ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action97 −総裏−
キュンメル・大関という人物は、生粋の軍人だった。
言い換えると、軍人以外の生き方を知らないと言っても過言ではなかった。
ドゥエロやバートのように、士官候補のエリートではない。叩き上げの軍人であり、根っからの兵士であった。
だからこそ、彼は老齢となって不貞腐れていた。
「くだらん」
軍事国家タラークは、船団国家メジェールを敵視している――フリをしている。
生粋の軍人であるからこそ分かる。相手を敵視しているが、滅ぼすつもりはない。
敵対しているが、殲滅するつもりはない。女を差別しているが、迫害していない。
軍人として生きてきたからこそ、軍部にやる気がないことは分かっている。
「酒でも飲まんとやっとれんな」
初老の熟練エースパイロットはこれまで、多くの敵と戦ってきた。
相手はメジェールの軍人が主だが、故郷タラークの犯罪者等も討伐したこともある。
軍役を重ねて、軍功を成し遂げて、立場を得る。だが出世は出来ず、前線で戦い続けている。
国がやる気を出さなければ、軍人だって熱意もわかない。
「挙句の果てに女と組むとはな……女海賊相手とはいえ、耄碌したもんじゃ」
青い百一式蛮型撲撃機に搭乗し、戦闘隊長として現場に立っている。
戦国武将を連想させるような古風な口調で、彼は愚痴を零していた。
最近はとにかく愚痴が多く、酒を飲んでくだを巻いている日々が続いていた。
人として堕落しているのではない。国が明らかに堕落していっているのが分かっているからだ。
「海賊相手とはいえ。メジェールと組むとは……一体何を考えておるのか」
女海賊を討伐するべく、女性国家と手を組む。分かるようで分からない話だった。
女海賊の悪辣な噂は聞いている。軍部に所属していれば、否が応でも伝わってくる話だった。
マグノ海賊団、一年ほど前に新規軍艦イカヅチを襲った海賊。
首相が乗艦する戦艦を襲ったとあれば、極刑間違いなしの犯罪である。
その点は理解できるし、女海賊がメジェール国家も襲っているのであれば共通の敵として認識もできる。
しかし同盟を組むのが明らかに早く、しかも国家が推進しているのが分からない。
共通の敵ありきとはいえ一線は弁えるべきだし、敵対している国家とあれば作戦を実施するうえで、念入りな打ち合わせが必要である。
それが一切なく、いきなり手を組んで一緒に戦えと言われているのである。
「仲違いする危険性を何故考慮せんのか。
すべての作戦において男女ありきで想定されていることに、何の疑問もないのは何故じゃ」
タラークとメジェールが手を組んで、女海賊を討伐する。
足並みを揃えられて当然と言わんばかりの同盟、そして共同戦線。
おかしいとは思わないのか――
「女は鬼、悪鬼羅刹ではなかったのか」
――人の言葉を理解できない鬼と、手を組めるのは何故なのか。
互いの存在を嫌悪し激しく憎み合いながら、長年に渡る星間戦争を続けていた歴史。
それが何故女海賊の存在一つで、覆されるのか。
男と女は分かりあえないのではなかったのか。
「儂は一体何をさせられて――」
『――止まれ!』
「むっ!」
さすがは歴戦の軍人というべきか。
思考に割り込んできた通信に、瞬間的に我に返って操縦桿を握り直す。
即座に切り込んだ瞬間、すかさず切り替えされて、互いの武器が火花をちらした。
目の前に立ちはだかるのは――異形ともいうべき、規格外なSP蛮型。
『久しぶりだな、大関のおっさん。俺のことを覚えているか』
「! その声……まさかマーカスの小倅か!?」
現実に悩む老軍人と、現実に立ち向かう若き戦士。
不釣り合いな二人が、宇宙の真ん中で立ちふさがる。
現実を見据えているのはどちらなのか――
<to be continued>
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