とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章  村のロメオとジュリエット 第百三十話
                              
                                
	 
「ゆかりの名所?」 
 
「うむ、案内しろ下僕」 
 
 
 夜の一族の姫君達。欧州で名を馳せる猛者達が一同に集い、案内と接待役を命じられてしまった。 
 
こんな恐ろしい奴らを相手にするなんて神経を削るので嫌だったのだが、日頃お世話になりまくっているのと、スポンサーからの要望もあって渋々応じた。 
 
チャイニーズマフィアの殲滅と、チャリティーコンサートの成功に向けて、政府筋やクリステラ家とも連携を取っているらしい。 
 
 
俺が断ったら支援や援助を拒否しかねない勢いだったので、応じるしかなかった。くそったれ。 
 
 
「なんのゆかりだよ」 
 
「むろん貴様だ」 
 
「は?」 
 
 
 警護チームや妹さんを連れて渋々全員に迎えに行ったら、早速観光を命じられて耳を疑った。 
 
一応美男美女揃いの一族ではあるが、断じて可愛げがある連中ではない。初めて(?)の日本に浮足立つような女共ではない。 
 
俺と出会うまで日本人を馬鹿にしていたような奴らが、日本に思い入れなんぞある筈がない。そもそも海鳴は国際化こそしつつあるが、田舎町である。 
 
 
高級ホテルにでも直行するのかと思いきや、何をトチ狂ったのか案内しろという。 
 
 
「皆様と話し合い、全員の意見が一致いたしました。 
貴方様とゆかりが深い場所を巡りたいので、ご案内お願い致します」 
 
 
 夜の一族の当主であるカミーユだけではなく、ロシアンマフィアの女ボスから微笑みを向けられて仰け反りそうになった。 
 
海鳴は今となっては俺の帰る場所のような感じにこそなっているが、その大半は不在だった場所である。 
 
海外とか異世界とか異星とか出歩いていたせいで、観光名所と言われるようなところへは特に言っていない。 
 
 
思い入れのある場所と言われても、頭には浮かばなかった。 
 
 
「ウサギの事はガッツリ調べたんだけどねー、やっぱり生で見るのとは違うしさ。 
どこで何をしていたのか、ウサギの口から聞きたいの。ウシシ」 
 
「一体どこまで俺のことを調べたんだ、お前ら」 
 
「山で木を拾って振り回すのは危ないと思いますわよ、王子様」 
 
「そんなところまで、なんで調べられる!?」 
 
 
 海鳴へ流れ着いた時、剣に見立てて山で木の枝を拾っていたのだが、普通に知られているらしい。どうやってだよ。 
 
あの時は人との縁なんぞこれっぽっちもない単独行動だったはずなのだが、大金持ちのお嬢様達の共通認識だった。怖すぎる。 
 
どうも彼女達の話では、俺が海鳴に来てからのルーツを辿りたいようだった。暇なのかと思ったが、こいつらは自分で時間を作れる人間だった。 
 
 
あまりにも嫌だったので夜の一族の良心を見るが、苦笑いを返されてしまう。 
 
 
「あはは、ごめんね。ボクもちょっと、いや結構興味があって」 
 
「自分の一年をなんで掘り下げなければならんのか……」 
 
 
 一同を見渡すが、全員美貌を期待に染めて見つめてくる。くそっ、案内するしかないか。 
 
まあ観光名所なんぞ巡って嫌がられても困るし、そういう意味では接待役として要望があったほうが分かりやすいかも知れない。 
 
見るべき所なんて特にはないのだが、俺の過去を巡って満足するのであれば、過去の失敗も少しは報われるだろう。 
 
 
渋々了承すると、黄色い歓声が上がった。こういうところが女の子っぽいんだけどな…… 
  
 
こうして自分の過去を巡る旅が始まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<続く> 
 
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