とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第四十三話




 惑星エルトリアが存在する宙域全てを統率する、連邦政府。大統領が君臨する本拠地、主星。

建物明け渡し請求を行う裁判で、勝訴判決を得た場合に請求できる措置。その権利を勝ち取るべく家主と保証人、つまり俺とリヴィエラ・ポルトフィーノの二人が議会へ参席する事になった。

エルトリアから主星へ向かう手段として、ポルトフィーノ商会より大商船が先導して出迎えに来てくれた。先日貴族の坊っちゃんを載せてきた船とは、雲泥の違いであった。


船の立派さと巨大さが、ポルトフィーノ商会の期待値を示している。どれほど大袈裟に売り込んだんだ、あの悪徳メガネ女は。


「うう、緊張してきました……主星にまで訪れたことはないんですよ、私」

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。魔法使いさんが一緒なんだから、何があっても大丈夫!」

「お姉ちゃん完全任せで他人事のように言ってくれますね、キリエ……」


 一応俺は惑星エルトリア代表という立場ではあるが、あくまで代理の名目である。エルトリアの主権を争う上で、フローリアン一家の代表者が代理保証してくれる必要がある。

フローリアン夫妻はミッドチルダの医療施設で治療中なので、フローリアン姉妹しかいない。キリエに政治的判断なんぞ出来ないという謎の太鼓判で、めでたく姉のアミティエに決まった。

そういう意味では俺だってキリエと同じく政治的教養なんぞないのだが、俺は絶対辞退できない立場にまで追い詰められている。


何故だ、どうしてこうなった。一年前は一文無しで日本を浮浪していたんだぞ、俺は。


「産業改革が半ばで申し訳ないんだけど後のことはよろしくね、リーゼアリア」

「計画書は二人で起こしたものなのだから、平気よ。ナハトヴァールが一緒なんだから、何の問題もないわ」

「いってらっしゃーい!」


「くそっ、あいつで笑顔で見送ってやがる。お父さんが居ないと寂しいとかないのか」

「ナハトヴァールにとって、惑星エルトリアの秘境は遊園地のような遊び場だから」


 満面笑顔で頬ずりしているリーゼアリアに抱っこされて、ナハトヴァールは何の遠慮もない笑顔を浮かべて元気に手を振っている。お父さんに未練はないらしい、うわーん。

でも考えてみれば俺も孤児院を一人で出ていく時、何の寂しさもなく悠々と飛び出していった。親代わりの保母やガリ達を置き去りにしても、躊躇なんぞしなかった。血は繋がっていないが、似たもの親子ということか。

元気印のナハトヴァールは妖怪達にも大層可愛がられており、冒険に出ていってはモンスターをやっつけたりしていて、惑星ではマスコットどころかヒーローのように扱われている。子供だから心配という概念はあいつにはない。


そんなナハトヴァールを、ユーリは苦笑いして見守っている。


「わたしはお父さんがいなくて寂しいですよ!」

「でもお前は留守番ね」

「うう、もっと早くエルトリアの環境改善していればこんなことには……」


「あんたが本気だすと、惑星が吹っ飛ぶから駄目。アタシがどれだけ調節に大変だと思っているのよ」

「マスターはお父様と一緒に行かれないのですか」

「こいつが居なくて清々するわ、フン」

「そう言って見送った夜、夜泣きするんですね」

「あんたはアタシをどういうキャラにしたいのよ、イクスヴェリア!?」


 ユーリ、イリス、イクスヴェリアの惑星改善組は当たり前だが居残りである。彼女達の作業がいちばん重要であり、作業半ばで放り出すなんて到底出来ない。

口ではアレコレ言っているが、遺跡の力を活用するイリスの調整能力はずば抜けており、ユーリの強大な生命エネルギーを見事に惑星内に循環させていて、エルトリアは見違えるように復興を遂げている。

リーゼアリアの復興計画と連動する形でイクスヴェリアも補佐しており、環境に対する悪影響は出ていない。冥王の統治能力は産業革命でも生かされており、これからの社会には欠かせない人材だった。


我が子の留守番組は、こいつらだけではない。


「ちぇー、ボクだってパパと一緒に行きたかったのに」

「愚痴をこぼすな、レヴィ。我とて父と同行して政治を学びたかったのだが、アリサ殿が推し進めていた行政面を停止させるわけにはいかん。
父やアミティエが留守にする以上は、エルトリアの留守を誰かが預からねばならんからな。後継者である我しかおるまい。

レヴィは我の手足としてこれから積極的に活躍してもらわねばならんからな」


 至極残念がっていたが、レヴィとディアーチェも留守番である。理由はこの子達が言っていたとおりで、俺の留守を誰かが預からねばならないからだ。

可能性は低いと思うが、連邦政府より個別で俺の留守中に干渉してくる事も考えられる。貴族の坊っちゃんが暴走したように、強制退去が降っているエルトリアの立場は今非常に危うい。

急激な復興を遂げつつあるエルトリアは、テレビジョン誕生で注目されている。利権争いのダシにされてはたまらないので、力ある行政官が留守を守る必要がある。


ロード・ディアーチェは正に的確の存在で、機転のきくレヴィと組めば怖いものなしだろう。今回はうちの家族からは、すでに現地入りしているシュテルが俺のサポートに入る。


「俺の護衛は妹さんか、久しぶりの大人モードだな」

「お任せ下さい、剣士さん」


 この世のものとは思えぬ美しさを誇る清廉な女性となって、月村すずかが護衛についている。ユーリ達の協力で魔力補給された妹さんは絶好調のギア3モードだった。

さすがに連邦政府に同行する上で、子供姿は冗談と思われかねない。大人顔負けの強さを誇っているが、人間なんて異世界であろうとも見栄えを気にするものだ。

強制退去が出ているエルトリアの立場は低く、既に侮られている。この上で子供を連れて裁判になんて訪れたら、どんな顔されるか分かったものではない。


ミッドチルダでは才能あれば子供でも活躍できる社会だが、あそこは魔導が発達している文明社会だ。比較するのは間違っている。


「警護チームはセッテを筆頭に、私とチンクが同行します。その……この度は」

「クアットロがご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした、陛下」

「頚椎を折る」

「そこまで責任感じなくてもいいからね!?」


 家族ならではというべきか、テレビジョン革命の裏にクアットロが仕掛けていると気付いたセッテ達が土下座せんばかりに謝罪してきた。セッテなんてあまりの怒りに拳を震わせている。

あいつは悪ノリしただけで、売り込み自体は期待以上の成果を出してはいる。問題はその成果が世界を巻き込む勢いだったため、俺にまで波及しているというだけだ。

変に慰めても尾を引くだけなので、俺は快く同行を許した。連邦政府は言わば敵の主戦場、何があるか分からない以上彼女達がいてくれると頼りになる。


特にクアットロの制御には、セッテが欠かせないからな。こいつがいるだけで、蟻ん子のようにあいつは大人しくなる。


「お父様に同行したかったのですが、物見遊山ではご迷惑ですので私は残ります。騎士シグナムは強き剣士でして、彼女より実戦を通じて剣を学ぶつもりです」

「宮本の子供と聞き及んでいたが、太刀筋は素晴らしいものがある。お前にはいずれ恩返しをしたかったからな、指導は任せてくれ。
剣道場のバイトで学んだ経験が、お前の子供に生かせるのであれば光栄だ」

「僕も騎士シャマルより、多くのことを学ぶつもりです。どうぞこちらは心配せず、父は自身のことに専念して下さい」

「オットーちゃんの結界術は、目をみはる資質があるわ。教養も高いし、貴方の子供とは思えないわね。シャマルお姉さんがキッチリ面倒を見てあげるわ」


 ――そう、意外にも戦闘機人ディードとオットーは守護騎士達に弟子入りしたのである。


寡黙で真面目なディード達はシグナムやシャマルと波長が合うらしく、見回りなどで一緒するうちに気心が知れたらしい。俺の子供だという点も注目となったのだろう。

剣に魔導と学べる分野も共通しており、師弟関係はなかなか良好だった。ディードやオットーもイリス事件で自分の力不足を痛感したのか、素直に指導を受けている。


この関係は予想できなかったが、なかなか面白い組み合わせと言える。一方で――


「フェイトは……相変わらず忙しそうだな」

「本日は魔龍の姫君に鍛錬相手を申し込まれたようです。昨日は妖怪の鬼娘の生活相談に追われていたばかりなのに」

「基本的に良い子で頼み事を断れないタイプだからな」

「主とは真逆ですね」

「アホのお前に言われたくない」

「ですがご安心を。フェイト様に代わってローゼが同行して主のお力となりますので」

「お前はインフラ担当で、フェイトより忙しいだろうが!」


 フェイト・テスタロッサは、ナハトヴァールとは違う意味で惑星エルトリアのアイドルとなっている。

生真面目で有能なフェイトは以前の母との関係より学んで、積極的にコミュニケーションを取るべく頑張っている。この努力が良い意味で災いしてしまった。

とにかく頼まれては断れないので、次から次へと妖怪達の相談や依頼を受けているのである。あちこち引っ張り出されて、あいつは朝から晩まで誰かと一緒に働いている。


ローゼは惑星エルトリアのインフラ担当で惑星内の工事を行っているので、フェイトとの遭遇も高いのである。


「心配しなくても多分後で呼び出すことになるから、今はインフラに集中してくれ」

「テレビジョン放映ですね。聞きましたよ、主。
電波法が成立したら、世界初のテレビジョン放送で主が呼ばれるそうではありませんか。

その時は世界の顔になりますよ、主。ローゼも鼻が高いです。必ず惑星宙域全てに電波を届かせますので、どうぞお楽しみに」

「くそっ、いらん事に注力しやがって……どうしてこうなった」


「先日テレビジョン・コマーシャル企画書をシュテル様に手渡しておきましたので、採用されているはずです。
ローゼと主の出会いであるうどんもこの異星で売り出す計画ですので、万事おまかせ下さい。

莫大な富を築けますよ、主。ローゼがいて本当に良かったですね」

「クアットロに余計な入れ知恵したのはお前かああああああああああああああああああああああ!」


 ――放送番組の前後や番組の途中に本編を中断して流される広告放送、テレビジョン・コマーシャル。

CMという規格外の利益を生み出すシステムを、あろうことか異星に思いっきり導入する計画を立てている最新型自動人形。


広告宣伝業界、爆誕である。















<続く>








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