「怪我はそんなに深くないけど、随分衰弱してるみたいね。きっとずっと一人ぼっちだったんじゃないかな?」 そう言ってくれたのは怪我をしたフェレットを連れ込んだ動物病院の院長先生であった。 心配の種は尽きないが、最悪の事態ではないという言葉からなのはたちはほっと息をついた。 診察の間中はらはらと気を失ったフェレットを見ていた為に、安堵の気持ちもひとしおである。 「院長先生、ありがとうございます」 頭をさげてお礼を言ったなのはに続き、あかねやアリサ、すずかもお礼の言葉をおくった。 「いいえ、どういたしまして。それにあかね君が怪我した子を連れてくるのはいつものことだしね」 「いつもご迷惑をおかけしてます」 「子供がそんな事言わないの。それに動物たちを助けるのが私のお仕事なんだから」 あかねらしい言葉なのだが、子供らしくない言葉に頭を撫でられる。 そのやり取りを聞いていたのか、フェレットを見守っていたアリサが振り返り聞いてきた。 「アンタそんなにたびたび怪我した動物拾ってきてるわけ?」 「まあ、そう言うのに遭遇しやすい体質と言いますか……」 「うちにいる猫の何匹かは、あかねさんが拾ったのを引き受けた猫なんだよ」 「へぇ、それは知らな……かった。まさか、すずかがうちに引き取ってくれって持ってきた何匹かの犬は」 アリサが言い終わるか終わらないかのタイミングで、すずかがいけないと自分の口をかばっていた。 それでは肯定したも同然であり、ごまかしてフェレットの様子を覗き込もうとしたあかねの肩をアリサが掴んだ。 ぴたりと止まったあかねの肩の上で、アリサの手が万力の如く力を発揮していく。 手の大きさが大きさだけに、肉と皮だけが捕まれつねられているような痛みが発生していた。 「おかしいと思ってたのよ。すずかなら拾ったその場で私に連絡くれるはずだもん。アンタ人の知らないとこで利用してたわね」 「利用だなんて人聞きの悪いことを言わないでください、バニングスさん」 「ちょっと、ちゃんと人の目を見て喋りなさいよ」 誤解ですよと言い訳してみたものの、後ろめたさは瞳の中にしっかりと出ていたようだ。 次の瞬間には肩に置いた手とは逆のアリサの手が、あかねの頭を容赦なく叩いていた。 「今度からは拾ったらちゃんと自分で持ってきなさいよ、まったく」 「あっ、起きた」 ぱんぱんとアリサが手を払っていると、今までずっと一人フェレットを見守っていたなのはが声をあげた。 アリサはもちろんのこと、頭を抑えて痛がっていたあかねも、そのあかねに喋ってごめんねと謝っていたすずかもフェレットに駆け寄った。 寝台の上でうつぶせに寝ていたフェレットは、なのはの言う通りゆっくりとだが顔を上げようとしていた。 フェレットの胸元では紅と黄の石がカチリと音を立てる。 起き上がったフェレットはゆっくりと辺りを見渡し始めた。 フェレットの可愛らしい仕草になのはたちは、はあっと感激したような声を漏らしていた。 その間に一通り辺りを見渡したフェレットは、何かを迷うようになのはとあかねを交互に見始め小首をかしげ始める。 「なにか迷ってるみたいですね」 「えっとえっと」 自分でも見られているとわかったなのはは、とりあえず安心させてやろうと手を伸ばした。 おどろかせてはいけないとゆっくり伸ばされた指先を、フェレットが一舐めする。 心を許してくれた証なのか、フェレットが起きたときよりもさらに感動したなのはであったが、そう長続きはしなかった。 フェレットが再び倒れてしまったからだ。 「あっ」 「しばらく安静にした方が良さそうだから、とりあえず明日まで預かっておこうか?」 拾ったは良いが、飼える保証もないなのはたちは、その言葉にお願いしますと答えた。 「よかったら、また明日様子を見に来てくれるかな?」 「わかりました」 「あ、やば。塾の時間!」 「本当だ」 時計を見たアリサが塾を思い出し、急がねば間に合わない事にすずかが慌てる。 パタパタとなのはたちがバッグを持ち上げる中、塾のないあかねはなのはたちにつげた。 「僕はもう少しこのフェレットについてます。気になることもありますし」 「本当、それじゃあお願いね。先生、また明日様子を見に来ます」 手を振るなのはたちに答え院長先生も手を振り替えしていた。 何度も振り返りながら手を振る三人を見送り、あかねは院長にかごを用意してもらいそこにフェレットを安置してロビーで様子を見ていた。 衰弱という診察結果が示すとおり、一度目を覚ましたっきり再びフェレットが目を覚ます様子は見えなかった。 動かないフェレットを見守っているのも案外手持ち無沙汰であり、少しばかりあかねの思考がフェレットからそれていく。 そしてフェレットの怪我の様子に慌てて、なのはに昨晩の夢の事を聞き忘れていた事を思い出す。 「昨日の夢のこと、そう言えば携帯も知らないから連絡とれないや。すずかさんのなら知ってるから、聞けば良いのかな?」 あの夢の最後はほとんどうろ覚えであったが、目の前のフェレットは間違いなくあの少年であった。 ただの夢だと言ってしまいたいが、間違いなくあれは本当にあったことなのだと言いきかせる自分もいる。 何故だか解らないが、そう確信している自分がいた。 それにあの助けを求める声。 今まで人や動物、さまざまなものに助けを求められたが動物の声は動物の声としか届いた事はない。 なのにこのフェレットの言葉は「たすけて」と人の言葉として認識する事ができた。 「君は一体、何なんですか?」 答えを期待していたわけではないのだが、ふたたびフェレットの体が震えた。 そしてあの声が頭の中で響く。 『君は、あの子は何処に……』 フェレットが話す人の言葉に戸惑い、どもりながらあかねは答えた。 「高町さんたちなら、塾へ行きました。貴方は夢の中に出てきたあの人ですよね? 何故そんな姿に、貴方は何者なんですか?」 直接的な声ではないとはいえ、フェレットが喋るということにあかねは少し冷静さをうしなっていた。 衰弱し目が覚めたばかりのフェレットへと矢次に質問し、答えを返す暇さえ与えないほどである。 何時までも答えが返ってこないことで、ようやくあかねはフェレットの状態を思い出した。 「すみません、ゆっくりで良いですから」 こくりとフェレットが頷いた。 『僕の名前はユーノ、ユーノ・スクライヤです。先ほどの女の子と貴方には資質がある。僕に力を、少しだけ力を貸してください』 「資質ですか?」 『僕はある探し物の為に、ここではない世界からきました。でも僕一人の力では思いを遂げられないかもしれない。だから』 「あかね君?」 突然割り込んできた声に、ユーノとなのったフェレットもあかねもビクリと体を震わせた。 つい夢中に話をして院長先生の接近に気付かなかったのだ。 「あら、その子気が付いたのね。でもまだ体力が回復していないはずだから、あまり話しかけちゃいけないわよ。それと、お外」 「外? あ、真っ暗ですね」 すでに日は落ちきっており、一番星どころか十番ぐらいは見えそうな夜空であった。 つまり院長先生はフェレットが心配なのはわかるが、遅いから帰りなさいとつげに来たのだ。 だが気になる話の途中であるし、ユーノもまだ話すことがあると無理をして体を動かしてかごから手をだそうとしていた。 「ほら、あまり話しかけると無理しちゃうから」 『ま、待って!』 院長があかねを帰そうと背中を押し始めた為、ユーノが慌てた声をあげた。 「院長先生、フェレットが何か。本当に帰りますから、最後に」 なんとか院長を説得し、ユーノが居座るかごへと近づく。 するとユーノが首にかけていた石の一つを長い首から器用に外して差し出してきた。 『これをゴールデンサンを持っていって。これがあれば、今の君でも離れたままで会話できるから』 「なんだかその石をあかね君に持っていて欲しいみたいね。石ならもう一つあるし、明日もくるからいいかしら」 院長の許可を貰い、ユーノがゴールデンサンと呼んだ石に付けられた紐を手首に巻きつけた。 『こう、ですか?』 『うん。今日は少し疲れたから、また後で話すよ。あの子にも……話さな、いと』 離れていても声が届く、確信が安堵をもたらしたせいかユーノは再びかごのなかで倒れこんでしまった。 だが自分の体力の低下を理由に説明を後回しにしたユーノは後で後悔する事になる。 無理をしてでも説明しておくべきだったと。 そうとは知らず今はゆっくりと休むユーノを置いて、今度こそあかねは院長の手によって帰宅させられていった。 帰宅が遅くなった事を怒られた後、ご飯を食べたあかねは大の字になってベッドに寝転がっていた。 持ち上げた右腕の手首には、黄色に、見ようによっては黄金色にも見える石があった。 ゴールデンサンとはなんだろうかと先ほど母に尋ねたら、黄金の太陽、金色に輝く太陽と言う意味だと教えられた。 まるで父さんのようだとあかねはまぶたを閉じて、その大きな背中を思い浮かべた。 刹那、枕元に置いていた携帯が着信音を鳴らし始めた。 「びっくりした。一体誰、知らない人?」 突然すぎる着信音に心臓をドキドキさせながら液晶を覗き込むと、相手の電話番号だけが映し出されていた。 すでにワンコール以上鳴っている事から、妙な業者ではないだろうと通話ボタンを押して耳に当てる。 「あかねですけれど」 「あかね君? なのはだよ。電話番号、すずかちゃんが知ってたから教えてもらったんだ」 「高町さんですか。それはかまいませんよ。こちらもすずかさんに高町さんの番号を聞こうと思ってた所ですから」 「本当、なら丁度良かったのかな」 電話の向こう側からクスクスと笑い声が漏れてきていた。 普段からあかねに対して抱く名前で呼んで欲しいといった不満はなく、どこか上機嫌のように感じる。 塾へ向かってから今までの間でそれほど良いことがあったのか、あかねは首をかしげながら訪ねた。 「なにか、良いことでもあったんですか?」 「そうなの。あのフェレットさんのことだけど、うちで飼ってよいことになったの」 それに対してなんと答えてよいか、あかねは迷ってしまった。 一見アレはフェレットであるが、間違いなく人間である。 もしかしてなのははアレが人間だと言う事を忘れているのか、と思った所で別の声があかねの頭の中に割り込んできた。 『聞こえますか、僕の声が。急いでください。ゴールデンサンがないと、ゴールデンサンを持って僕の所へ!』 「夕べの夢と、昼間の声と同じ声」 なのはへも声は届いていたようで、電話の向こうで呟く声が聞こえた。 夕方に話していた時とは別種の焦りをユーノから感じ取ったあかねは、電話の向こうへと言った。 「高町さん、その声はあのフェレットのユーノさんの声です。これから僕は病院へ向かいます。貴方は、どうしますか?」 「あのフェレットさんの声? どういうこと、なの?!」 「僕だって全部聴いたわけじゃありません。とにかく動物病院へ」 「う、うん」 なのはと待ち合わせる場所を決めたあかねは、母に隠れて家を飛び出した。 何故隠れてかと言うとすでに九時になろうとしている時間帯に、外出が許されるはずもないからだ。 外に出てしまえば問題ないと、動物病院へと向けて走り出した。 先ほどユーノから声が届いて以降、何の音沙汰もない。 再び気を失ったのか、それどころではないのか。 一体何が起こっているのか疑問ばかりを頭に浮かべ、街灯だけを頼りに走っていく。 「あかね君、こっち」 途中待ち合わせた場所でなのはと合流し、二人並んで駆けた。 お互いにお互いの私服姿は初めて見るが、それに対して感想を思い浮かべる暇もない。 二人して無言で走り、見えてきた病院の看板。 あと少しと足に力を入れたところで頭が割れるような耳鳴りが二人に襲い掛かった。 「痛ッ」 「くぅ」 足をもつれさせ立ち止まると、頭を抑えて音が止むのを待つ。 数秒後、音が鳴り止んだ頃には世界の色が変わり果てていた。 自分達はなんともないのだが、辺りにもやがかかり、すべての動きが止まっていた。 つい先ほどまで風にざわめいていた木の枝がこすれる音も、遠くに聞こえた車の音さえない。 次の瞬間、病院の庭先に建っていた木が爆発して四散した。 「フェレットさん!」 土煙が舞い上がる中でなのはがユーノの姿を見つけた。 ユーノの方もこちらに気付き、押し倒されていく木の幹を蹴って跳んだ。 吹き飛ばされたと言った方が正しいかもしれなかったが、ユーノは器用に空中で体勢を整えるとそのままなのはの腕のなかに飛び込んだ。 受け止めきれずに倒れそうになったなのはをあかねが支える。 「あ、ありがとう。あかね君」 「いえ、それよりも。逃げた方が良さそうですね」 木が爆発した塀の向こう側には、土煙の中でうごめく影がうめき声を上げていた。 地の底から響いてくるような聞いたこともない声に、二人の足は自然と後ずさっていた。 そんな二人へとなのはの腕の中にいたユーノが、その口でお礼を言ってきた。 「きてくれたんですね、ありがとう」 「しゃべった?!」 余りに意外な行為になのははユーノを落としかけ、あかねもさすがに口で喋るとは思わず言葉がなかった。 聞かなければ、お互いに話さなければならないことは沢山あったが、状況がそれを許さなかった。 なのはが思わずあげた大きな声に、塀の向こう側にいた影が気付いてしまったのだ。 影が高く跳びあがり、その重量にまかせてまっすぐあかねたちがいる場所へと落ちてくる。 「こっち、走って!」 父の後姿に背を押されたあかねはなのはの手を掴んで走り出した。 直後自分達が居た場所のアスファルトが無残にも砕ける音が背中越しに届くのがわかった。 背筋を駆け上る悪寒に襲われながらも、あかねとなのはは前だけを見て走った。 「なにがなんだかわからないけれど、あかね君がいてくれてよかった。なにがどうなってるの?」 「僕に出来る事は、高町さんの手を引いて逃げる事ぐらいですよ。ユーノさん、事情を説明してください」 「君にはもう言ったけれど、君たちには資質がある。僕に少しだけ力を貸して」 「それはもう聞きました。別の世界から探し物を探しに来て、それで力を貸して欲しいと。あんなのが探しものだなんて聞いてませんよ」 探し物が向こうから押しつぶそうとしてくるなんて、あって良いはずがない。 資質とやらは気にはなるが、完全に自分達の手に余る行為である。 「ユーノ君、だっけ? なのはたちはどうすればいいの?」 「今回だけで良いんです。迷惑だと思ったら、忘れてくれても構いません。僕の持っている力を、魔法の力を」 「魔法?」 夢のような言葉に、おもわずなのはは立ち止まってしまっていた。 手をつないでいた為あかねは引っ張られる形となって同じく止まってしまう。 だが止まるべきではなかった。 限りなく薄い暗雲が立ち込めたかと思うような色を失った空から、先ほどの影が落ちてきた。 つぶされる、そう思わずにいられない刹那、あかねは右手首に巻いたゴールデンサンを握り締めていた。 黄金に輝く太陽、理想とする父の背中で輝く太陽。 父ならこんな時どうしただろうか、今現在自分はどうするべきだろうか。 守らなければ、今自分が手をとっている女の子を守らなければと、右手が落ちてくる影を受け止めるように自然と空へと伸ばされていた。 「ゴールデンサン!」 「P o c n」 誰とも知れない声が響き、太陽の様な光があかねとなのはを包み込んでいた。 落ちてきた影を受け止め、接触面から不思議な火花と金切り音を奏で始める。 だが右腕が折れてしまうのではと思う程に負荷が掛かっていた。 「そんなまだ何も教えていないのに。それにパスワードも無しに。でも駄目だ、完全に起動してない状態じゃ持ちこたえられない」 ユーノの言う通り球体状にあかねたちを包み込んだ光は、徐々に影の勢いに負け天井部にひびが入り始めていた。 もうあと何秒持ちこたえられる事か、恐怖心からかなのはがユーノの体をぎゅっと抱きしめる。 このまま起動させるしかないかと、ユーノは両腕を空へと突き出しているあかねへと言った。 「聞いてください。ゴールデンサンを完全に起動させないと、とても持ちこたえられません。難しいかもしれませんが、心を澄まして僕の言葉を繰り返してください」 あかねから返答はなかったが、ユーノは続けた。 「我、使命を受けし者なり」 「くっ……我、使命を受けし者なり」 なのはが手を離した事で両手を空へと突き出しているあかねは、この状態が好転するならとユーノの言葉を繰り返した。 すると若干だが自分達を守る光が強まったように見えた。 「契約の下、その力を解き放て」 「契約の下、その力を解き放て」 心臓のようにゴールデンサンが鳴動する。 「光は空に、命は大地に。そして輝ける太陽はこの背中に」 「光は空に、命は大地に。そして輝ける太陽はこの背中に」 ユーノとあかねの声は途中から完全に重なるようになっていた。 まるで初めから知っていたかのように、ユーノの補助がなくてもあかねは自然と呟いていた。 「この手に魔法を。ゴールデンサン、セットアップ!」 「OK brother. Stand by ready. Set up」 独特な音声がゴールデンサンから発せられ、本当に太陽になったかのような光があかね自身からも発せられた。 その光が元々あった光の壁を強化させ、圧し掛かってきていた影を押し返し吹き飛ばした。 「予想以上の魔力だ、って感心してる暇はない。さあ君も、これを手に持って」 「え、え?! なにがどうなってるの、と言うかこんな時間にこんな明るいことしてちゃ近所迷惑なんじゃ」 混乱したなのはは、すこしばかりどうでも良いことに気を回しながら、ユーノから赤い石のついたネックレスを受け取った。 「僕に続いて。我、使命を受けし者なり。契約の下、その力を解き放て」 「はやい、はやいよ。我、使命を受けし者なり。契約の下、その力を解き放て」 焦りながらもなのはがパスワードを言い間違えるような事は何故かなかった。 それ以上に、あかねがそうしたよりもはやく、ユーノの言葉に追いつき追い越していく。 「風は空に、星は天に。そして不屈の心はこの胸に。この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」 「OK master. Stand by ready. Set up」 なのはもあかねの様に光に包み込まれたが、あかねとの違いはその光が桃色であった事と、その光の量であった。 「嘘、さっきの子よりもさらに上? なんでこんな子たちが、魔法のないこの世界に」 「ユーノさん、そろそろアレが動き始めます。大人しく待ってたんですから、続きを」 ユーノが持っていた石は二つあったことから、なかば予想してなのはを待っていたあかねであるが、呆けたユーノにしびれを切らして叫んだ。 「落ち着いてイメージして。君たちの魔法を制御する武器の姿と、君たちの体を守る強い衣服の姿を」 「そ、そんな事急に言われても」 「武器と衣服」 一瞬迷いを見せたなのはであったが、瞳を閉じれば自然とその姿が思い浮かんでいた。 そしてそれはあかねも同じであった。 武器はともかく、衣服は、身を守る強い衣服は瞬時にして思い浮かんでいた。 思い浮かべたが最後、二人の体を包み込んでいた光が集束し始めた。 集束した光が思い浮かべたとおりの武器と衣服を二人に与え、あれだけ大きな光は全て消えていった。 「よし、成功……なのか?」 「え、え……嘘!」 自分の纏っていた衣服が一瞬にして替わり、思い浮かべた通りの杖を手にしている事になのはは慌てていた。 学校の制服を元に考えられた強い衣服は、真っ白なロングスカートとジャケットに青い縁取りが、胸元に真っ赤なリボンが据えられていた。 さらに手に持っているのは、白い柄の両端がピンク色に染められ、先端には大きな紅い宝玉とそれを囲む金色の鉤爪のようなもののある杖である。 ユーノが成功だと呟いたのは、なのはの変身であったが、そのあとで疑問を浮かべたのはあかねの姿に対してであった。 手の甲に宝玉のあるグローブが武器で、黒い短パンと上着、そこまではよかった。 最後に黄金色のコートさえなければ。 「あかね君?」 「すごい想像した通りの姿ですよ。格好良い!」 あかね自身が想像した姿らしく、少しばかり引いてしまうなのはとユーノであった。 「あかね君の趣味って、もしかして悪い?」 「キンキンキラキラ、ケバイ」
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