ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action95 −真度−








タラークの人型兵器が一機、ニル・ヴァーナより隠れて飛び出したデリ機を追っている。

デリ機は戦闘能力は汎用型ドレッドとほぼ同等程度しかないが、ステルス機能には優れていた。

そもそもデリ機は戦闘中トラブルなどが起きて、急遽デリバリーが必要になった際に戦場へ駆り出される。


ステルス性能に優れていないと、撃墜されて二次遭難が起きて目も当てられない。


「このまま見つからずに、追跡を撒くのは難しいか」

「勘で動いているようだから何とも言えんのう……
既存のヴァンガードではデリ機のステルスを破るのは不可能じゃが、実際この人型兵器は追跡している。

独自の勘があるとしかいいようがない」

「直観で動いている限り、疑念が貼れないと延々と追跡し続けることも考えられるか」


 判断の難しい状況である。

機体性能を考えれば、追跡するのは困難である。

しかし困難であればそもそも追跡したりはしないし、今も追いかける必要はないだろう。


機体性能で判断できないのであれば、現場で判断するしかない。


「俺が援護するか」

「一応聞いてやるが、どうやって?」

「青髪が逃げ切れるまで、俺が追跡を妨害するしかない」

「だから、どうやって?」

「俺の蛮型で出るしかないじゃないか」

「……保管庫が閉鎖されていることは一旦置いてやろう。
お主がニル・ヴァーナから飛び出せば余裕で発見されるんじゃが、そこはどうするつもりじゃ」

「同じ蛮型だから、仲間ヅラするんだよ。
何も問題ありません的な顔をして」

「よかったな。
今のアホな発言で、儂の中でお前がスパイである可能性が低くなった」

「そんなことで!?」


 メイアの危機に対するカイの判断に、アイは胡乱な目で見やった。

仲間のために即座に動くカイの行動力はいつも通りであり、スパイによるソレではない。

状況を楽観視しないのも、この一年間の刈り取り戦争による経験の賜物であろう。


ただ、その判断自体はいつも通りの考えなしだった。


「お主の機体はこの一年間で改造されまくっておるんじゃぞ。
機体識別が通らん可能性が高い。

そもそもパイロットのお主は軍に認可されておらんのだろう」

「ま、まあ、三等民で成り行きで使っているだけだからな……
い、いやでも、当時の状況を顧みれば仕方ないんじゃないか」

「当時の状況を顧みられてよいのか、お主。
何のためにこの船に隠れておったんじゃ」

「う、うーむ……どうにか誤魔化して」

「軍人に何をいう気じゃ、お主。
何も怪しくはないから引き返せなどと言っても、まずお主が怪しいとなるぞ。

まあお主が捕まえれば、結果的にメイアが逃げられると思うが」


 たしかにこの行動で、メイア自体はまず逃げ切れるだろう。

しかし今度はカイが発見されて捕まることになり、ドゥエロやバートのように言い逃れするのは難しい。

あの二人は士官候補生で身分が保証された存在であり、当時の状況が考慮されて戦果となったのである。


カイは確かに当時酒場の常連である中将の推薦で軍艦に乗船したのだが、当時の状況が考慮されるかどうかは微妙だった。


「青髪を追跡している軍人が誰か分かるか」

「軍のデータベースにアクセスして、機体識別すればパイロットくらいは分かるかもしれんが……
何をする気じゃ、お主」

「ドゥエロ達と同じ士官候補生なら、アイツラの名前を出せば話が通じるかも知れない。
要するに足止めできればいいんだからな」

「それはそれでリスクのある行為じゃが、飛び出すよりはマシか……どれ」


 カイが暴走するよりはマシだと判断して、アイはコンソールを操作する。

これまで一年間高度な技術を駆使して襲いかかってきた地球に比べれば、タラークの技術は圧倒的に劣っている。

さほど時間がかからずに、データベースのアクセスに成功。


二人して、コンソール画面を覗き込んだ。


「"キュンメル・大関"、百一式蛮型撲撃機に搭乗するパイロットのようじゃ」


 初老の軍人が画面に映し出されている。

熟練のエースパイロット。確かに直観で動きそうな面立ちをしている。


カイはその顔を一目見るなり、目を見開いた。



「もしかして――大関のおっさん、か……?」

















<to be continued>







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