ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action62 −遊動−
士官学校の同期達を仲間にすることが出来たドゥエロとバート。
情報共有を追えた彼らだが、劇的に動き出すことはなかった。少なくとも、今は。
彼らは国を変えるべく志を一つにしているが、決して国家転覆を図るのではない。
テロリズムでは、地球との差別化は難しい。
『話は分かったが、マクファイル達はどうするつもりなんだ』
『まず第一に言っておきたいが、我々は決して国家に反逆するつもりはない。
情報共有した通り、このタラークという国には不信がある。不義があり、不条理がまかり通っている。
けれどそれでも我々は軍人であり、国を守る立場の者達だ。国家に争乱をもたらしてはいけない』
軍人達は全員、頷いた。
タラークという国家からの洗脳は解けつつあるが、忠誠心の全ては消し飛んだのではない。
国に乱をもたらすことは許容できず、男たちの間で闘いが生まれることは望んでいない。
ドゥエロも軍人としての誇りや気概はなくても、軍人達の意思は少なくとも理解はしているつもりだった。
『君達にしてもすぐに女性を受け入れるのは困難だろう。お互い、知らないことが多すぎる。
だからこそまず内部を変えるべく、国の外で起きている争いを終わらせる。
その為に、我々次世代の者達が立ち上がらなければならない』
革命ではなく変革をもたらすのだと、ドゥエロが説き伏せる。
暴力で訴えたところで内乱が起こるだけで、国という内部を変えるのは難しいだろう。
この点についてはどうしたって時間が掛かるし、時間が必要となる。
だからこそ余計な時間をこれ以上使わないためにも、今起きている無駄な争いを止めなければならない。
『変革を望むのであれば、やはり同士を増やす必要があるな』
『その通りだ、そこで君達の出番だ。
国に突然訴えるのではなく、まず目上の人間と話すところから始める。
今私達が打ち明けたことの全てを伝える必要はない。
君達が今疑問に感じていることを伝えた上で、認識を改めていくところから始めるんだ』
『なるほど、確かにここ最近の国からの命令には不審を抱く者達も多い』
そもそもの話、今まで天敵の仲だったメジェールと手を組んで海賊を捕まえるという話から無理が出ている。
マグノ海賊団という共通の敵を相手に組むのは道理にかなっているように見えるが――
それにしたって手順というものがある。
『特に軍の指揮官、いわゆる俺達の上司は強制や無理を強いられて困惑している方も多くいらっしゃる。
そこから切り崩すことは出来るかもしれない』
同期生達の話では、今回のタラーク・メジェール合同作戦には想像以上の不信が芽生えているらしい。
昨日まで天敵だったのに、急に一緒に行動して海賊達を取り締まれというのだ。
それが出来るのであれば何故今までやらなかったのか、何故今ごろになって急に手を組むようになったのか。
国家も地球という単語を話すことが出来ない以上、命令で押し切るしかなかったのだ。
『よろしく頼む。私やバートもツテを頼って動くつもりだ』
こうして士官候補生たちとは一旦分かれ、ドゥエロとバートは次の場所へ向かった。
まずバートの家族に話を持ちかけて、次に士官候補生達という自分たちの同期を頼った。
次に向かうのはカイ・ピュアウインドという共通の友達、その家族の元へ向かう。
「カイに教えてもらった場所はここだが――」
「これはまた、随分なんというか趣のある酒場だね」
結論から言うと、カイがドゥエロ達に説明した場所には確かに酒場があった。
特に手入れもされていない、一軒の店。酒場だと言われればそうだし、空き家と言われても納得してしまう。
飾っている様子は何一つなく、少なくとも営利目的で建てられた店ではなかった。
客に楽しんでもらうことを目的とせず、あくまで酒を飲む場所でしかないのだろう。
「怯んでいても仕方ない、行くぞ」
「まあ取って食われたりしないだろうしな……失礼しま――」
「変わった客だな」
バート・ガルサスが店に入って恐る恐る挨拶をするが、野太い声に遮られる。
若さこそ感じないが、年配らしい渋い声。
単純に生きてきたのではなく、年輪のように刻まれた人生を感じさせる男の一声だった。
男はドゥエロ達を一瞥し、
「ガキ共が来る場所じゃねえ、と言いたいが――うちの小僧の知り合いか」
全てを見透かしているかのように、告げる。
険はまだ取れていないが、少しだけ警戒の薄れた声が投げかけられた。
この男こそがマーカス、カイの育ての親である。
<to be continued>
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