ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action82 −宗規−
――ブザム・A・カレッサこと浦霞天明、彼女こと彼は特務諜報部中佐であった。
タラーク軍情報部は、対メジェールとの睨み合いが過激化していく最中で正式に誕生した部局である。
戦略的情報および戦術的情報の収集および分析を目的としており、保安局や防諜隊といった諜報機関も設置されていた。
諜報部に所属する浦霞天明は特務として、マグノ海賊団にスパイとして潜入していたのである。
「約一年前マグノ海賊団襲撃から始まった一連の事件で、冷戦が一時的に収まっていたのは確かなようだ」
一年前カイが乗船したイカヅチが襲撃され、ペークシス・プラグマの暴走で新造軍艦が消滅した事件。
正確に言えばワームホール発生でマグノ海賊の船と軍艦イカヅチが宇宙の彼方へ転移し、両艦が融合してニル・ヴァーナ誕生となった。
しかし現地に取り残された者達からすれば戦艦と海賊たちが消滅したように見え、大きな事件としてタラークとメジェール両国が一時的に静寂を保った。
その裏では地球による陰謀で、両国の首脳が連動していたのだが。
「全く進んでいなかった文書の分析や翻訳が飛躍的に進んでいる。
結果論でしかないかもしれないが、わたしからすればありがたい話だ」
戦略的情報および戦術的情報の収集と聞くとスパイ行動や陰謀論がどうしても目立ってしまうが、実質の軍務は多岐にわたる。
情報収集の一環として、使途不明資料の翻訳や情報収集、文書の分析なども軍務に含まれるのだ。
無論有事であればそれどころではなくなるのだが、一年前の事件で一時的に戦乱が収まった為、いわゆる机仕事が進んだのである。
国家機密を当然暴くことなど出来ないが――地球から持ち出された数々の資料は、分析作業の対象に含まれる。
「軍艦イカヅチは元植民船の一つとの事だっが、さすがの首脳部もすべての文書の検閲は出来なかったようだ。
刈り取りそのものの情報はなくとも、祖先の星地球の実情や当時の環境への情報は残されている。
首脳部は地球の正体や刈り取りへの追求には至らないと過信したようだが――甘いな」
浦霞天明はマグノ海賊団へのスパイ活動による功績が認められ、昇進を果たした。
マグノ海賊団は無条件で降伏して捕縛され、人質となっていたバートやドゥエロも無事救出することが出来、評価されたのである。
実質はマグノ海賊団やドゥエロ達も理由があってわざと大人しくしていたに過ぎないのだが、結果として功績となったのだ。
だからこそ、諜報部がこの一年間で勧めていた解析資料も容易く手に入れられた。
「これらの情報を突き止めて整理すれば、地球側の凶行の動機が説明付けられる」
――地球が現在タラークとメジェールへ、戦力を全て投入していることは周知の事実。
その際にタラークとメジェール首脳部は本性を見せて、国民達をひとり残らず生贄に捧げるだろう。
彼らの洗脳を解くためには地球の全貌を証明しなければならないが、地球の狂気は言葉では説明できない。
しかし確実なデータが有れば動機づけが行えて、彼らの狂気が浮き彫りに出来る。
「静寂による平和に加えて、私が留守にしている間に取締りも緩まっているようだな。
首脳部も大詰めを迎えて軍務も放りだしつつあるようだな。
私としては好都合だが、やれやれ……ん?」
「失礼いたします」
「どうした」
解析作業を進めていた最中、人の気配を感じた浦霞天明は、即座に取り繕った。
女に変装してスパイ活動を一年以上も行っていれば、取り繕うのも容易である。
入室してきたのは、彼の部下であった。
「何者かが、未開拓地域へ向かうのを見かけたという報告がありました」
「未開拓地域――国の外へ出たのか」
未開拓地域は立入禁止であり、国の外へ無断で出るのは重罪となる。
ただ同時にこの手の犯罪は軍務としても頭の痛い問題であった。
頻繁とまでは言わないが、発生頻度はそれなりに高い。
「はっ、現在足取りを捜索中ですが、不確かな情報の為こちらに上がった次第です」
「よろしい、私が確認しよう。すぐに現場へ向かう」
理由は至極単純で、タラークという軍事国家での厳しい生活が嫌になり、逃げ出すのだ。
国家で優遇されるのは世代の高い人間であり、軍属にあたる者。それ以外の人間は労働階級とされる。
労働階級の生活は非常に厳しい。食事はペレットという栄養剤、生活環境は貧素で、生きる時間の殆どは重労働。
誰が好き好んで、こんな人生を生きたがるのか。嫌になって飛び出すのは当然だった。
(この時期に脱走者、そして表立って騒ぎになっていない。
となれば軍属の人間、ドゥエロとバートのコンビの可能性が高いな)
本来は国境警備隊の仕事だが、未開拓地域は国家機密に当たるので報告は諜報部にも回る。
そして報告が増えるに従って、仕事も雑になる。誰もが皆、またかと思うからだ。
素性もそのうちあまり探らなくなってくる。処理されて終わりだからだ。
そういう意味ではこの国の未来はどのみち暗かったかもしれない――ドゥエロ達の無茶振りもあって、浦霞天明は頭の痛い思いだった。
<to be continued>
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