VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 9 -A beautiful female pirate-






Action18 −無理解−




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 一時間後、惑星アンパトスへ上陸する―――

話し合いを終えた後ブザムが決定し、一時解散となった。

上陸メンバーはマグノとブザム、カイとメイアの四名。

十日遅れとなったが、当初の予定通りの人員で向かう事となった。

向こう側とこちら側の準備を兼ねての一時間内で、カイは先に用事を済ませる事にした。

そのままブリッジを出て、女性住居区のある下降へと足を進める。

本当は使いたくなかったが、大怪我なのと短時間の猶予を考慮してエレベーターに乗る。

男と女は階層で生活空間を区別されている。

男は上側の元イカヅチ旧艦区、女は下方の元海賊母船側だ。

融合の際に構造そのものを造り変えられ、広さにそれほどの差はない。


「・・・こうして降りるのは久しぶりだな」


 セキュリティ0になって、自由に行動も許されなくなった。

マグノ海賊団入団を拒否し、自立してやって行こうと決めたあの日―――

漂流してミッションへ辿り着き、ラバットと出会って、惑星アンパトスへと到達した。

長い道のりのように思えるが、その間は一ヶ月程度しか過ぎていない。

運がいいのか、悪いのか―――とにもかくにも、カイにとっては大変な日々だった。


『マスター、お気をつけて』


 ・・・・こいつにも会えたしな。

内心苦笑いを浮かべつつ、カイはエレベーター内の非常用スピーカーに顔を向ける。


「何処から声を出してるんだ、お前。
それに気をつけてって何だ?」

『マスターが向かう先は敵領域です。
何かありましたら、わたしが駆け付けます』


 頭を抱えたくなるのを、カイは必死で抑える。

リアルに想像出来る。

大勢のマグノ海賊団を前に、一歩も退かない銀髪の少女。

口喧嘩の応酬の狭間で悩む自分の姿―――

今まで散々嫌われているのに、皮肉にも彼女達の弁護をしなければいけない我が身が哀しかった。


「べ、別にいいよ。俺が一人で何とかするから」

『ですがマスター』

「大丈夫だから」

『でもマスターは―――』

「だ・い・じょ・う・ぶ」

『・・・イエス、マスター』


 明らかに渋々といった感じで、ソラの声はそのまま途絶えた。

別に何の根拠のない強がりではない。

今から向かうカフェテリアには、バーネットが待っている。

ジュラについての相談を持ちかけられたのだ。

呼びかけたのが相手側なのだから、ギスギスした雰囲気にはならないだろう。

深刻な表情ではあったが、その気持ちは自分に向いてはいない。

何があったのかは知らないが、素直に悩みを聞いてみようとは思ってる。


「他人事じゃないしな・・・」


 合体出来ると判明したのが十日前。

新型のヴァンドレッドは防御力に優れ、浮遊レンズによる多彩な攻撃も行える。

今後の戦いで非常に貴重な戦力で、ヴァンドレッド・ジュラは大いに役に立つ。

合体が肝なヴァンドレッドなのだから、パイロット同士の友好を深める必要はある。

何か悩みがあるなら助けるのが相棒だ。


「とりあえず様子見で。何かあったらお前にも頼るから」

『了解。マスターの御信頼を裏切りません』


 事務的な口調だが、声が少し弾んでいる。

案外分かり易い自分の夢の産物に、ちょっとだけおかしくなった。

エレベーターは速やかに下降していく―――






















「・・・右目、大丈夫なのですか?」

「ああ、すぐに見えるようになるって。何か冷たい物、ある?」

「アイスコーヒー、入れますわ。
・・・はい、どうぞ」

「サンキュー」


 食休みではない時間帯のせいか、カフェテリアは比較的空いていた。

何人かはいたのだが反応は様々で、迷惑そうな顔をされたりもした。

とはいえ概ね反応は好く、キッチンチーフは心の底から案じてくれた。

大小の氷が浮かぶコーヒーグラスを片手に、カフェテリアの片隅へと向かう。

出入り口からは見え難い、目立たないテーブル席でバーネットは座っていた。

肘をついて座る彼女の顔は暗く、空気も重い―――

それでもカイが来たのが分かると、


「時間は大丈夫?」

「一時間だけだってさ」

「そう・・・・・・そこ、空いてるから座ったら」


 バーネットは顔を上げて、対面の席を促した。

カイはグラスをテーブルの上に置き、そのまま腰を下ろす。

正面に座るバーネットの顔をふと見て、気付いた。


(二人っきりで話した事ってあったっけ・・・・・・?)


 いつも傍にはジュラが―――もとい、ジュラの傍にバーネットがいた。


(・・・名前もそういやちゃんと知らねえ。
ま、全員そうだけど)


 普段は黒髪と呼んでいる目の前の女。

考えてみれば自己紹介をされた事は一度もなく、女に関してはほぼ全員フルネームを知らない。

バーネットだって一体どういう人間で、どんな性格なのかも実はよく知らない。

勝気な人間で気が強いが、料理は上手くて常識は持ち合わせている。

この程度だろうか?

そんな彼女に初めて相談を持ちかけられたのはいいが、何故自分に頼るのだろうか。

こういっては何だが、直接的に仲がいい訳ではない。

ジュラという共通の人間がいたからこそ、話もしていた。

親友に何か問題が発生したとして、自分一人で解決できないから、女の仲間を普通は頼る。

メイアやガスコーニュ、ブザムやマグノ等頼れる人達は沢山いる。

彼女達の関係は一日や二日ではない。

自分も知らない多くの年月を積み重ねて、信頼関係を築き上げてきたのだ。

たった二ヵ月半、しかも対話も少ない自分を選んだ理由は―――


「・・・・・・昔さ」


 突然ポツリと、バーネットは話し始める。


「昔・・・・・・ジュラと私、すごく仲が悪かったの」

「お前と・・・・・・あいつが?!」


 信じられない。

女達の関係は二ヵ月半見て来たが、二人の仲の良さは別格だった。

いつも一緒にいて、互いが互いを支え合っている。

笑顔が絶えず、喧嘩なんて一度もしていない。

意見の違いはあったかもしれないが、どっちかが折れて円満に済んでいた。

カイの意外そうな顔に、バーネットは小さく笑った。


「本当よ。二年位前だったかな・・・・・・?
初めて私がマグノ海賊団に入団した時、ジュラと派手に対立したわ」

「へえ・・・・・・お前らって最初はそんなんだったんだ」

「初めて私が所属したのはパイロットじゃなかったわ。
その時はレジにいたの」 

「レジに!?
って事はお、お前があの制服を……」

「ふふ、着てた着てた。すっごい嫌だったけど」

「……だ、だろうな。やっぱり……」


 パイロットスーツすら普段バーネットは身に付けていない。

本人なりに今の露出の高いファッションが気に入っているのだろう。

あの可愛らしいレジの制服なんて、彼女のセンスには合わないに違いない。

ガスコーニュ辺りに無理に着せられている当時の光景を思い出して、カイは苦笑した。


「私、あの頃は仲間とか信用できなくてさ―――
自分一人で結果を出してやるって息巻いてた。
だから―――ガスコさんや他の皆のお節介がひどく嫌だった」

「なるほど……今の俺と同じく、周囲から浮いてたって訳か」

「……それなりに成果は出してたわ。
反発ばっかりしてたけど、それは自分さえよければいいって思ってたから。
でもお陰で新入りなのに生意気って噂が立って――――ジュラはそれを聞きつけたの」

「ははーん、目立ってるのが気に入らないってか?」


 今でも合体だのなんだのと、目立ちたがリ屋な彼女である。

別の意味だが話題を独占しているバーネットに、いい気分ではいられなくなったのだろう。


「マグノ一家出撃の時、レジに来るなり尊大な態度を取られたわ。
私も私で言い返したけど」

「……一応聞くけど、どんな風に?」

「貴方のオーダーは問題があるって言ってやったわ」

「あちゃー、レジって基本的に接客第一だからな。
お客さんのパイロットに反論かましちゃ、誰だって怒るだろう。
特に相手が金髪だと尚更だな」


見習いで叩き込まれたレジの心得。

出撃するパイロットを最大限サポートする為に、彼女達の要望は必ず守る必要がある。

バーネットは新人時代でそのルールを破ったのだ。

その時のジュラの怒りは容易に見当がつく。


「話からすると、金髪は黒髪の先輩だったのか」

「立場上はね。私は逆らってばっかりだったけど……
ジュラはあれで古株なのよ」

「何となく納得というか……」


 毎日のジュラの態度を思い出しながら、カイはしみじみとコーヒーを飲む。

飲み慣れない苦味に顔をしかめながら、耳を傾ける。


「私とジュラの様子を見かねた……その時誰か分からなかったけど、ガスコさんだと今は思う。
そのガスコさんが、私をパイロットにしてくれたの。
ジュラのサポート、メイアのチーム員としてね」

「お前と金髪と青髪……今のチーム構成か」


 メイアのサポートをジュラが、ジュラのサポートをバーネットが行う。

ドレッドチームの主力であり、理想的なメンバーである。

今では、だが。


「私は一人で頑張ってたし、ジュラとは喧嘩してた。
メイアは……」

「?何だ、人の顔を見て」

「……ううん、何でもない。
メイアは今……ちょっと変わったけど、前は違ってたでしょう。
あんたともよく喧嘩してて」

「……言いたい事は分かるさ」


 最近は口喧嘩もしなくなったが、ほんの一ヶ月前までは会う度に言い争いだった。

他人を拒絶し、単独の強さだけを求めていたメイア。

脆く――――息苦しい存在。

同じチームになったバーネットやジュラと仲良くなどしないだろう。


「仲間の間では"交わらない関係"なんて陰口を叩かれたわ。
プライベートでは三人とも口もきかなかったし」

「く、暗い奴等だな……
そんなんでよくチームワークが成り立ったもんだ」

「……成り立つ訳ないじゃない」

「え……?」


 冷めた声で、バーネットはどこか遠くを見つめて話した。


「初めてのチーム戦だった。タラーク艦の積荷を狙って出撃したの。
でも私は……二人が信じられなかった。
信じられなかったから、作戦を無視して……タラークの罠にかかったの」

「罠?」

「積荷が全部爆薬だったの。近寄った瞬間自爆したわ」


 最初からマグノ海賊団を壊滅させる為に運行していた艦だったのだろう。

正体を見抜けなかったマグノ海賊団は、迂闊にも爆薬満載の艦へ強奪に向かってしまった。

結果―――被害に遭った。


「メイアは重傷。
私とジュラは爆発に巻き込まれて―――」

「…………黒髪?」


 ぎゅっと握る手が震えている。

怪訝な顔をするカイを前に、バーネットは声を上擦らせる。


「私が……悪かったの。
私が独断専行したから……ジュラもメイアも巻き込んでしまった―――」

「黒髪……」


 悲痛な声に、カイも口をつぐむしかない。


「……ご、ごめん。泣いたりして……」

「いいさ―――笑ったりしねえよ。
それで?」

「うん……私は両目、ジュラは両腕が骨折。
そのまま小惑星に不時着して、遭難したの。
互いに力を合わせるしかなかったわ。
二人でね―――」

「絆が生まれた、と」

「……うん。必死で壊れた通信機を修繕して―――
ガスコさんとメイアが救援に来てくれた」


 困難な状況で意思を一つにして、危機を乗り越える。

仲間意識が芽生えて当然だ。

育まれた感覚は、カイ本人もこの船で何度も味わっている。

些細な馴れ合いなど、あっさり吹き飛ばす強い結び付き。

二人はお互いを必要と出来たのだ。





「でもね―――」





 でも――――





「……そんな私たちの今までを」





 男と女は簡単に――――





「……あんたが全部壊したの・・・・・・・・・





 ―――分かり合えない。










 向けられた銃口・・を見て、カイは冷たく痛感した。










『マスター!』


 







 銃声と悲鳴が轟いた―――






















 

























































































<to be continues>

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