ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action83 −望見−








 ――結論から言うと、ドゥエロ達の企みは綱渡り的に上手くいった。

未開拓地域に向かう上で、業務車両を拝借。軍用車両とは違って、業務車両は名目と権力を揃えれば拝借するのは困難ではない。

勿論簡単でもないのだが、士官学校卒業生は階級上は軍人であり、労働階級者の上に位置する。


車両管理人に有無を言わさず押し通せば、少なくともその場はしのげる。


『申請書は揃えている。
使用理由は機密に該当するのだが、この場であなたに伝えても問題ないのか。今すぐ貴方の上司に通信してもよいが』

『い、いえ、失礼いたしました。車両キーをお渡しします』


 上司へ伝わって承認を得られた場合、軍人を問いただしてしまった管理人が責を問われる。

少なくと(書類上は)正当な手続きを行っているので、探りをいれることは出来ない。

バートが呆れた顔で状況を静観している中で、車両キーがドゥエロの手に渡った。


何か言われるより前に、二人は車両に乗り込んだ。


『勲章を胸につけて軍服を着ろと言ったのはこういう事?』

『名誉勲章は、軍の勲章において最高位の勲章だ。
我々からすればただの飾りだが、労働階級者からすれば特権に見えるだろうからな』


 マグノ海賊団討伐の報奨として、ドゥエロ達はタラークの首相から直接名誉勲章を授与されている。

名誉勲章は勲章において最高位の勲章であり、軍事国家タラークにおいて強い権力を持つ軍部の名に授与される。

名誉勲章受章者には毎月一定額の手当だけではなく、数々の恩典が与えられ、士官学校卒業生など関係なく先に敬礼をされる特権を有する。


対象人物は軍装時に名誉勲章を佩用するので、こうして一目で分かる。


『とは言え不審に思われて後で確認されれば、即座にバレる。何か言われる前に国外へ出るぞ』

『これで華の名誉軍人生活は終わりだね。短い春だったな』

『マグノ海賊団討伐という名の無条件降伏も、彼女達の作戦でしかない。
我々には最初から無用の長物だったのだ』


 授章基準は戦闘において義務を超えた勇敢な行為を示したり、自己犠牲を示した軍人とされている。

ドゥエロ達はある意味自己犠牲というより、自身の命をかけて戦い続けていたので、ある意味では功績はある。

その戦いが地球に忠誠を誓うタラークやメジェールの意に反しているというだけであった。


故郷を守るために刈り取りと戦っていた彼らは腕章こそ不要だが、栄誉は胸にある。


『それにしても随分大型の業務車両を持ち出したね』

『舗装道路外(オフロード)での走行能力を持った車が必要だった。
未開拓地域は危険も多い、野戦運用を想定して動く必要がある。

エンジン駆動車だと未開拓地域の活動は厳しいので、オフロード走行に適した低速トルクがいい』


 デザインを優先した曲線・曲面を多用している車両だと、未開拓地域の活動は難しい。

事故でも起こしたら未開拓地域のど真ん中で立ち往生する羽目になり、そのまま野垂れ死んでしまう危険もある。

勿論国外へ出るので準備は万全にしているが、整備性や装甲性、経済性を図った車両であることに越したことはない。


ドゥエロの抜かりのなさに、バートは感心する。


『車にも詳しいんだね、ドゥエロ君は』

『知識のみだ、後は頼んだぞ』

『後はって何……?』

『何をいう、車の運転だ』

『えっ、僕が運転するの!?』

『操舵手だろう、頼りにしているぞ』

『いやいやいや、そういう操舵じゃないから!?』


 ――結論からいうと、バートが運転させられる羽目になった。

そしてあろうことか、素人とは思えないドライビング技術を発揮したのだ。


そういう意味でも、彼らは運が良かった。結果論だが。

















<to be continued>







小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けると、とても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。


<*のみ必須項目です>

名前(HN)

メールアドレス

HomePage

*読んで頂いた作品

*総合評価

A(とてもよかった)B(よかった) C(ふつう)D(あまりよくなかった) E(よくなかった)F(わからない)

よろしければ感想をお願いします





[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ]

Powered by FormMailer.