ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action96 −那間−
――カイは記憶喪失の地球人。両親の記憶はなく、自意識が芽生えた頃は養父の酒場で生活していた。
養父の出生は不明、本人はカイに自分のことはあまり話さなかった。
その分養父はカイの事も追求せず、黙って息子のように扱ってくれた。
三等民。労働階級は基本的に国から重労働を課せられるが、身元不明のカイは酒場で働いていた。
「大関のおっさんは、酒場の馴染みの客だった」
男性だけの惑星国家タラークは、娯楽が少ない。
労働階級は重量道を強いられ、上層階級は軍事と政治に明け暮れている。
文化は育たず、文明は成り立たない。生活は豊かにならず、長年に渡る星間戦争をひたすら続けている。
数少ない娯楽が酒であり、特に軍人たちに好まれた。
「首都の酒場は騒がしいとかで、うちのような場末の酒場に足を運んでくれた。
うちの親父も喧騒は嫌ってたから、話も合っていたな」
キュンメル・大関は、酒場で飲んだくれていた身だった。
歴戦の戦士らしいが、女との戦いの日々にウンザリしていた様子も見せていた。
酒がとにかく好きで、カイの父親と静かに語りながら深酒を煽っていた。
それで酒乱となれば目も当たられないが、本人は酒豪だった。
「お主との接点があったということか」
「まあ、おっさんも他人の事情に立ち入る人じゃなかったからな……
自分のことは語らないが、その分俺のこともあまり聞かなかった。
お節介ってのをしない人だったよ」
労働階級のカイが酒場で仕事をしていたら、政府側の人間が見れば眉を顰めたかも知れない。
重労働に比べれば、場末の酒場の手伝いなんて雲泥の差だろう。
基本的にタラークは、子供であろうとも男児だ。
男に甘えは許されない。
「この男のプロフィールを見る限りパイロットのようじゃが、お主がヴァンガードに乗ったのもその影響か」
「気にならなかったといえば嘘になるが、武勇伝を語らない人だったからな。
興味で聞いたこともあったけど、あまりいい顔をしなかったよ。
その点は軍人として立派だったのかも知れない」
戦場に出る以上、人の命を奪うことだってあり得る。
歴戦のパイロットであれば、敵国メジェールの兵士を殺したことだってあるだろう。
それを誇らないということは、当然と思っている心構えでもある。
国を守るために戦い、戦いが終われば語らない。戦場から離れているからだ。
「俺が酒場を出る頃は、あまり来なくなっていた。
今にして思うと新規軍艦の初出撃やドゥエロ達の士官学校卒業とか、軍務で忙しくなっていたのかも知れないな」
「大規模な作戦が展開されるため、軍務に戻っていたということか」
「あれから一年、マグノ海賊団捕縛に関わっているのであれば」
「軍事展開がされているということじゃ。
この男は酒場の客ではない、今はタラークの軍人として行動している」
カイは思案する。
メイアを追うタラークの軍人が知り合いだった。
この事実を聞いた時は幸運に思ったが、それは甘えだとアイから諭された。
立場が違う以上、敵となることだってあり得る。
「どうするんじゃ。このまま追われ続けると発見される可能性もある」
――状況を動かす時が来たのだと、カイは知る。
相手が知り合いだったのは幸運であり、不幸でもあった。
カイは長い旅を経て、タラークへと戻ってきた。最初は帰るため、そして今では――
故郷とも対峙する覚悟を決めて、此処へ来た。
「警備の目を誤魔化すことは出来るか」
「……どうするつもりじゃ」
「通信して説得することも考えたが、お前の意見を聞いてやめた。
弱腰であのおっさんを――タラークの軍人を止めることは出来ない。
蛮型で、大関のおっさんと対峙する」
心の何処かで否定したかったが、もう無理だった。
かつての故郷だったタラークは地球の味方であり、敵に回ってしまった。
刃を向けてくる以上、戦うしかない――その先で、説得を行うのだとしても。
<to be continued>
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