ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 15 "Welcome new baby girl"






Action17 −誕生−







 ソラの助力により再発進したニル・ヴァーナ、全システムが停止している今長期稼働は不可能。動力源もまだ途絶えたままだ。

けれど今の船には、魂が篭っている。システム代わりとなる仲間達が居る。不屈のエネルギーが人の心に燃焼している。

両腕から血を流しながら必死になって持ち堪えている、操舵手がいる。


「うぐぐぐ……この船も、仲間も、友達も――誰も、お前達に渡したりはしないぞ!」


 改良型ピロシキのデバイスが戦艦の両アームに貫通しており、船とリンクしているバートの腕も傷ついている。

今のバートは両腕を太い針で刺されて、力尽くで引き摺られている状態。抵抗する分痛みも増し、血も流れていく。

強引にニル・ヴァーナを牽引するピロシキを相手に、必死になっているのである。船の中にいる、大事な人達の為に。


バートの懸命さを、肌で感じられない三流パイロットなどこの戦場にはいない。


『バートの努力を無駄にするな! 奴らを屠り、デバイスを破壊しろ!!』

『ラジャー!!』


 改良型キューブ全機を倒したメイア達が、一斉にプロシキ型へと襲いかかる。狙いはデバイスを出している、射出口。

ジュラとメイア――二つのチームに分かれて、両側にいる改良型ピロシキへと最速で向かう。

敵もさるもの、負けじと射出口から新手のキューブ型を出撃させてくる。


『ジュラ、敵の戦闘データをそちらへ送る。一気にけちらせ』

『ラジャー、と言いたいところだけど、ジュラもこいつらの攻撃パターンは読めているわ』


 本当に、髪を切ってからというものジュラは急成長している。このまま経験を積めば、将来は立派なリーダーになれるだろう。

最初は頼りなかったバートも、今では立派に船を守っている。彼らがいれば、自分も安心して戦える。

ただ、やはり――自分の背中を安心して預けるのは、あの男ではないだろうか。


(……随分と酔狂な人間になったものだ、私も)


 誰かがいなくて心細いと感じるなんて、自分こそチームリーダー失格だ。メイアは孤独なコックピットの中で、自嘲気味に微笑む。

戦いは終っていない。敵は未だ目の前にいる。メイアは気を引き締め直して、操縦桿を握り締める。

戦場にはいなくても、彼は今も戦っている。絶対に、負けられない。


ドレッドチームリーダー、メイア・ギズボーンは最前線へと駆けていく――















 ユメの助力を得て非常回線が使用可能になったエレベーター、音声のみで映像の送信は不可能。再稼働する見込みもない。

けれど、孤立無援ではない。困った時には仲間がいる。悩んだ時には経験者がいる。応援してくれる、少女がいる。

経験のない戦いであっても、勇気を持って立ち向かう二人がいる。


「お頭さん、もうかなり頭が見えています!」

『もういきんでは駄目だよ。短い呼吸にして――カイはゆっくり、手を添えるんだ』

「分かった、やってみる!」

『ビジッ……がんば……ジジ……れ、ますたぁー!』


 懸命に支えるミスティ、必死に介添えをするカイ、ノイズ混じりで応援するユメ。エレベーター内も戦場だった。

助言を送る医務室側も恐々としている。エレベーター内の光景が見えないので、カイ達の説明だけが頼りなのだ。

手の届かない戦い、知識のない戦い。非常回線を通した二人羽織で、この苦境を乗り切るべく必死だった。


『ジジ……血が、こんなに出て……デジジ……いる……大丈夫なのかな』

『出産というのはね、女にとって命懸けなのさ。新しい命を産み出すのだから』

『――自分が、死んじゃうかもしれないのに』


 ユメには理解出来ない行為だった。肉を持たない彼女にとって、自我は本質といえる。

感情がなければ、悩んだり苦しんだりする事はない。持ってしまった為に、喪う事が堪らなく怖く思える。


人間なんて死ねばいいと思っていた。カイが死んだと思った時、喪失感に震えてしまった。


『死ぬのが、怖くないの? 何もかも、無くなっちゃうんだよ!?』

『……怖いさ、誰でもね……アタシだって、死ぬのは怖いよ』


 出産を前に、死を語るのは不謹慎かもしれない。けれどカイもミスティも、そしてエズラも苦しみながらも耳を傾ける。

生まれようとしている命、赤子の何と儚き事か。触れれば砕けそうな脆さに、地球母艦にも戦えたカイが怯えてしまった。

生命の誕生の場であるからこそ、死をテーマとした話は厳かに聞こえた。


『死んだらどうなってしまうのか、誰にも分からない。随分長く生きたアタシでも、答えは見つからない。

だからだよ、ユメ。死ぬのが怖いから――人は懸命に生きるのさ』

『でも、最後は死んじゃうじゃない!?』

『生命は確かに喪われる。だけど、その人が生きた証は残る。一生懸命生きたのなら、尚の事深く刻まれるのさ』

『刻まれる……何処に?』

『触れ合った人の、心にだよ。覚えてくれる誰かがいる限り、決して消えたりしない。子供は、親の生きた証でもあるのさ。
人ってのは、受け継いでいく存在なんだよ』


 受け継がれたばかりの子供には、ピンと来ない概念。親がいないユメには、理解のしにくい話だった。

受け継がれるものの、価値が分からない。そうして受け継いでも最後に死ぬのでは、やはり意味が無いと思う。


分からない、分からない、分からない――分かり、たい。


『ジジ……ユメも親になれば、分かるかな?』

『ああ、きっと分かるさ』

『ふ〜ん、そっか……赤ちゃん、見てみたいな』

 気軽に言ってくれる、とカイは苦笑する。緊張感があるのか、ないのか。ミスティも強ばっていた肩の力が抜けてしまった。

ユメの言動に苦笑いを浮かべているが、二人もきちんとした理解はしていない。彼らもまた、命を育んでいる途中。

産まれる生命の尊さを今この瞬間目の当たりにすべく、努力する。


「ハァ、ハァ、ハァ……っ!」

『もう、一息!!』

「うう……あうぅぅぅぅぅ……!!」



「おふくろさん!」

「エズラさん!」


『がんばれ!!』















――ォ、ギャー……オギャー、オギャー!!












『――この声っ!?』

『そうだよ……生命が一つ、この世に産まれたんだよ!』


   少年と、少女と、大人と――人ではない者が見届けた、生命の誕生。

声高で、懸命で、とても初心で……一生懸命な、歌声。


混沌とした宇宙に、新しい世代が誕生したのである。






























<to be continued>







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