解除。中継基地ミッションから離れて一定の距離を保ち、迎撃体制に入る。

敵陣営は改良型キューブの群れ、この辺はいつも通りの戦力。気を緩めてはならないのは、新型兵器。敵は戦闘を重ねる度に、新しい兵器を投入してくる。


今回、マグノ海賊団に不備があったとすれば――敵の新戦力を、新手の"刈り取り兵器"だと推測していた事。その事実誤認が、思わぬ形で危機を招く。


ドッキングを解除して敵撃滅に移行する隙間を狙って、改良型キューブがミッションへ向かう。そこまでは予測の範囲、出撃したドレッドチームが撃墜していく。

問題は、肝心のキューブが小型コンテナを抱えていた事。ドレッドに撃墜された瞬間、コンテナは発射されて中継基地ミッションの外壁に突き刺さる。


本来の中継基地ならばこの程度の攻撃でどうにかなったりはしない。ただこのミッションは外壁が傷だらけでシステムまでガタガタ、防衛システムが穴だらけだったのだ。


小型コンテナは安々とミッションの外壁を突き破り、コンテナの中身を吐き出していく。改良型キューブは数が多く、その全てを叩き落とす事は出来ない。

改良型キューブ以外に敵影は確認されなかった時点で、ようやくマグノ海賊団は自分達の誤認に気づく。敵の目的は最初から、あのコンテナをミッションに届ける為に来たのだ。

コンテナの中身はまだ確認は出来ないが、刈り取りに関する危険物である事は簡単に想像出来る。マグノは、歯噛みした。


『お頭、ディータが出ます! チームを指揮しますので、指示を下さい!』

「ディータ……?」

『お願いします!』


 既にドレッドに乗り込んだディータが、メインブリッジに通信を繋いで指示を仰ぐ。彼女らしからぬ真剣な眼差しを向けられて、マグノは思わず見つめ返してしまう。

自分を半人前だと――そして、ドレッドチームのリーダー代理と自覚した進言。メイアに後を頼まれたとはいえ、自分から率先して戦場に出ている。

決して功を焦らず、我も張らず、仲間の為に自分から最前線へ出ていく。メイアから確かに推薦を受けていたが、どうやら見込み違いではないらしい。


マグノも艦長席から腰を据えて、指示を出していく――戦いは、これからだ。















 マグノ達が無人兵器に挑み始めたその頃、カイは人間達との戦いを継続していた。ミッションが襲われても、彼等は共通の敵とは捉えない。新しい敵が増えたと、まず考えてしまう。

敵の敵が味方と安易に考えるのは危険なのだと、この場に居る皆が分かっている。荒んだ生活、荒れた人生を過ごしていると、物事を率先して疑ってかかる。


半年間、人間や兵器との戦いに苦労したカイも例外ではない。たった今同盟を結んだ相手でも、すぐには信じなかった。


「ドゥエロやバートから、話は聞いている。あんた、地球に情報を売っているようだな」

「お客様は皆、神様よ。特に金を持っている奴は率先して、拝みたくなる」

「あんたが来たのと同じタイミングで、地球の連中がこのミッションに来た。これは、偶然か?」

「……」


 鋭い口調と目付きにラバットではなく、傍らに居たミッションの少女が目を見開いた。口は悪いが優しい少年が、これほど強い態度に出るとは思わなかった。

ラバット本人は、ニヤリと笑う。カイの指摘が的外れなのではない。カイが大きな声を出して指摘してきた事に、思わず笑みを零してしまう。


「おいおい、俺もこのミッションに居るんだぜ。情報を渡すだけなら、高みの見物気取ればいいだろう。わざわざ足を運ぶ必要はねえ」

「内部情報を渡せば、追加で小銭でも貰えるんじゃねえのか。あんたは守銭奴だからな、銭は多い方がいい」


 カイの反論に、地下闘技場に居た観客達がラバットに怒気を向ける。彼等の意識が逸れたその瞬間、メイア達が包囲網を抜けてブザムと合流する。

彼女達の動きを、ラバットは目敏く見つけた。同時にカイの方を見ると、先程のラバットのように不敵な笑みを浮べている。生意気なガキだと、舌打ちをした。


カイの本当の目的はコレ――ミッションの住民達の敵意を自分に向けて、戦々恐々としていた自分達を少しでも優位に立たせる。


敵の敵は味方、そこまで理想的ではないにしろ群衆の心理を誘導したのだ。ラバットを敢えて悪者にして、メイア達の安全を確保した。

ラバットの反論は、的を得ている。彼もミッションへ来た時点で、完全な地球の味方ではないことを意味している。カイの指摘はあくまでラバットの行動に沿った、憶測に過ぎない。

それが分かっていながら、大声で指摘して群衆を煽り立てたのである。ハメられたままでは終わらない、カイの笑みが叛意を示していた。


やれやれ、どんな育ち方をしたのか――海賊流を学びつつある少年に、ラバットはむしろ頼もしさを感じた。悪役にされたことには、怒りすら立たない。


この状況へ導けた時点で、既にラバットは優位に立っている。結局どう持って行こうと、カイ達が地球を退けなければならないのだ。面倒事は押し付けられている。

同盟を組んだとはいえ、仲間ではない。ヘボな相方など、不要なのだ。手を組むには、利用価値がなければならない。

どうやら単なる戦力としてだけではなく、あの少年は存外に役立ちそうだ。金のなる木が実り出している事に、ラバットは久しくなかった喜びを感じていた。


「あんた、何処から入り込んだのさ!」


 群衆の怒りを代表するように、ようやく意識を取り戻したリズが追求する。怪我していても、不動。敗者の汚名を着せられても、闘技場に堂々と立っている。

リズの言葉に、ブザムやメイア達が意外そうな目を向ける。この口振りからすると、ラバットは初めての来客ではないらしい。

群衆がカイに簡単に誘導されたのも、ラバットが前々から歓迎されていない客であるからかもしれない。その程度で臆する男ではないが。


「此処のセキュリティは隙だらけだからな――まるで、お前みたいによ」

「っ……何度、アタシを怒らせたら気が済むのさ!」

「さあ、数えたことねえからな」

「ぐっ、この――!」


 ――妙に、懐かしさを感じた。普段、見聞きしているようなやり取り。明らかに嫌い合っているように見えて、何処かで繋がっているような不思議な関係。

カイも、そしてメイアも、二人のやり取りを見て首を傾げる。もどかしい感じ、目の前に答えがあるのに見えない。


旗から見ていて丸わかりなブザムは、悩んでいる若者達を苦笑を禁じ得ない。とはいえ、遊んでいられる状況でもない。カイも殊更深く、悩んだりはしなかった。


「分かったよ、これ以上追求している時間もねえ。面倒事は引き受けるから、せめて情報くらい提供してくれ」

「へっ――こいつらはな、刈り取りから逃れてきた難民なんだ。言わば畑からはずれた、はみ出し者さ」

「……自分の生まれ育った星から逃げる事で、刈り取りのターゲットからはずれたのか。でも、連中がそう容易く逃すとは思えないが」

「だから流れに流れて――この吹き溜まりみたいなミッションに集まったのさ」


 人種のるつぼとなっている事に、話を聞いていたブザムもようやく納得する。報告したマグノの疑念も、これで晴れたことになる。

彼らに統一感がないのは一つの星ではなく、あらゆる星から刈り取りの魔手を逃れてきたからだ。追い詰められて、このゴミ箱の底に隠れ潜んでいる。

この襲撃は言わば、彼らにとってゴミ掃除と同じ。刈り取りが第一目標ではなく、逃げた連中の殲滅を目論んでいる。お仕置きに等しい。


「副長、奴ら――鼻が利くみたいです。まっすぐに、こちらへ向かってきます!」


「――だとよ。どうする、相棒?」

「ちっ、あんたにも手伝ってもらうからな!」


 ミッションの外での宇宙戦、ミッション内部での地上戦。二局面での、死闘が始まろうとしていた。




























<to be continued>







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