VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 10 -Christmas that becomes it faintly-






Action34 −狼狽−







「・・・そっか、どの施設にも監視カメラはついてるんだっけ」

「・・・」

「俺達の行動や倉庫の場所が判明したのも、通路のカメラが追っていたからか。
クマちゃんの力添えだったんだな」

「・・・」

「尾行だけに注意しても無意味です、か。肝に銘じておくよ。
それよりさ・・・俺の部屋に仕掛けたカメラや盗聴器のこの数は何だ!?
50超えてるんですけど」

「・・・」

「夜中に寝言を言うのは止めてください・・・って、聞かれてるし!?
セルフコントロール出来ないって!」

「・・・」

「謝罪しなかったら寝顔写真を公表する案を出すつもりでした、って!?
地味な精神攻撃はきついぞ、クマちゃん」


 セルティック、アマローネ、ベルヴェデール。

マグノ海賊団の若手実力者にして、ニル・ヴァーナ前線を把握する三人の優秀なブリッジクルー。

この三人が正式に賛成派への所属が決定した。

ベルヴェデールは賛成派、アマローネは中立派、セルティックは反対派。

立場や心境が複雑に絡み合い、一時的に分かれてしまった三人。

今垣根を越えて一チームとなり、賛成派に強力な情報班が結成された。

賛成派にベルヴェデールは元々所属していたが、彼女一人では優秀な腕を持っていても限界はあった。

船体状況監視担当のベルヴェデールより、ネットワーク全般担当のセルティックの方が情報収集能力は高い。

アマローネの実力もピカ一だが、彼女はセルティックを案じて共に行動していた。

仕事や私生活を共にする仲の三人。

互いに睨み合うしかない悲しい状況だったが、ようやく元の鞘に収まったのである。

特に喧嘩していた訳でもないとはいえ、、三人が自然に元通りの関係になるのは早かった。

そこまで簡単だった理由はやはり――


「・・・やっと、仲直り出来たみたいね」

「・・・あの二人には振り回されっぱなしよ」


 アマローネとベルヴェデール、二人の間柄に破損してなかったからであろう。

色々と悩まされた二人――カイとセルティックは一つの画面を見つめて話し合っている。

ブリッジで休憩時間を楽しみながら、アマローネ達は互いに苦労の滲む笑みをこぼす。


「カイの方から謝ったらしいわ。
セルに夜中起こされて、やっとカイが謝ったって喜んでたもん」


 勤務交代で夜中眠りについていたアマローネに、緊急通信。

慌てて起きてみれば、セルティックの得意げな顔が前面に映し出されていた。

寝ぼけ眼で話を聞くと、無事仲直り出来たとのこと。

カイの力になるのかと聞いた時、セルティックは顔を赤くして怒った。

力に"なってあげる"のだと。

本当は嫌なのだがどうしても、と相手が頼むので引き受けたのだと。

延々言い訳じみた話を聞かされて、アマローネは昨晩あまり寝ていない。

「セルもカイの事になると意地っ張りになるし。
あの二人、また言い争いしないか不安だわ」


 ベルヴェデールも同じである。

昨晩通信機で連絡が入り、同じく就寝していた彼女は起こされた。

謝ったら許してくれたとカイより聞かされたのが、真夜中。

明日一番で監視カメラと盗聴器を一斉撤去するので手伝ってくれと、喜色満面で頼まれたのだ。

折角の睡眠を削られて、ベルヴェデールもやや機嫌が悪い。


「カイはカイで鈍いから」

「セルはセルで意地っ張りだから」


 悩める同僚を持つと、苦労する。

特に仲の良い友人と、気になる男性なのだ。

どっちも放置は出来ず、アマローネもベルヴェデールも渋々付き合っている。

溜息を吐いている二人に気付いた訳でもないのだろうが、カイは顔を上げて二人の元へ近付いた。


「今、クマちゃんがカメラと盗聴器を設置した場所を図面にしてくれてる。
跡で撤去するから、分布だけ確認頼む」

「はいはい、分かりましたリーダー」


 投げやりに手を振って、アマローネは了解する。

やる気の無い態度より、カイはむしろ別の事を気にする。


「何だ、そのリーダーって」

「クリスマスの主催者でしょ、あんたって」

「だからって、リーダーってのはちょっとな・・・」

「何よ、不満でもあるの」


 嫌な顔をするカイに、ベルヴェデールが口を挟む。


「不満って程じゃないが、まぎらわしいだろ。
青髪とかだって、リーダーとか呼ばれてるぞ」

「仕事場によって、呼ばれ方も変わるから。
そんなに気にしなくてもいいんじゃないの?」


 例えば、ガスコーニュは店長とも呼称されている。

アマローネの言う通り、職場内の雰囲気や仕事内容で呼ばれ方は容易く変化する。

いちいち気にしてはキリが無い。


「今の立場だって、一時的じゃない。
クリスマスが終わったら、以前の惨めな立場に逆戻りよ」

「そこまで酷くなかったわ、別に!
うーん・・・なんかカッコいい呼ばれ方ってないかな。
男らしいやつで」

「・・・女のあたし達に聞かないでよ」


 拘っても仕方ないのだが、変な拘り方をするのがカイである。

一時に気になりだすと、解決するまで止まらないのだ。

時には無限の行動力や発想を生み出すステップになるのだが、たまに可笑しな方向へ思考が流れる。

今回の場合――後者だった。


「お頭ってのはどうだ?」

「・・・アタシの目の前でよく言えるね、あんたは」


 艦長席で静かにお茶を飲んでいたマグノが、呆れた顔で言う。

彼女本人もマグノ海賊団お頭の呼称そのものに拘りは無いが、責任と義務を背負っている。

容易く使用されても困るのだ。


「細かいばあさんだな・・・別に呼ばれるのが二人いたっていいじゃん」

「宇宙一のヒーローが二人いてもいいのかい?」

「そんななわけないだろ! 俺一人に決まってる」

「我侭だね、相変わらず・・・」


 これ以上付き合えないと、マグノは口を閉ざした。

カイにしても本当に呼ばれたいとは思っていなかったので、撤回して次なる案を出す。


「リーダー、チーフ、主催者・・・どれもぴんと来ないな。
ん、クマちゃん、何か良い案があるの?
ふんふん・・・

"卑しくも惨めな奴隷"?

そう呼ばれて、嬉しい奴がいるか!」

「いいじゃないですか、"卑しくも惨めな奴隷"様」

「そうよ、文句言わないで下さいよ。"卑しくも惨めな奴隷"様」

「むかつく敬語だな、お前ら!」


 久しぶりのブリッジクルー三人娘の連携プレーに、翻弄されるカイ。

狼狽しては負けだと分かっているのだが、ついつい大声を張り上げてしまう。

彼女達に任せると、このまま可決されてしまう。

情報担当の三人に決定されると、艦内に秒速で流れるだろう。

英雄が奴隷に変わる瞬間なんて考えたくも無いので、カイは必死で考える。


「よし――ボスにしよう」

「ボスぅ!? 
何処の世界に、パーティ主催者をボスなんて呼ぶ人がいるのよ」


 呆気に取られた顔をするベルヴェデールだが、カイは取り合わない。


「男っぽい感じがいいんじゃないか。
リーダーとかチーフとか、ナヨナヨしているからな。
いいね、ボス・・・渋い感じがするぜ、ふっふっふ」

「――たまにあんたについていけないわ、あたし」


 改めて味方になった事を後悔するアマローネだった。

カイが一度言い出したら聞かない性格なのは知っている。

そして、カイに味方する者の中に面白がる人間が多数いることも。

恐らく明日には、カイは概ね全員からボスと呼ばれるだろう。

大笑いするイベントチーフやクリーニングチーフの顔が浮かんで、アマローネは頭痛がした。


「そうだな・・・この際、皆のコ―ドネームとかつけるか」

「コードネーム?」

「そう。簡単に言えば、あだ名だ。
折角俺達が初めて一つの目標に向かって、チャレンジしているんだぜ。
一人一人カッコいいネームをつけようじゃないか」

「――そんな事するより、他にやる事いっぱいあるんじゃないの?」


 アマローネが至極もっともな意見を口にする。

ブリッジクルーの三人が味方になったのは大いに頼もしいが、現状が苦しいのは変わらない。

資材や人手もまだまだ足りず、日数も少ない。

遊んでいられる余裕は無いはずだ。

だが、カイはアマローネの言葉すら耳に届いていなかった。


「・・・そうか・・・

この手、使えるぞ!
うまくいけば、現状の問題が一気に解決するかもしれない」

「え? え?」


 途端はしゃぎ出すカイに、ベルヴェデールは目を剥く。

彼が何に喜び、顔を輝かせているのかが分からないのだ。

カイは三人を手招きして、話す。


「雰囲気作りだよ、雰囲気作り。
元々反対に回っている連中って、クリスマスを汚されるのが嫌なんだろ。
最低下劣とか言われてる男が乱入するから」

「ま、まあ、大体はそうだと思うけど・・・」

「なら、そのイメージを変えるんだよ。
つまりだな――」


 ボソボソっと、三人に打ち明ける。

ほんの些細な思いつきから生まれた、イメージ戦略を。

詳細を聞かされた三人は、仰天する。


「またやらせるつもりなの、あたし達に!?」

「大丈夫、大丈夫。お前ら三人だけ、苦労を背負わせないよ。

聞いただろ? 皆もやるし、俺だってやる。

クマちゃんもどうかな?
俺の戦略には――特に君の協力・・・・が不可欠なんだ」

「・・・」


 セルティックは一言も言い返さない。

文句は山ほどあるのだが、その戦略効果は確かに絶大。

やるだけの価値は確かにある。

うまくいけば、全員参加・・・・も夢ではない。

この前のような思い付きだけではなく、協力への見返りは確かにあった。


「ちょっと待ってよ!?
クリスマスの準備だけで精一杯なのに、そんな事までしてる余裕は無いじゃない」

「その余裕の無さがそもそもの原因なんだ」

「――え?」


 疑惑の顔を向けるベルヴェデールに、カイはにっと笑顔を向ける。


「クリスマスは――パーティは楽しんでやる。
それが、イベントってもんだろ?」

「・・・」

「重っ苦しい顔してたら、誰も寄って来ないって。
人手も資材も不足してる。

皆の協力が無ければ、この戦は勝てないんだ。

ベルヴェデール、アマローネ、クマちゃん。助けてくれ」

「・・・」


 ――いつも、これだ。

男女の垣根をあっさりと越えて、カイは協力を申し出る。

本当に大切な戦いの時――余計なプライドを掲げない。

無防備に、頭を下げて、助けを求める。

そうして、いつも勝利してきた――

カイは返答を待たず、鼻歌混じりにスキップしてブリッジを出る。

その際に、


「それと――お節介な手紙、ありがとな。
そんなお前らが、俺は好きだぜ」

「あっ、あんた!? 気付い――」


 セルティックとカイが喧嘩していたこと。

セルティックが昨晩夜勤だったこと。

この二つの事実を知っている人間――それがあの手紙の本当の差出人。

顔を真っ赤にするアマローネとベルヴェデールを見ずに、カイはそのまま出て行った。






















































<to be continued>







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