ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action85 −美智−
「メジェールという国そのものを、改革してやろうってのさ」
「――っ、やはり!」
日頃携帯しているレーザーガンを、マグノ・ビバンに突きつける。
監獄長の目に揺るぎはない、相手が第一世代であろうとも容赦はしない。
この人間は、危険だ。
「ここから出られはしない。何をしようとしても無駄だ」
「違うね、ここから始めるのさ」
「いいや、あなたはここで終わるのだ」
メジェールにとって危険な存在であれば、禍根を断つのが彼女の仕事である。
ここで殺せば、マグノの目的は潰える。マグノ海賊団はここで終わる。
そうすればこれまでと変わらず、平和が続くだろう。
これまでと、何も変わらない。何も――
「どうしたんだい? 何故撃たない。
レーザーガンは殺傷力こそ低いが、年寄り一人なら殺せるだろう」
「……死ぬのが怖くないのか」
「海賊に言うセリフじゃないね」
マグノ・ビバンは監獄長が自分を殺せないと、高を括っているのではない。
重罪人のみが収監される流刑の監獄に、半端者は務まらない。
政府にとっても都合の悪い人間が送られる場所だ。
覚悟のない人間に長は務められない。人を殺せる覚悟がなければ。
「何故今更世直しの真似事などをしている。
仮にもあなたはグラン・マと同じ世代の人間だ。
世を変えるためであれば今でなくても出来たはずだ」
「耳の痛いことを言ってくれるね。
確かにアタシはそんなつもりはなかったさ。
今だって別に正義に目覚めた訳じゃない」
犯罪者に更生を促しながらも、マグノ・ビバン本人に更生の意思そのものはなかった。
自分の人生を全てやり直すにはあまりにも長く、そして苦労が多かった。
褒められた生き方はしていないが、それでも精一杯生きた自負がマグノにはあった。
ではどうして今になって更生に乗り出したのか。
「収監するにあたり、お前達の身体検査と健康診断を行った。
もちろんお前達を労ってのことではない。
刑期を送るにあたって、お前達には真っ白な身体で居てもらわなければならないからな」
実を言うとカイ達はおろか、マグノ達でさえも一つだけ見逃していた点があった。
正確に言えばドゥエロは半ば考え、そして気を使っていたことではあったが、結局それどころではないまま別れてしまった。
――感染対策である。
カイ達はワームホールにより宇宙の果てに飛ばされ、一年間故郷の外で旅を続けてきた。
宇宙にはタラークやメジェールにはない病気が発生している。
病気にならなかったのはドクターのドゥエロやナースのパイウェイの献身な努力、そしてメジェールの高い医療技術があっての事だった。
だからこそメジェール政府も警戒して、マグノ達に流刑の地で健康診断をさせた。
「マグノ・ビバン――あなたは心臓に、病を抱えているな」
「……」
「人生を最後に迎えて、せめて何かしたくなったのか」
マグノ・ビバンは、表情を変えなかった。
顔色一つ変えず、肯定も否定もしなかった。
それが全てだった。
<to be continued>
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