とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 百十四話
「面識ある奴らもいるだろうけど、改めて紹介するよ。これがうちの家族」
「か、可愛い子たちだね……
ママと呼んでいいよとか言おうとしていたけど、ちょっと圧倒されちゃった」
「何言おうとしてたんだ、お前」
ヴィヴィオ達と無事合流できたので、あまりのんびりとはせずにフィアッセのマンションへ帰った。護衛対象をいつまでも放置できないからな。
折角なので家族勢揃いで挨拶させようと、オットーに頼んで剣の修行中だったディードを一旦家に帰らせた。これで勢揃いである。
うちの子達は皆自立心の高い良い子達で生活力にも長けているので、普段働いていたりするので、全員が勢揃いするのは久しぶりだった。
うちの家族を目の当たりにして、フィアッセが変に圧倒されてしまっていた。
「これだけの子供達を家族に迎え入れるのってすごく決断が必要だったと思う。
立派だといいたいけれどごめん、ちょっと声も出ないや」
「まあこれだけ揃っていれば確かに言葉にするのも難しいと思う」
俺もいつの間にか受け入れていたけれど、実際自分の家族を顧みると現実味が沸かなかったりしている。
シュテル達も頼み込まれて闇の書から誕生させただけなのに、本人たちが進んで家族になった。聖地でも助けられて、いつの間にか家族でいるのが当たり前になった。
ディードやオットー、ヴィヴィオなんて、俺の遺伝子を勝手に流用してクローン化させた。人権とか無視した行為なのだが、俺を父と呼んで慕っている。
まだ十代のガキには重すぎる存在だ。アリサというサポート役と、何よりヴィヴィオ達本人がよく出来た子達でなければ、正直面倒見きれなかったかもしれない。
「事情は前に少し聞いていたけれど、養子縁組した子達なんだよね」
「うむ、経緯は複雑かつ特殊なんだが認識は間違えていない」
「ナハトちゃんは明らかにリョウスケに激似なんだけど……」
「子は親に似るというからな」
「容姿から似ていくのってすごくない!?」
俺も詳しい経緯は分かっていないのだが、ナハトヴァールは闇の書から生まれた子供である。
ユーリ達とは違って生まれ変わったというべきか、闇の書のシステムが法術により改竄されてしまって、リセットされて赤子同然になってしまったようだ。
それはまあいいのだが、リセットした張本人である俺の影響を引き継いでしまったのか、容姿が明らかに俺の特徴を受け継いでいる。
話題に出たことを本能的に察したのか、ナハトヴァールはニンマリ笑ってフィアッセを見上げていた。呑気なやつである。
「ヴィヴィオちゃんも初めましてだね。お姫様みたいに可愛いね!」
「えへへ、ありがとうございます。ヴィヴィオもパパによく似ていると言われます!」
「そ、そうかな……そうだね……」
黒髪男子の日本人である俺が、どこをどう切り取ったら金髪碧眼美少女と似るんだよ。子供の前では言わないが、一ミリも似ていないぞ。
しかもあろうことかユーリ達とは違って、俺の遺伝子を受け継いでいる実子だったりする。信じられないことに血の繋がりがあるのだ。
俺の遺伝子からなぜこのような女の子が生まれるのか全く持って分からんが、心当たりがあるとすれば俺が海外で接種した夜の一族の姫君達の血だろう。
一滴とかいうレベルで接種しただけなのに、俺の遺伝子から創り出したクローンでどうしてここまで特徴が出るのか。よほど夜の一族の血は濃いらしい。
「フィアッセさん、私は父の剣を受け継いだ正統な子です。父と同じく、必ず貴方を守りますのでご安心ください。
かの悪漢達は私が成敗してみせます」
「あ、ありがとう、でも無理しないでね……怪我したと聞いてるよ」
「私は女ですが、父と同じく剣士。名誉の負傷です」
……どうやらテロ事件での敗戦から立ち直ったようだ。修行も兼ねて高町家の道場に預けたのは正解だったな。
まだ痛々しい包帯が巻かれているのでフィアッセも心配しているが、ディード本人はむしろ誇らしげに微笑んでいる。
オットーも姉妹同然のディードが立ち直っている様子を見て、安心したように息を吐いていた。
ちなみにこの二人も俺の遺伝子から創り出したクローンで、本人達は俺の遺伝子を心から誇っている。何故だ。
「そして何よりも、この妖精ちゃんがスゴイ! なにこれ可愛いすぎるよ!?」
ディード達は養子縁組で説明できなくはなかったが、ユニゾンデバイスのミヤは説明しようがなかった。
ミヤの存在は友人知人の間では結構分かれていて、異世界事情を知っているかどうかで認知度が変わってくる。
例えば忍たちであれば説明するのはさほど難しくないが、現代日本で生きている者たちからすれば完全にファンタジーだった。
説明するとひたすらややこしくなるので、事情は伏せるしかなかった。
「ロボットとかじゃないんだよね!? スリスリスリ……」
「ふわああああああああ、何です、何なんですかー!」
フィアッセにウットリ頬ずりされて、ミヤはパニックを起こしている。
ミヤ本人は童話から抜け出したような可憐な容姿なので、妖精と見間違えられるのは無理もない。これが功を奏した。
醜悪な妖怪とかであれば事情を伏せれば気味悪がられていただろうが、可憐な妖精姿であれば女の子から受け入れられやすい。
まあこいつも半年前までは海鳴で結構自由に活動していたので、今更感はある。
「この子と一緒に舞台に立ちたい、連れて行っていいかな」
「ファンの連中がコンサートのテンションで見過ごしてくれるとは思えないからやめとけ」
「うーん、残念。CGとかで誤魔化せないかな……」
立体映像顔負けの存在感を放っているので、その誤魔化し方は無理があるだろう。
ただフィアッセの冗談混じりの提案は一考の価値がある。コンサートの舞台に俺の関係者を立たせれば、いざという時の役に立つ。
勿論コンサートの舞台に乱入された時点で敗北に近い。華やかな舞台にテロリスト達が乱入すれば大騒ぎになり、今後のコンサート活動なんぞできなくなるだろう。
ただ最悪フィアッセ達を守るためにも、いざという時の保険として考えておきたいところだった。
(父上、お耳を拝借)
(何だよ、小声で)
(早速ですが、父上が一番愛するこの愛娘がお役に立ってみせましょう。
これまでの事情をお聞きした上で、次の敵の動きがある程度予想できます)
(……お前、何気にヴィヴィオ達に対抗心を燃やしていたのか)
フィアッセは俺の家族と大いに盛り上がっていた矢先、シュテルに袖を引っ張られた。
敵の動きは俺も色々想定していたが、コンサート会場を襲うという最終目標しか見出だせなかった。
しかしシュテルが想定していたのは次の動き――
これまで防衛に徹するしか出来なかった俺達が、攻勢に出る機会となるのか。
<続く>
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