ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action65 −志向−
――マグノ達の刑務作業はこの上なく順調だった。
そもそもの話、流刑地の環境は極悪である。重犯罪者の成れの果てとなる場所であれば当然とも言えるが。
犯罪者達は自業自得と言えるかもしれないが、刑務官側はたまったものではない。
流刑地で自ら進んで働きたい人間など、そうはいない。
「……奴らはなんと言っている?」
「第2世代に差し掛かる者達の環境改善を求めております」
そこでマグノ海賊団の刑務作業である。
マグノ達は故郷から追い出された者達で結成された海賊団、劣悪な環境下でのし上がった経験がある。
キッチンクルーやクリーニングスタッフなど、非戦闘員であろうとも環境改善が可能なクルー達が多い。
彼女達が乗り出した結果――流刑地の環境は劇的に改善されていった。
「自分達の環境を変える要望はないのか」
「ありません。
第2世代の受刑者達の中には体調を崩している者達も多く、自分達より彼女達の環境改善を求めています」
「具体的にどのような要望をしている」
「要望提案書を提出してきました。
単なる要望や提案だけではなく、目的や趣旨、それらに関する工数や予算など具体的な見積もり案が記載されています。
チェックも入念に行ったのですが、どれもこの施設で実現可能な案ばかりでして……」
「ちっ、貸してみろ」
刑務官達が困ったのは、マグノ海賊団が環境そのものの改善を行っている点である。
例えば受刑者達に都合がいい提案や改善であれば、即座に拒否していたであろう。
しかし彼女達の行動は全て流刑地全体、つまり刑務官達にとっても都合の良い提案だったのである。
自分達にまで協力してくる彼女達の行動は意味不明であった。
「確か比率では、第2世代の受刑者達が体調不良を多く訴えてきているのだな」
「はい、勿論奴らは重犯罪者。
仮に死んだとしても情けをかける余地はありませんが、問題は病による感染です。
重病者を隔離すればよいのですが、その施設の収容人数にも限りがあります」
「……近年メジェール政府への反逆、不満を訴える者達が多くなっている。
政治犯だけではなく、思想犯まで容赦なく流刑地に送られている強硬策が、ここにきて負担になっている。
政府は我々に押し付けるだけだからな……頭の痛い問題ではあった」
本来、流刑地が圧迫されることはない。
重犯罪者達が収監されるこの地で、長く生きられる者は少ない。死人が出れば空きが出る。
言い換えると死人が出るよりも先に犯罪者を押し付けられてしまうと、当然死者より受刑者が多くなってしまう。
その受刑者が病人になって感染を広めてしまうと、刑務官達まで被害が及んでしまう。
「そんな連中の環境改善など望んで、マグノ海賊団に何の得がある。
まさか第2世代を取り込もうとしているのか」
「環境改善を訴えているのは病人ですが……」
「戦力どころか、協力者にもならんか……では純粋に刑務に励んでいるとでも?」
「警戒されるのはよく分かりますが、その、目立った動きがない――
いえ、正確に言うと目立ってはいるのですが、それらが全て受刑者だけではなく我々にも恩恵があり、その……」
「……なるほど、刑務官側にもマグノ海賊団に傾倒する動きが出てきているのか」
もう一度いうが、流刑地で自ら進んで働きたい人間なんてそうはいない。
そんな彼らがいわゆる労働環境を改善されて、喜ばない筈がない。
こうして流刑地は、本来の機能を失いつつあった。
<to be continued>
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