とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第四十二話




 ――翌日、当然のように有無を言わさず呼び出された。


『誰がここまでしろと言った』

「これには宇宙より深い事情がございまして……」


 連邦政府の代理人であるニーヴァ・ブラックウッドより、鬼のような催促で呼び出されてしまった。通信や既読拒否をすると問答無用で強制退去させられそうであった。

通信画面越しに見える彼の素顔は、実に険しい。連邦政府内において惑星エルトリアの管轄である彼の立場を思えば無理もない話かもしれない。

強制退去命令が下った惑星で、あろうことか通信技術の革命戦争が勃発したのである。人の住める惑星ではないと勧告された矢先に、技術革新なんぞ起こされたらたまったものではないだろう。


俺も寝耳に水だったので、昨晩はありえないように狼狽えてしまった。


『翌日ではないぞ。即日、大統領直々の命によって連邦議会に呼び出された。惑星エルトリアに関するあらゆる情報を至急提示するように、議会総員で詰め寄られたのだ』

「おっ、私共が事前に準備したデータがお役立ち頂けましたか」

『それ以上だ、馬鹿者。人類が生存する余地はないと判断された惑星が、突如テラフォーミングされて環境が激変。その最中に未知の技術が突如生み出されたとあっては、混乱の一つもする。
事前の観測データを改竄していたのではないかと、私の仕事の全てに対して疑惑がかかったのだぞ』


 今の状況が信じられないのであれば、以前の状況がそもそも違っていたのではないか。現実が受け入れられず、過去の否定に入るのは何処の世界でも変わらない現実逃避のようだ。

連邦政府の混乱も頷ける。彼らからすれば訳の分からん話ではあるだろう。先日までモンスターが跋扈する世界だったのに、今日になって産業革命が起きる新世界にまで発展しているのだ。

ユーリとイリスの異能にアリサやリーゼロッテの頭脳、歴史ある人外の協力とアミティエ達の技術、ジェイル・スカリエッティと戦闘機人達の戦力があってこそ成立する世界革命であった。


異世界よりもたされた革命だと説明しても多分理解してくれないだろうし、素性を探られる訳にもいかない。


「今更の話ではございますが、そもそも先住民が居る時点で立ち退き勧告は早計だったのではありませんか」

『結果論で物を語るな、少なくとも先住民たちではここまでの革新をもたらすのは不可能だった。問題なのは貴様という異分子だ』


 切り込んでみたが、逆に切り替えされてしまった。連邦政府より惑星一つを任された代理人は、やはり侮れない。混乱の最中であろうとも現実を分析できている。

問題なのは肝心の現実そのものだが、今日になってみても連邦議会は大荒れの様子だった。マスメディアは気が狂ったかのように、テレビジョンの誕生に熱狂している。

真っ先にメディアを取り込む手腕はクアットロ本人ではなく、商会長リヴィエラ・ポルトフィーノによるものだろう。若くして商会を築き上げた才女は政府そのものより、政府を追い込めるメディア関係を掌握したのだ。


テレビジョンの誕生でマスメディアがどれほどの力を持つことになるのか、情報メディアの歴史を知る俺はよく分かっている。


『私もこの後議会に再び呼び出される事になっている。とにかくまずは事情を説明しろ。
以前貴様と締結した話では、保証人との交渉を行うという段取りだったはずだ』

「騒ぎにこそなっていますが、ポルトフィーノ商会長リヴィエラ氏に保証頂ける契約は結べておりますよ」

『何を言っている。今の状況は誰がどう見ても、リヴィエラと貴様の立場は逆転しているではないか。
映像を遠方へと送る通信技術をカレドヴルフ・テクニクス社が開発実現したと、ハッキリ明言していたぞ。
世界へ売り出すのは確かにポルトフィーノ商会だろうが、この技術革命はカレドヴルフ・テクニクス社の存在なくては成り立たん。

立場上対等な関係を謳っているが、この時点でポルトフィーノ商会よりもカレドヴルフ・テクニクス社の方が圧倒的に上だ。極論を言えば貴様に見捨てられれば、リヴィエラは終わる』


 なんだって!? さてはクアットロの奴、シュテルが保有する技術をよほど高く売りつけやがったな。

確かに保証人になってくださいと下手に出れば弱みを握られることにはなるが、技術革新による宝の山に目を眩ませて保証の立場を当然とさせやがったのか。

つまり保証人ではなく、スポンサーとなるように強制させたのだ。単純な売り込みであれば成り立たない契約だが、カレドヴルフ・テクニクス社の通信技術は革命を起こせる力を持っていた。


並の商人なら及び腰になるが、相手は連邦政府にまで人脈を持つ大商人リヴィエラ・ポルトフィーノ。彼女は一大決心の出来る女傑であった。


『自信満々に保証を持ちかける態度だったのであるいは、と思っていたがとんだ斜め上だったな。これほどの通信技術を持っていたとは予想外だったぞ。
連邦政府そのものではなくポルトフィーノ商会に持ち込んだのも、なかなかの度胸だ。政府に吸収されれば重宝こそされるが、御用達に成り下がる。

自分達の技術にそれほどまでの自信があったということか、宮本良介』


 連邦政府と戦える技術があったからこそ正面から対決したのだと、勝手に想像されて俺は内心頭を抱えた。そんなつもりは全く無かったのに。

誤解だと言いたかったが、今言ったところでただの喚き事でしかない。既にメディアは連邦政府全体に喧伝していたし、主要各国にも話は思いっきり伝わっている。

ポルトフィーノ商会は今あらゆる財閥や企業を差し置いて、一代トップとまでなってしまった。今は単純に話題性のみだが、技術革新が成功すれば世界随一の商会にまで発展するだろう。


朝から嬉しい悲鳴が止まらない状態なのだろうが、連邦政府からのクレームは思いっきりこちらへ飛んでくる。


「連邦政府と殊更に構えるつもりはございません。惑星エルトリアに関する便宜を図っていただければそれで十分です」

『この状況下でそれを言うか。連邦議会では技術革新というお題目のテロリズムという声まで上がっているのだぞ』


 うん、そうだろうね――何しろ、クアットロのバカ野郎の目的はそこにあるだろうから。

惑星エルトリアの環境改善がスムーズに進んでいる事自体別に構わないのだろうが、生来の愉快犯であるあいつはそれだけでは満足せず一芝居打ったのだ。

このまま単純に成功するのも面白くないと、交渉を持ちかけてステージを引き上げたのである。戦闘機人として改造されたあいつの悪性ぶりは留まることを知らない。


その点だけ見れば俺への反乱に見えるが、嫌らしいことにこの技術革新こそあいつなりの奉公ではあるのである。実際成功すれば立身出世どころの話ではないし、俺なら出来ると確信しているのだ。


「電波法の成立はそれほど厄介ですか。我々の技術を受け入れてくだされば、連邦政府にとっても大いなる利をもたらすはずです」

『通信技術の公平且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的とするのが目的だというのは分かる。
だが周波数の電波を使用して空中線電力が制限してしまうと、今までの通信運用が叶わなくなる。各国に存在する無線局に対して、ナタを振るわなければならないだろう。

主要各国への説明が必要となるし、技術基準もすべて見直しとなってしまう。すぐに切り替えることなど不可能だ』

『それを夢物語だと切り捨てられないのは、今の通信技術について限界を政府そのものが痛感しているからでしょう。
私の見立てでは無線局だけではなく、無線設備の規格についても各国の利権が絡んでいるのではありませんか』

『……政令で定める事項ではある、とだけ言っておこう』


 そもそも通信電波を統一すれば、少なくとも連邦政府と主要各国の間でクリアな通信が約束されるのである。だが実際のところ各国で規格が異なっていて、通信の発展が阻害されている。

政令で定める事項とはなっているが、実際のところは政府の役人と各国の交渉人との間で可決されるのみ。利権が絡んでしまい、統一することへの不利益が生じてしまうのだ。

高くて高品質ではなく、安くて平凡が求められてしまう。悪しき伝統といえばそれまでだが、そうした利権の奪い合いによって商売というのは活気づくのも事実。誰かを責めたら切りがない。


そこへ登場したのがカレドヴルフ・テクニクス社とポルトフィーノ商会の開発実現による、テレビジョンという通信技術の革命だ。今頃各国がひっくり返っているだろう。


「お話はよく分かりました。申し訳ありませんが、今更撤回は出来ませんし、政府に対する技術の提供も出来ません」

『ポルトフィーノ商会による交渉や工作も行われているだろうからな。マスメディアも後押ししているとあっては、貴様としても引けぬ状況であろうよ。
惑星エルトリアから強制退去させれば封じ手にはなるだろうが、ポルトフィーノ商会の保証が入っているとあっては余計な騒ぎを増やすだけだ。

私は今回、貴様と交渉するべく時間を取っている』

「伺いましょう。連邦政府からの要求は何でしょうか」

『惑星エルトリアの強制執行を執り行い、法律上の権利を強制的に実現する手続きを勧めている。これが成立すれば、エルトリアにある技術を全て奪い取れる。
だが無慈悲に執行すればポルトフィーノ商会が干渉し、マスメディアも黙っていないだろう。


そこで、建物明け渡し請求を行う』


「法による執行で、通信技術を合法的に奪うと」

『裁判で建物明け渡し請求を行い、勝訴判決を得た場合に請求できる措置だ。
家主と保証人。つまりお前とリヴィエラ・ポルトフィーノの二人を、議会へ参席してもらう。

議会内だからといって不利益な真似はさせないことを、私が保証してやる。マスメディアも入るので、お前たちの立場は守られるだろうよ』

「それならば身の安全は保証されていますね。対面できるのを楽しみにしていますよ」


 惑星エルトリアが存在する宙域全てを統率する、連邦政府。大統領が君臨する本拠地、主星。

惑星エルトリアの主権をかけて、一般人でしかない俺が議会へと乗り込まなければならないらしい。



異世界ではなく異星――SFの世界にでも飛び込んだかのような錯覚に陥った。















<続く>








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