VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 10 -Christmas that becomes it faintly-






Action6 −修繕−










 カイがパイロットとなって三ヶ月になる。

とはいえ正規のパイロットではなく、カイはあくまで自主的に機体を操縦しているだけの素人だ。

専門的な知識を学んだ訳でもなく、厳しい練習を積んでもいない。

カイはタラークでは軍人どころか、労働階級の三等民でしかない。

そんな彼が戦場を出ればどのような結末を迎えるか目に見えているが、彼は今でも生き残っている。

主な要因はSP蛮型の性能。

陸上戦闘用に突出した機能を持つ蛮型を、ペークシスが改造して宙域戦闘にも活用されるようになった。

複雑な操縦仕様が初心者でも動かせるようになり、重厚な装甲を有した高性能な人型兵器として宇宙を駆け巡る。

非凡な能力としてドレッドとの合体があり、ヴァンドレッドとして運用も可能。

カイが開発した蛮型遠距離兵器・ホフヌングも運搬され、現在ではニル・ヴァーナの主力とまでなっている。

襲いかかる刈り取り兵器も、その殆どがカイに倒されている。

だが何より輝かしい戦歴を残した要因は、操縦者自身によるものだろう。

非凡な才も無ければ、知識も経験も無い初心者。

ゆえに常に懸命で、必死で知恵を振り絞り、命懸けで仲間を助ける。

決して、偶然でも幸運だけでもない。

――とはいえ、実力不足なのは事実であり……


「直らん」

「何で!?」

「壊しすぎじゃ、愚か者」


 ……毎度の戦闘の度に機体はボロボロになり、専門エンジニアを困らせている。

主格納庫内。

SP蛮型と三体のドレッドを保管した広大な格納庫の中で、和服の少女とパイロットが向かい合っていた。


「ひ、被害はそんなにひどかったのか……?」

「全体の八割が破損、メインエンジン・ブースターにガタ。
主武装の二十徳ナイフが半溶解。
プロの目から見ても、廃棄処分した方が早いと結論を出すじゃろうな」


 老獪な言葉遣いに、幼さのエッセンス。

不釣合いな女の子の声も、この少女だと不思議と魅力がある。

――が、今のカイはそれどころじゃない。


「た、大気圏で暴れ回ったのがまずかったかな……」

「大気圏内仕様されておらんのじゃ。まずいもくそもなかろうて」


 多かれ少なかれパイロットは機体に負担をかけるが、カイは度を過ぎていた。

襲撃の度に最前線で戦い続け、強敵とぶつかり合ってきた。

結果として勝利を収めたが、戦いの余波は著しく機体を傷付けた。

人間の身体は自己再生があるのである程度の怪我は自然に治るが、機体は基本的に修理しない限り元には戻らない。

破損させればガタつくのは当然で、無理な負荷をかければ状態が悪化して当然である。

熟練者は愛機にも気を使うのだが、カイは常識を覆すやり方で戦ってきた為にここへきて蛮型がいよいよ廃棄の憂き目にあっていた。


「頼むよ! 何とか直してやってくれ!」

「そう言われてものう……他にも蛮型があるではないか。
いっそ見切りをつけて、新しいのに乗り換えたらどうじゃ?」


 蛮型はカイ機のみではない。

元々ニル・ヴァーナはタラーク軍艦イカヅチを元に改良された船だ。

今でも多くの機体が格納庫で眠っている。

もっとも、ペークシスで改造されたSP蛮型はカイ機のみなのだが。


「俺はこいつとこれからも戦いたいんだ!
一緒にずっとやっていくって誓ったんだよ!」

「ふーむ……」


 カイの熱意はエンジニアとしても理解出来る。

一つの機体に愛情を注げるのは、常日頃から大切にしている証拠だ。

傷付けてはいる、無謀な行動を繰り返してはいる。

だがそれも裏を返せば、それだけの行動をとっても大丈夫だと信頼しているからだ。

でなければ、大気圏内でホフヌングを高出力させる真似はしない。

翻せば、全幅の信用を置いて重ねた無茶が今深刻な状況を呼び寄せてしまった。

乗り手を責めるべきではないが、専任エンジニアとして言わなければならない。


「お主の言い分は分かるが、お主の機体の部品は取替えがきかん。
ドレッドのパーツは沢山あるが、蛮型のパーツは少ないからのぅ。
今までは保管されている他蛮型の部品を使っていたが、今後を考えると危うい」


 蛮型は未使用だけで何十機分のストックがあるが、SP蛮型は一機しかない。

当然使用される部品や武装に予備は無く、劣化すれば取替えが出来ない。

無論全部が全部改造されている訳でもないので、今まで壊れれば修理・改良は出来た。

本来、マグノ海賊団整備班ではその修理すらままならなかった。

彼女達の専門はドレッドであり、蛮型の知識は皆無に等しい。

改良など専門外であり、修繕はおろか整備でも頭を抱える日々だった。
その整備を一任したのがアイである。

どこから知識を仕入れたのか、テキパキと的確に指示を出す。

改善・改良案を取り入れて、今までの三倍以上の効率でSP蛮型を改善していった。

今では完全に現場を指揮しており、この小さな女傑に整備班は頭が上がらない。

そんな彼女でも、今回の蛮型は手痛い問題だった。


――今までのやり方ならば。


「部品不足かよ……くっ……せめてドレッドのパーツが使えればな」

「――今、何と申した?」

「え……?」


 カイを真面目な顔で見上げるアイ。

小柄な背丈で威圧感のある彼女の真っ直ぐな瞳に、カイはやや圧される。


「だ、だから、ドレッドのパーツが使えれば……」

「使っても良いのじゃな?」

「う……」

使っても良い・・・・・・のじゃな?」


 三ヶ月、死線を掻い潜って鍛えた鋭敏な感覚が叫んでいる。


企んでいる。
頷くな。
危険だ。


いちいち本人の承諾を得ようとするところが怪しい。

この少女には機体の全てを任せている。

今更何を弄くろうと、それが相棒の改善に結びつくなら文句などあろう筈もない。

通常の――改良ならば。

つまり、修理の枠組みを圧倒的に超えた作業を始めるつもりなのだ。

恐らく整備が終われば、絶対パイロットが文句を言いそうな作業を。

ここで言質を取りさえすれば、後で何を言おうと「お前が許可した」と言われて終わりである。

嵌められた――歯噛みするが、もう遅い。

アイの表情が心なしか綻んでいる気がする。


「うくく……わ、分かったよ! 好きにしろ、好きに!
その代わり、絶対の絶対に直してくれよ!!」

「勿論じゃ。
――ちょびっと原形とどめんかもしれんが、元通りに直してやるわい」

「由々しき発言があったぞ、今!?」

「安心せい。 予算は儂のポケットマネーから出そう」

「誰がそんな心配してるか!」

「おーい、皆の集ーー! 許可が出たので始めてくれ!」

『ラジャー!!』

「何だ、その団結力!?
しかもどこで待機してやがった、おまえらは!」


 何処からともかく参上したツナギ姿の女の子達が、大規模作業を始める。

保管されているSP蛮型に取り付いて、胴体や両足を切断し――


「バラしてる!? あ、こら! 何故ブースターまで外すんだ!?」


 カイの絶叫が響くが、全員誰も聞いていない。

格納庫内をカートが縦横無尽に走り回り、解体された部品を運んでいく。

部品にいたるまで手が加えられている蛮型を、カイはあんぐりと口をあけて見ている。

一瞬にして解体された自分の愛機。

ありえないくらいバラバラにされた相棒に、


「元に戻るんだろうな、本当に!?」

「ふふん、安心せい。
かねてより考案した設計図を元に、お前の相棒を生まれ変わらせてやろう」

「質問の答えになってないぞ!?」

「ふふ、後は見てのお楽しみじゃ」

「うわー、自分でやったら面白いが、他人に企みを隠されると腹が立つ」


 どうやらこれ以上追求しても無駄のようだ。

虚しく悟ったカイは経過と結果を待つしかない。

アイが専任となって日は浅いが、人間的にも技術的にも信頼は出来る。

間違えてもパイロットを危険に晒すような整備はしない。

整備班とは他のクルー達と比べて交流は取れている。

皆が取り掛かってくれれば、少なくとも間違いは犯さない。

強気で責めてもあしらわれるのがオチ。

カイは気持ちを切り替える。

マグノ海賊団入りを拒否した以上、自給自足で生活しなければいけない。

本来、アイや整備班はカイの機体の面倒を見る必要は無い。

マグノ海賊団の機体を修繕・整備するのが彼女達の仕事である。

カイの機体の仕事は言ってみれば時間外労働だ。

全て彼女達の善意でやってくれている仕事である。

その上で機体を改良してくれると言う。

感謝こそすれ、怒る理由は――出来上がりに不安はあるが――ない。

大人しく見守るのが一番だろう。

なるべくバラけた機体には目を向けず、カイは心を落ち着けた。


「分かった、そっちで任せる。出来上がりは何時になりそうだ?
刈り取りの連中が来たらやばいからな」


 替えの無い機体である。

修繕中に敵が襲い掛かってきたら、対処のしようが無い。

アイはふむと考えて、


「一月を目処にしておいてくれ」


 アイの仕事振りは他者の追随を許さない。

通常三日かかる作業でも、彼女なら半日程度で片付ける。

そんな彼女が一ヶ月と言うからには、相当の大規模な整備・開発が行われるという事だ。

一ヶ月。すなわち――


クリスマスが終わるまで戦えない。


  (ま、大丈夫かな)


 その安心が――後に、大いなる悲劇を生む。

























































<to be continues>







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