ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action8 −低冊−
タラーク・メジェール両軍にとって何より押さえたいのは戦力、すなわちドレッドとパイロット達。
そしてタラーク・メジェール両首脳にとって何よりも押さえたいのは首脳、すなわちマグノ・ビバン。
融合戦艦ニル・ヴァーナに乗り込んできた軍隊は、メインブリッジの制圧へと向かった。
「――来たわね。ベル、セル」
「刈り取りに関するデータは全てロックしたわ」
「艦内セキュリティも操作済みだよ」
ロングレンジレーダー担当であるアマローネ=スランジーバは、マグノ海賊団が保有する戦力データの全てを極秘フォルダに移送。
バリア・船体状況監視担当であるベルヴェデール=ココは、地球に関する敵戦力データをロックして開示不可に設定。
ドレッド隊との通信・操舵補助担当であるセルティック=ミドリは、艦内のセキュリティや機密に関する情報を操作不能とした。
彼女達の技術はこの一年間の旅で得た技術も使用しており、タラーク・メジェールの軍であれ解析するのは不可能だ。
(ミスティさんを先に逃しておいてよかった)
オペレータ担当であるエズラは、カルーアとの一時的な別れを決断した。
カイ達の言う通り、赤子であろうともカルーアが丁重に扱われる保証なんてどこにもありはしない。
カルーアは女同士で誕生した赤子ではあるが、証明する術はどこにもないのだ。
タラーク・メジェールの双方から疎まれる危険さえもあった。
(カルーアをお願いね、カイちゃん)
だからこそミスティ達に、カルーアを預けた。
カルーアはマグノ海賊団の子供とまで言われるほどに、皆から普段可愛がられていた。
誕生を見届けたカイやミスティもよくお世話をしており、ピョロやユメにいたっては家族のように思いやっている。
だからだろうか――カルーアも母と別れて悲しそうな顔をしたが、少なくとも泣くことはなかった。
「やれやれ……派手な出迎えだね」
そして艦長席、マグノ・ビバンが鎮座する席には大勢の兵士が取り囲んでいる。
周囲発泡乾拭きを突きつけられても、流石というべきか顔色一つ変えてもいない。
先行きが見えず、その先に地球からの驚異が待っているが、彼女は未来を悲観していない。
むしろ、背負っていた荷物をおろしたかのような安堵さえもあった。
「では、ご招待に預かるとするかね」
仲間たちのことを重荷に思っていたのではない。ただ、今まで感じたことのない奇妙な感覚が胸にあった。
守るべき子どもたちが育ったことへの喜びと、巣立っていくことへの寂しさ――2つの感情がせめぎ合っている。
今まで多くの出会いと別れを経験した人生、初めてではないはずなのにこの感情にはむしろ驚かされている。
考えた末に、彼女は笑みを刻んだ。
(なるほど――老い先短きアタシにもまだ、先の見えない未来があるってことかね)
既に老齢に達している自分、この先長く生きられるとは思っていない。
未来などないと鬱屈してはいないが、後は若者の時代だと割り切っていた面はたしかにあった。
けれど今では――彼らが生きる未来を見てみたいと思う。
ゆえにこそ若者達にすべてを託し、お頭マグノ・ビバンはタラーク・メジェールに降伏した。
本当におかしな話だとは思うのだが、これがある種の区切りではあるのだろう。
手を上げて降伏したこの日、彼女は海賊団お頭としての引退を感じた。
<to be continued>
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