VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 10 -Christmas that becomes it faintly-






Action5 −恋友−










 出立の朝。

三ヶ月ぶりの長期休暇を終えて、マグノ海賊団は出航の日を迎える。

一ヶ月間の余暇を過ごし、クルー達も意気揚々と出発の準備に取り掛かっている。

明日から始まる戦いの日々。

故郷を救う為に、男女力を合わせて長い旅に挑まなければいけない。

皆が忙しく奔走する中、最後の挨拶をすべくカイは船から降りていた。


「お怪我はもうよろしいのですか?」

「ばっちり回復。今朝方退院したところ。
――お陰で全く遊べなかったけどな、あのくされ医者」


 トレードマークの十手を腰に携え、いつもの服装で対談に出ているカイ。

まだ完治とまではいかないが、火傷の痕は既に残っていない。

顔色も良く元気溢れる姿に、アンパトスの長ファニータも安心したように微笑む。


「街は少しは持ち直したか?」

「――はい。皆さんにもお手伝い頂きまして、復旧の見込みもつきました」


 高台から海上都市を見下ろす。

完全に立ち直るにはまだまだ時間はかかるだろう。

短時間とはいえ、膨大な浸水を許してしまった余波は完全に癒せない。

アンパトスの人々はこれからその真価を試される。

神の試練か、人生の宿命か。

招いてしまった人災は、人々が尽力する他は無い。


「色々大変かもしれないけど――」


 前置きして、カイは語る。


「この星は先祖がファニータ達に残してくれた大切な星だ。
大切に、守ってやって欲しい」


 一度は神の手に委ね、放棄を望んでしまった。

過ちだと言われれば否定できない。

けれど、過ちを正せない道理もまた無い。


「俺も、やらなければいけない事がある。
何が何でもやり遂げなければいけない、大切な事だ。
あんた達を手伝えないけど――

この星を好きな気持ちは同じだ。

何かあったら、絶対に駆けつけるから」

「……はい。貴方様もどうぞお元気で――」


 最初から最後まで――その笑顔はとても優しい。

ファニータと正面から向かい合って、カイもまた力強く微笑んだ。

他者に出来る事は限られている。

余所者に出来る事はここまでだ――などと、他人事のような顔はしない。

互いにきちんと誓いを立てて、再会の約束をする。

それが遥か彼方先でも、道標がある限り迷う事は無いだろう。


ムーニャにはなれなかったカイ。


けれど、この星を救ったのは間違いなくカイだった。


「しっかりな」

「旅の無事をお祈りしております」


 別れを惜しむ気持ちはあるが、寂しさは無い。

この星はもう決して、絶望を甘受する事は無いだろうから。

生きてまた会えると信じて、この蒼き美しさを誇る星を後にする。














 出航の時刻。

休息の時は終わり、また新たな道程を辿る旅へと舞い戻る。

心身を癒してくれた大地への別れを惜しみながらも、クルー達は皆ニル・ヴァーナへ乗船する。

そして、訪れる国民達。

大勢の者達が自主的に発着場へと足を運び、マグノ海賊団の旅立ちを見送る。

ファニータと話し終えて乗船したカイは、メインブリッジからその光景を見守る。


「――名残惜しい?」


 ベストアングルから、発着場の様子を映し出す中央モニター。

簡単な操作を行いながら、モニターを見つめるカイにアマローネは尋ねる。


「……いいや。別にこれが今生の別れでもねえし。
またいつか会えるさ」


 出発する上で一番忙しい現場が此処だが、仮にも本拠となるブリッジの業務を任されているクルーである。

アマローネ・ベル・セルティック。

三人の効率の良い優秀な処理によって、出立前には作業を終えていた。

マグノとブザムは物資の搬入と交渉で現場へ。

エズラは非番の為、カイと三人の女の子が自然に会話していた。


「なーに、言ってるのよ。こんな僻地、もう二度と来る訳ないじゃない」


 現実味のある発言をするベルヴェデール。

巡航最速度でもタラーク・メジェールから半年以上かかるアンパトス。

この星へ訪れたのは偶然であり、旅の途中経路でしかない。

絶対に無理ではないが、気軽に訪問するのに半年は辛い距離だ。

事実を突きつけられてたじろぐカイだが、


「約束した以上、俺は会いに行くぞ。
もしかしたら向こうから来てくれるかもしれないし」

「そんなに長距離運航出来る船あるの、この星って」

「あるって言ってたぞ。
うんうん、そうだよな。今度はタラークかメジェールにでも招待するか」

「……この星の人達が来れば驚くどころじゃすまないと思うけど。
それにあんた、もう故郷の事全く覚えてないでしょ?
タラークとメジェールはお互い嫌い合ってるの。
私とカイみたいに、ね!」

「……なあ、クマちゃん。何でこいつ、こんなに機嫌悪いんだ?」

「誰が機嫌悪いのよ! 別に普通よ、普通」

「嘘つけよ、さっきからむっとしやがって。
え、なになに……


女性を篭絡するのが随分お上手になったんですね?
わたし、感心いたしました。


――え、えーと……誉められているのに、何故か怖いのは何故だろう」 


 これ以上何も言うつもりはありません、とおすましするセルティック。

アマローネは少し意地悪な微笑みを浮かべる。


「カイって嘘つくのが上手くなったよねー」

「何だよ、アマローネまで!?」

「……ファニータさんって言うんだよね、あの綺麗な女の人」


 ベルヴェデールとセルティックが一気にカイに振り向く。

カイは半ば硬直しつつ、声を上擦らせた。


「な、何が言いたいんだ、何が……」


 別に後ろめたい事は何も無い。

――のだが、ベルとセルティックの問い詰める視線がカイには痛かった。


「別にー、カイが誰と仲良くしようが関係ないしー」

「むしろ邪魔だしー」

「早くいなくなって欲しいですしー

って全力で俺に言わないでくれるかな、くまちゃん」 


 余計な連中に知られた、とカイは半ば頭痛がする思いだった。

この三人はブリッジクルー、外部の情報収集は得意分野である。

カイの動向や惑星内の状況を知るのはお手の物だろう。

知られてまずい関係ではないが、また新しい話題を面白おかしく提供してしまったと考えるとげんなりする。

セルティックは別にしても、他の二人は話題を共有して楽しむタイプである。

他の面々に知られれば、又余計な評判が立つだろう。

カイは気持ちを切り替えた。

今更である。


「――でも、今のカイの話じゃないけど……変わった星だったよね、此処って」


 アマローネはそう呟いて、惑星アンパトスの惑星表図を映し出す。

逆隣のベルも同意するように言葉を重ねる。


「うんうん、男と女が同じ星で住んでるんだもん。
平然とした顔で一緒の家で仲良さそうに生活しているのよ。
絶対、変よ」


 これはベルに限った意見ではない。

上陸したマグノ海賊団のほぼ全員が抱いた、アンパトスへの違和感である。

異性別の種族が、同じ環境で、平和に過ごしているのが信じられないのだろう。

タラークでは女性を、メジェールでは男性を敵と見なしている。

男だけの星・女だけの星の住民の中には、対となる異性を知らずに一生を終える者はザラだ。

せいぜい教育や情報、噂などの伝聞で聞き入る程度だろう。

だからといってそれが変かといえばそうではなく、タラーク・メジェールではそれが当たり前なのだ。

疑問を挟む余地も無く、受け容れている。

したり顔で話すベルヴェデールを、カイは横から胡散臭い顔で見る。


「そうかぁ? 
俺はむしろお前ら――メジェール・タラークがおかしいと思うぜ」

「むっ、私らの故郷の悪口だけじゃく自分の故郷の悪口まで言うつもり?」

「悪口じゃねえ。これは俺の意見だ」


 空席となっている艦長席の下で、カイは静かな眼差しで語る。


「メジェールが男の事をどう言ってんのか知らねえけど、無茶苦茶言っているのは分かるぜ。
日頃からネチネチ言われてるし。
タラークでもお前らの事散々言ってるから、言えた義理じゃないけどよ」


 女は魔物。

誇りを奪い、心身を辱め、肝すら食う。

彼女達が聞けば憤慨する根拠の無い教えだが、タラークでは常識としてまかり通っている。

その常識が、カイに決定的な疑問を抱かせた。


「アンパトスが正しいのかどうかは分からないけどさ――
タラーク・メジェールの言ってる事は明らかに間違えている。
男にだって俺のようなヒ−ローがいるし――」


 カイは三人を見る。


「女にだって、お前らみたいなのがいるだろ。
一緒の船で生活して三ヶ月程度だけど、結構楽しんでるぜ俺は。
こうやって気軽に話せる女友達も出来たし。
お前らだって、俺の相手してくれるじゃないか。
女全員が好きだなんて博愛ぶった事は言わないが――

俺は少なくともアマローネやベルヴェデール、クマちゃんは好きだぞ」


 三人とも、ぽかんとした顔でカイを見つめていた。

そこまでストレートに女を好きだと言えるのは、タラーク中見渡してもいないだろう。

本心で言っているのは、カイの顔を見れば分かる。

この船で一番嫌われていて、皆から迫害を受けているのに、平然と好きだと言う。

三人は顔を見合わせ、互いの心を確認してそっと笑う。

男が本当に下劣極めりない生き物かどうかは分からない。

だが、それでも――


「…やっぱり変な奴だわ、あんたって」


 ――その認識は、決して誤っていない。

同意して頷くセルティックにも、ほんの少し柔らかさを感じられる。

アマローネはただ黙って笑っていた。

そんな彼女達を見て、カイは内心ニヤリと笑う。


「で、だ。
そんな大切な友人の君達に、心からのお願いがある」

「……お願い?」


 ――アマローネの背筋に悪寒が走る。

この展開はまさか……


「うむ。クリスマス名幹事として、お友達の君達に是非協力してもらいたい。
――実はだな」


 説明後――黄色い悲鳴がブリッジにて上がった。

























































<to be continues>







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