「「七瀬!?」」

「全く……あんまり遅いから心配して来てみたら……
 一体何やってんのよ……」

「ああ、ちょいと野暮用でな……」

「野暮用って……あぁ……成る程ね」

七瀬は、月宮の姿を認めると、何か納得した様に南の方に向き直る。

「で、あっちが『わるもの』って訳ね……あら? 南じゃない」

「な、なな…七瀬さん……おお、俺はべ、別に……」

南は、さっきまでの自信に満ち溢れた表情から一変、
顔面蒼白で、見ていて可哀想になるくらい震えている。

「ふ〜ん……じゃ、コレは誰がやったの?」

七瀬は、オレを指し、南に問い掛ける。
この場合、南の所為であるのは明らかだし、
大体、七瀬はさっき南がオレに向かって炎を放ったのを見ているはずなので、
判っていて質問しているのだろう。

ちなみに七瀬はさっきからずっとにこやかに笑っている。
…でも…七瀬のこの表情は…

「い、いい……いや、それは……」
「南がやったんじゃないの?」
「折原がっ!! そ、そうだ折原が俺の邪魔をするからっ!!」
「じゃ、アンタがやったのね?」
「それは……でも!!」
「アンタがやったのね?」
「は…はい!!」

七瀬は笑顔を崩さない…しかし…その身から放たれるプレシャーで、南は既に『蛇に睨まれた蛙』状態だ…

…やばい…なんか知らんが七瀬の奴、キレてやがる。

「そう……」
「あ、あの七瀬さん俺は月宮さんを連れて帰らないといけないのでこれでっ!!」

南は耐えきれなくなったのか、一気にそれだけ言うと、
何が起きたのか判らず呆然と立っていた月宮に近づき、手を引いて走り去ろうとした。

「う、うぐっ……やめてっ!!」

が……

「ねぇ…嫌がってるみたいだけど?」
「いい……いや、そんな事無いですよ?」
「じゃ、手を離してあげたら?」
「えっ……」
「嫌がってないんでしょ? それなら手を離してあげなさいよ」
「………」
「放してあげたら?」
「は……い」

観念したのか南は月宮の手を離す……
南に解放された月宮は、すぐにオレの方に走りよってきた。

「ね、ねぇ……浩平君、あの人……」
「ああ、七瀬っていってな、オレのクラスメイトだよ」
「でも…七瀬さん、なんか……」
「ああ、ありゃ本気でキレてんな」

何時も怒鳴り散らしてばかりで、普段から怒ってばかりいる印象の強い七瀬だが、
あいつが本気で怒る事は滅多に無い。
そして
…本気で怒った時、七瀬は、笑う。
見るもの全てに恐慌すら与えるその笑顔…
それは…







  鬼神の微笑







「じゃ、じゃあ七瀬さん、俺はそろそろ……」
「アタシはね…」
「えっ…」

七瀬は……南の行く手を遮る様に扉の前に立っていた。

「ねえ、浩平君…今…七瀬さん、そこにいたよね…?」
「あ? …あぁ…何時の間に動いたんだ、あいつ……」

「アタシは……ここでどんなやり取りがあったかは知らないわ…
もしかしたら、南の方が正しいのかも知れない…」
「そ、そうなんだよ! 折原の奴が邪魔しやがるから俺は仕方なく――」
「でも」
「ひっ……」
「…それでも、自分の友人をあんな目にあわせるような奴を
 ……仕方ないなんて言葉で赦してやれるほど出来のいい人間じゃないのよ…アタシはね」
「ぁ…」


七瀬は、ツカツカと南に歩み寄る…

「ひ! ひぃっ!!  ふ…【火球】っ!!」

南の手から、幾多の火球が放たれる…
その全てが七瀬に向かって直進していくが、七瀬は歩みを止めない。

ドドドドドドドッ!!

派手な音を響かせ、火球が七瀬を直撃する。
しかし…

「う、嘘…」
「そんな豆鉄砲じゃ、幾ら撃っても効かないわよ?」

七瀬は全くの無傷で、顔に笑顔を張付かせたまま、只、ゆっくりと歩を進める。

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!! 
  【火矢】!! 【炎槍】!!  【火壁】!!! 【爆炎】ッ!!!!」

南の掌から無数の炎が放たれ、様々な形を取りながら一斉に七瀬に襲いかかる。

「はあっ…はあっ…っ! こ、これで…終わりだっ 【火蜥蜴】ッ!!!!!」

直後に放たれる極大の炎…

ドガガガガガガババババババババッッ 
グオオオオォォォォォォォォッッ!!!
カッ・・・・・・
ッドオオオオオオオォォォォォォン・・・

その全てが七瀬に向かい、大爆発を起こす
爆発の衝撃は地下に造られたその部屋を揺さぶり
俺達は衝撃波で部屋の隅まで吹き飛ばされる



パラパラパラ…

天井から砕けた石が降ってくるが、部屋自体は破壊されていない
どうやらかなり頑丈な造りらしかった。
(後から聞いた話だが、この洞窟の壁には結界とやらが張ってあり、
 魔法などの影響を受けにくいように造ってあるそうだ)

「うぐぅぅぅぅぅっ…」
「くっ…無茶苦茶しやがる……
 ………七瀬っ!?」

南の周囲には、未だ炎の渦が立ち上っている
あれだけの炎…人間が食らって平気なはずは……無い

「七瀬……七瀬っ!」
「うぐっ…七瀬さんっ!!!」

「はあっ…はあっ…ふ…フヒャハハハ……こんだけやりゃぁ
 …はあっ…はあっ…幾らあの七瀬でも…」

「く…くそ…南」

「へっ…あとは…はっ…はあっ…死損ないを始末して…月宮を連れて帰るだけだな…」

「…てめぇ!」
「うぐぅ…浩平君…駄目だよ…まだ動ける状態じゃないんだよ!?」

「ヒャハハハハ……お前如きに何が出来る!? 俺はあの化け物・七瀬を倒した男だぜ!?」

「……誰が化け物よ?」

「へぁっ!?」
「えっ?」
「な…なせ?」



ダンッ!



一瞬…それは本当に一瞬の出来事だった…


炎の中で影が揺らめいた…







直後







南は…十数メートル先の壁に叩き付けられていた…






「……アタシを怒らせた事……地獄で後悔しなさい…」


続く







  【折原 浩平】  へっぽこ戦士 Lv.5

HP   2/100   力 知 魔 体 速 運
MP  0/0     10  5  2 10 12 4
   
攻撃  15(20)       防御  12(16)
魔攻  6(6)       魔防  7(17)
命中  87%       回避  10%

装備  みずかのつるはし
      安全メット
     作業服

所持金  193円






  【七瀬 留美】   拳皇  Lv.68

HP  715/928    力  知  魔 体 速 運
MP  184/184   85  38  39 82 51 34

攻撃  116(194)       防御  98(123)
魔攻  70(63)        魔防  67(86)
命中  147%        回避  53%

装備  乙女のリボン
     乙女セーラー服




魔術メモ


【火矢】(ふぁいあー・あろー)

  火属性魔術Lv1   対象 敵単
  基本攻撃力 18  基本命中率 120  消費MP 4
  状態変化 火傷
  対象に数本の炎の矢を飛ばす。
  威力は低いが、対象を自動追尾するため命中率は極めて高い。


【炎壁】(ぶれいず・うぉーる)

  火属性魔術Lv2   対象 術者前方
  基本攻撃力 −  基本命中率 −  消費MP 10
  術者前方に炎の壁を作り出し敵の攻撃を防ぐ。
  本来は防御用の術なのだが、発動点を敵に重ねれば攻撃用として『使えない事もない』


【爆炎】(ぶれいず・ばーすと)

  火属性魔術Lv2   対象 敵全
  基本攻撃力 22  基本命中率 70  消費MP 18
  対象を中心に大規模な爆発を起こす。
  しかし見た目の派手さや、消費MPの割になぜか威力は小さい。





補足……っつーか蛇足

七瀬さん、レベルの割にパラメータ低いのは、
『力・体・速』に−40%の補正がかかっているからです。
理由は……ONEやった人なら判りますよね?


 







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2003/07/23  黒川