ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action60 −親拝−
ユメがカイ達の想像を超えて協力的な姿勢を見せてくれている。
ジャーナリストを目指すミスティも取材の熱があふれ、ここぞとばかりに積極的に聞いていく。
ユメ本人は人間達への協力こそしないが、カイの役に立てるとあれば進んで協力してくれていた。
カイ達にとっては長年の謎であったのだが、意外と簡単に真相が明らかになっていく。
「あんたの本体、オリジナルのペークシス・プラグマは何処にあるの?」
『ここに向かってるよ。ますたぁーがカッコよく刈り取り兵器をぶっ潰したから結構焦ってるみたいだよ、アハハ。
主戦力引き連れてきてるから、次の戦いに勝てばバッチリだね!』
「うわっ、本当にこっちへ向かっているんだ……」
カイ達が最初の母艦を撃破した際、他の惑星へ向かっていた母艦が全てタラークとメジェールを目標としたことは判明している。
半年前に判明していた事実で用心はしていたが、主戦力が向かっていることはこれで明らかとなった。
それに加えて全戦力が向かっているという事実は悲報であり、朗報でもあった。
決戦――かつてない死闘となるのだろうが、これが最後の戦いとなる。
「オリジナルのペークシス、つまりあんたを奪ったら地球は刈り取りできなくなると考えていい?」
『うん。ユメがいなかったらあいつらなんて、汚染された星にしがみつくしか能が無くなるもん。
ますたぁーのおかげでこうしてユメが生まれたんだし、もう協力してやる義理もないしね』
「そっか……精霊が生まれたのは、カイと会ってからなんだね。
精霊の試練ってのを乗り越えたと聞いてるし、あんたって意外とやる奴だったのね」
「お前の俺に対する期待値が低すぎる」
オリジナルのペークシス・プラグマが地球に協力していたのは、ユメという精霊が宿っていなかった為。
正確に言うと意思そのものはあったのだが、精霊としての自我が目覚めたのはカイと接触して名を与えられたからだった。
ソラもカイを通じて交信を行い、名前を与えられて忠実な精霊となった。
世界の観測者という一面を除けば、二人共良い子なので刈り取りに協力する意義を見出だせなかったのだが、これで明らかとなった。
「主戦力が来るという話だけど、無人機ばっかりなの?」
『ううん、地球人がいるよ』
「えっ!?」
――地球人が、乗船している。
最後の戦いとあって刈り取り兵器のみで戦うのかという、少女なりの軽い疑問が――
予想外の事実を、浮き彫りにした。
「ち、地球人って……有人機なの!?」
『そうだよ。刈り取りを指揮しているのが乗ってる』
「ど、どういう奴なのよ……こんな狂った計画を推進しているのって」
『話したことなんてあるはずないじゃん。オリジナルのペークシスにユメがいる事さえ知らないよ。
いちいち教えてやる義理なんてないしね、気持ち悪いし』
「お前がそこまで嫌がるような奴なんだな……」
あっかんべーしながら地球人の心証を述べるユメ。
確かにユメという自我が宿っていることが分かれば、利用しようとするだろう。
ペークシス・プラグマは本来制御できないエネルギー体であり、人類はあくまでペークシスからのお零れに預かっているに過ぎない。
強大なエネルギー結晶体に意思があると分かれば、強制させてでも最大限のポテンシャルを引き出そうとするだろう。
『ますたぁーはその点ユメやソラを女の子として可愛がってくれるもんね、えへへ』
「普段何しているのよ、あんた。イヤラしい」
「一緒に生活しているだけなのに、そこまで悪しきざまにいうか!?」
カイがもしその気になれば、ユメやソラは喜んで戦力として協力するだろう。
強力無比なエネルギー結晶体が本気になれば惑星規模の力を得ることが出来るというのに、カイは決してしなかった。
この最終決戦においても結晶体ではなく、あくまでソラやユメという精霊本人と一緒に戦おうとしている。
その事が嬉しくて、ユメは無邪気に笑い、ミスティも苦笑している。
「何か思っていたより凄いことが聞けたけど……そろそろお姉様達に連絡を取りましょうか」
「そうだな、想像以上の情報が聞けたからな。俺達も動き出そう」
地球とペークシス・プラグマ、ペークシス・プラグマとユメ達の関係。
明らかとなった事実は最終決戦に向けて、重要なピースとなったことは間違いない。
加えて、地球人の存在。刈り取りという兵器ではなく――
地球人という同じ人類と、戦わなければならない。
<to be continued>
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