ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action68 −大伴−








 アイ・ファイサリア・メジェール。

マグノ海賊団ではエンジニアの技術と知識を高く評価され、職務についている。

子供の清純と大人の威厳を重ね合わせた、背丈の小さな女の子。


堂々と胸を張っている姿は幼いながらに威厳があり、大人の雰囲気を身に纏っている。


「お前が地球のスパイであれば、お前を正さなければならん。
儂は、お前のエンニジアじゃからのう」

「! お前……」


 彼女が突きつけているレーザーガンは、本当の意味で制止だった。

抵抗すれば問答無用で撃つ。

抵抗をするなと、地球の味方などするなと、彼女がカイを止めるつもりだった。


スパイとして疑っているが、スパイとして処刑するつもりはなかったのだ。


「お前はこの一年、男女関係なく儂らと共に戦って救ってくれた。
その功績は認めておるし、何よりエンジニアとして儂がお主を近くで見てきた自負がある。

何としてもここで止めねばならん」

「ここで、という事は――」

「マグノ海賊団は無条件降伏し、男達は祖国へ帰った。
儂とお前の二人であれば、角も立たぬじゃろう。

悔い改めるのであれば悪いようにはせんし、地球と戦ってくれるのならばこの先も共に戦おうぞ」


 彼女は機械工学を筆頭に、様々な専門知識と広範囲の技術力を扱う天才。

古風な口調の独特の性格で、クルーには敬遠されがちな人間。

今にして思うとブザムと同じくスパイだっただけに、距離感を保って仲間達と接したのだろう。


そういった意味では、今この瞬間は一歩歩み寄っている。


「だから地球のスパイじゃないと言っているだろう」

「これまでの話だと、確かに納得すべき点も多い。
しかし同時に、これまでの行動による結果について見方を変えれば、地球側のスパイという判断もできる。

それはこれまでお主に指摘した事実が物語っているであろう」

「うーん……」


 カイがもっとも怪しまれているのは、素性が明らかではない点だ。

ドゥエロやバートはメジェールから見れば敵側の男ではあるが、素性は確かである。

士官候補生である事は証明するまでもなく、皮肉なことに敵国が証明してくれている。


しかしカイは軍艦に乗船していた労働者という、怪しさの塊だった。


「そもそもお主、士官候補生でもないのにどうして軍艦に乗っておった」

「俺が世話になっていた酒場の常連が軍人で、頼み込んで乗せてもらった」

「……お主、自分で言ってて怪しいと思わんのか」

「い、いや、そうだけど……」


 機密の塊である最新鋭の軍艦に、労働階級の人間を乗せるなんて正気の沙汰ではない。

当然乗船する人間が限られるし、徹底した身元確認が行われるだろう。

当時中将だった酒場の客が酒場の主と懇意の関係であくまで一スタッフ、そして小間使い同然で乗船を許されたのだ。


実際軍人以外にも軍艦を維持する労働者は必要で、コネも含めて乗せてもらえたに等しい。


「乗船したって厳しい行動制限があったし、一スタッフとしてこき使われていただけだ」

「そんな人間がどうして海賊退治になんぞ出たんじゃ」

「うぐぐ……」


 マグノ海賊団が軍艦を襲撃した際、カイはチャンスとばかりに撃退するべく行動した。

メイア達の油断をついて濃度の高いアルコールを浴びせて、火を片手に脅迫するという手段。

落ち着いて振り返ってみれば非常に危ういやり方で、アルコールだからといって火がついたかどうか怪しいが、忙しない状況がなんとか成立させていた。


アイは溜息を吐いた。


「まあここまで怪しいと逆にスパイとは思えなくなってきたがな。どうしたものか」

「俺と一緒に行動して見張ればいいだろう、エンジニアなんだから」

「ふむ、ならば――」


 ――次の瞬間、融合戦艦ニル・ヴァーナが鳴動した。

















<to be continued>







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