とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第百六十八話



「セッティングできたよ」

「何が?」

「合同コンパ」

「本気だったのか!?」


 クリステラソングスクールのコンサート目前に迫って、アイリーンから話を持ちかけられた。

アイリーン・ノアはマンションに住むフィアッセの同居人。護衛として挨拶した際に、あいつとの関係を話してから会話する程度の仲となった。

男女である以上恋愛関係を疑われるのは当然で、俺はフィアッセとの関係を否定した。異性との関係には興味がないことも伝えて。


そしたら何をトチ狂ったのか、合同コンパを企画するとのたまってきた。まさか本気だったとは。


「合コンは参加したことないけど、独身の男女グループが合同でやるんだろう」

「そうそう。あ、男は勿論リョウスケ一人だよ」

「比率を何故合わせないんだ!?」

「呼んだ子。世間的に有名な女の子ばかりだし、迂闊な人は呼べないでしょう」

「迂闊な人の中に、俺が思いっきり入ってるんですけど」


 恋愛なんぞに興味がないという俺に対して、アイリーン・ノアがニヤニヤ耳打ちしてくる。

彼女はフィアッセと同じくクリステラソングスクール生で、世間では「若き天才」の通り名を持つ評価高い歌姫。

アイルランド系アメリカ人の歌手で、見目麗しい女性。そんな女性に魅力的なお誘いを受けている。


フィアッセの保護者代理のような存在で、面倒見がいいのは分かるが。


「どの子も選りすぐりだよ。私が保証する美人さん揃い」

「丁重にお断りさせてほしい」

「ハーレムを余裕で否定するから、この企画が誕生したんだけど」

「うっ……」


 異性には興味がないと言ってしまったせいで、アイリーンは余計なお節介を焼きまくってくる。

俺だって十代の男だ、女に何の興味もないといえば嘘になる。剣に生きているとはいえ、男であることをやめた訳ではない。

ただ生きることに精一杯になってしまうと、人生に余裕が持てなくなるだけだ。


海鳴でアリサと出会って、生活の基盤を持てたからようやく他に目を向けられるようになってきた。


「あんた、フィアッセの姉貴分だろう。俺に女を紹介してもいいのか」

「女に興味がないとか、もうそれ以前の話でしょ」

「興味がないという訳では……」


 美人な歌姫にジト目で見つめられると、迫力が増す気がする。俺は思わず震え声で返してしまいそうになった。

そもそも子供がいるという時点で普通にひかれると思うんだが、その点は大丈夫なのだろうか。

血の繋がらない養子だけならともかく、ヴィヴィオやディード達は遺伝子的に血の繋がりがある子達だからな。


アリサのおかげで経済面では子供達を育てられる余裕はあるが、十代の少女達にはキツイハードルだと思う。


「込み入った事情があるのは分かるとして、それはそれとして十代の青春を楽しむべきだと思うよ」

「その込み入った事情が目前に迫っているんだぞ」

「だからこそ、今日本に来ているの。本当は観光とかもさせてあげたいんだけど、コンサートが大変でしょう。
一つでも良い思い出を作って欲しいから、こういう親睦会をしようと思うの」

「なるほど、そういった事なら分かる」


 合同コンパと聞くとハレンチな想像をしてしまいがちになるが、元々は親睦が目的である。

幹事が友人や職場の同僚などを集めて、初対面の男女が立ち会う。そして食事や会話、ゲーム等を通じて親睦を深めるということだ。

主に恋活や婚活の場として利用される側面もあるが、アイリーンが幹事する合同コンパはあくまで親睦が目的なのだろう。


ついでに女の子との楽しい時間を過ごせば、健全な精神は健全な肉体に宿るという訳だ。


「あんたの話からすると、呼ばれているのは外国人の子達か」

「フィアッセから英会話は出来ると聞いたけど本当?」

「日常会話レベルだけど、まあ英語なら何とか」


 俺は頭が悪くて学校の成績とか全然だめだったが、海鳴に来てフィリスからシェリーとの文通を進められた時に英語を教えてもらった。

以前は英語というだけで拒否感があったが、魔法少女だの夜の一族だのといった超常的存在を知ってからは、人間の言語とかどうでもよくなった。

外国とかミッドチルダとか、宇宙とかに進出までした時点で言葉どころか世界の壁を突破しているので、とにかく現地で言葉を覚えていったのだ。


幸いにも英語ならどこでも通じたので、いつの間にか話せるくらいにはなかった。


「オッケー、なら大丈夫。日本人もいるから気軽に参加してね」

「日本人の留学生か、熱心だな」

「ふふん、クリステラソングスクールは国境を超えるんだよ。
ちなみにあたしも幹事として参加するけど、コンパの一人でもあるから口説いてもオッケーだよ」

「徒労に終わるのでやめておく」


 これほどフランクなら彼氏とかいそうな気がするし、フィアッセの同居人なんて願い下げである。

フィアッセ本人から何を言われるか分かったものではないし、世界中のアイリーンファンに殺されるだろう。

彼女のことをアリサから聞いたのだが、音楽全盛期でない今の時期でも彼女の新曲は飛ぶように売れているらしい。


抜群の美人で歌も上手いのであれば、世界は放っておかないだろう。


「場所はホテルだから、人目を気にせず楽しんでね」

「その点は抜かりないな、分かった」


 アイリーンが呼んだ連中は簡単に心当たりがつく。来日したコンサート参加者だろう。

クリステラソングスクールの出演者であれば、今の内に顔合わせしておいたほうがいい。

合同コンパなんぞという妙な初対面にはなるが、親睦を深めておいて損することはない。


フィアッセの知り合いだからな、面通しはしておこう。












「はい。では右から順番に自己紹介をどうぞ」

「ヴァイオラ・ルーズベルトです。今日はよろしくお願いいいたします」


 しまった、忘れてた……!?

クリステラソングスクール生である英国人女性から、実に冷たい眼差しで自己紹介を受ける。


合同コンパの場で、俺は頭を抱えてしまった。














<続く>








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