ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action19 −近灸−








 ブザムこと浦霞天明と一旦別れたバート達は士官候補生を育成する軍事学校に寄って、まず本作戦における成果を上司に報告。

実態はマグノ海賊団に襲われた挙げ句軍艦に取り残されたのだが、成果を挙げた今はタラーク上層部によってあくまで軍事作戦によるものとされている。

その為軍事学校にも被害届ではなく、あくまで軍事作戦による成果として報告を挙げなければならないのだ。


報告を終えてタラーク上層部より勲章を受けた事により、軍事学校より拍手絶賛を送られることとなった。


(一応故郷であるタラークを地球の脅威から守っていることにはなるんだから、嘘ではないよね)

(お頭達との連携によって得た成果ではあるが、女性との連携を訴えたところで異端視されるだけだ。
いずれ必ず変えなければならない認識ではあるが、今訴えても拘束されて洗脳教育される羽目になる。

今はあらゆる苦言を飲んで、英雄扱いされようじゃないか)

(やれやれ、僕達いつの間にか汚い大人になっちゃったね)


 褒め立たれる上官達を尻目に、バートとドゥエロはお互いに小声で耳打ちしつつ内心苦笑いを浮かべている。

バート達からすれば、もう女性蔑視など鼻で笑う価値観だ。何としても変えてやりたい。

だがタラークという軍事国家を相手に、個人の主張など無意味に等しい。異端視されて、捕まるのがオチだろう。


その点はよく理解しているので、バートやドゥエロは表面上敬礼をしている。


「我々教官陣も首相より恐れ多くも、お褒めの言葉を頂いた。
ガルサスにマクファイル、優秀な成績で士官学校を卒業した君達であれば必ず難事を成し遂げられると、我々は確信していたよ。

君達は我々の誇りであり、祖国の宝だ」

「光栄です、教官殿!」


(……ドゥエロ君と違って僕、そんなに成績良くなかった気がするんだけど)

(私も軍事適正試験は赤点だった。まあ今にして思えば、軍人になど向いていないのが分かりきっているので、テスト自体は正しい結果だったと思える)

(それが優秀な成績だということは――)

(タラーク上層部より通達があった際に、成績が全て多大に変更されたのだろうな。
軍事作戦によって結果を出したのは事実だ、赤点だった成績にお墨付きを入れるくらいは、彼らからすればバチは当たらないんだろう)

(それなりにキツイ旅ではあったからね……成績くらい上げてもらわないと、割には合わないか)


 成績についてはドゥエロやバートの言う通り、別に過大評価を言えるほどでは決してない。

何しろバートは操舵手として、ドゥエロは船医として、度重ねる刈り取り部隊と軍事活動をし続けてきたのだ。

この一年の旅路でバートやドゥエロの貢献度は図りしれず、操舵手や船医として残した実績は多大なものである。


ありえない話ではあるが、バートやドゥエロがタラークの操舵手や船医としてであれば立派にやっていけるだろう。


「祝いの席でも上げたいところではあるが、首相殿より休暇を望んでいるとの要望を受けている」

「はっ、出来ましたら実家に錦を飾りたくはございます」

「うむ、君達は既に士官学校を卒業している身だ。軍事学校から君達に強要はできない。
それに君達が挙げた多大な実績を考慮すれば、長期休暇であろうと何ら問題はない。

本来であればそのまま軍隊への出世街道を歩んでもらいたいが、今は作戦終了したばかりだ。ゆっくり休み給え」

「ありがとうございます。ご配慮に心から感謝申し上げます」


 面倒な手続きをさせられてしまったが、望み通りに休暇を与えられて二人はようやくホッとした。

ブザムと共に帰国していて以降は、常に誰かの目があったのだ。休暇を与えられれば、ようやく自由に行動できる。

タラーク上層部からはそれでも監視の目はつくだろうが、バート達も表立って反政府活動をするつもりはない。


あくまでもまずは、自分達の味方を増やしていくのだ。


(まずは僕の実家へいって、おじいちゃまの協力を得よう。おじいちゃまはガルサス食品のトップで、権力者達との繋がりも多い。
第一世代の人だから、多分地球についてもある程度の認識はあると思う)

(ふむ、上層部と直接の関係がない分、我々の話もある程度理解していただける可能性はあるな。
説得については、私も補足はするつもりだが――)

(シャーリーの事もあるし、カイの事も何とかしてやりたい。おじいちゃまの説得はあくまで僕に任せてほしい)

(承知した、君からうまくやれるだろう)

(ありがとう、ドゥエロ君。へへ……まさか君のような立派な人に頼られる日が来るとは思わなかったよ)

(謙遜などする必要はない。私は君を心から尊敬している)


 ドゥエロに認められて、バートは改めて闘志を燃やした。

思えば旅の間自分の決断で動いたことはあっても、自分の決断によって未来の趨勢に影響が出るような大業を行ったことはなかった。

失敗すれば何もかも台無しだと思うと肝が冷えるが、同時にやり甲斐はあると感じている。


男ならここ一番という時、自分の決断で動かなければいけない。


(それと私にできることを考えてみた)

(へえ、僕で良ければ協力するよ)

(助かる。君の家族を説得出来た後は――彼の実家に行ってみないか)

(……それはもしかして、カイの?)

(ああ、彼が育った酒場の主人。確か軍部の上官にも親しい関係にあるという人物。
彼の養父を彼の友人である私が話して、何とか味方につけよう)


 ようやく自由を得られて、バートやドゥエロは積極的に動き出した。

大人と向き合うのは、子供としての卒業試験と言えるかもしれない。















<to be continued>







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