ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action40 −出缺−
タラークやメジェールには、レジというシステム。ガスコーニュが開発した新システムにより、カイ達はようやく展望が見え始めた。
成果による報酬で弾薬類を買い物するという、軍隊では絶対に有り得ない兵装システム。
発想が一切見えないからこそ、両軍が迂闊に手出しできずロックが掛けられたまま放置するしかなかった。
ゆえにこそ過去見習い店員だったカイが解除できて、レジシステムを活用できる。
「ガスコーニュの船もそのまま使えるな。一応運転の仕方は習ったけど、敵に見つからないようにするのは自信がないな」
「私が操縦しよう」
「えっ、お前に乗れるのか青髪」
「一応言っておくが、私にだって新人の時期はあったんだぞ。お前と同じく、ガスコさんの元で下働きした事があった」
「意外……お姉様が下働きなんて!?」
驚くカイやミスティは知らないことだが、実はメイアのリーダー抜擢もかなり異例の出世である。
ディータほどではないにしろ、メイアも新人と呼べる時期から見込まれて抜擢されたのだ。
だからこそ同じ新人であるディータ独特の才能や感覚を見いだせて、彼女を自分の後継者に抜擢できたと言える。
彼女は孤独な性格こそ災いしているが、新人時代は非常に勤勉でレジ見習いの時も真面目に学んでいた。
「船のシステムも問題ないので、発進は可能だ。後は外の状況だな」
「その点はあいつらに聞くのが一番だな。ソラ、ユメ」
『イエス、マスター。ニル・ヴァーナには監視船が一隻、牽引用の船がもう一隻あります』
ここでも、マグノ・ビバンによる無条件降伏が功を成していた。
無抵抗なままで全面降伏、全兵器を放置して乗員全員が連行される事態。
ここまで徹底して無条件降伏を貫いた事で、警戒する意味はほぼ無いとニル・ヴァーナへの警戒や監視は緩くなっている。
乗員全員がいないと思われているので、ある種当然であった。
『はいはーい、地球の母船は放置済み。下手に触るとヤバそうってんで、近付きもしてないよ』
こちらはむしろタラーク・メジェール首脳の意向が顕著だった。
何しろマグノ海賊団が地球より奪った母船であり、祖先の星の大切な主戦力。
勝手に触る訳にはいかず、さりとて破壊も出来ない。下手に近づくと、防衛機構が発動する可能性もある。
となれば君子危うきに近寄らず、そのまま放置されていた。
「警戒は緩くなって入るが、どうやって脱出するかだな」
「それも心配ない。ガスコさんの船は電子迷彩システムが搭載されているからな、監視船くらいなら欺ける」
「へえ、便利なシステムが搭載されているんだな」
「忘れたのか、カイ。我々は海賊だぞ、見つからないようにするのが第一だ」
「……ものすごい説得力だ」
「……これ以上無いですね」
そう、基本的におくびにも出さないがメイア達は海賊である。
奇襲は刈り取りがよくやっているが本来、というのも変な話だが海賊達こそが奇襲の専門家である。
特にガスコーニュのレジ船は補給が主目的の為、生死が飛び散る戦場の中で敵に見つからずに仲間の元へ向かう必要があった。
いかに敵に警戒されずに近付き、急襲を仕掛けるのか――彼女達ほど適任者はいない。
「冷静になって考えてみると、俺も国に追われる身になったんだな……」
「存在が認識されていないというだけで、見つかるとマズいもんね」
カイ・ピュアウインドは今更ながら、自分の立場を自覚する。
正しいことを追求した結果、国と戦うことになってしまった。
では自分が間違っているのか――それは違う。
結局正義というのは、立ち位置によって変わってしまうのだと痛感した。
<to be continued>
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