ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 23 "Motherland"






Action1 -孩児-








 ――宇宙一のヒーローになりたい。


ただそれだけで、始まった旅だった。















 ――実のところ、問題は解決していなかった。


どこぞの惑星に不時着したカイは、何とか救助に成功。ラバットに紹介された惑星の人達との交流は無事成功し、ココペリ達は共に戦うことを約束してくれた。

彼らは戦士ではないが、現実に生きる強き人達である。カイを家族として受け入れてくれた人達は、家族のために戦う決意をしてくれたのだ。

最前線に立たせるのではない。戦列に加わってくれる、ただそれだけでも十分な力となる。宇宙へ出た人類が今こそ結集して、地球と戦わなければならない。


その点はいいのだが、肝心な問題が置き去りになっていた。


『宇宙人さん、本当に無事で良かった!』

『おお、心配かけたな赤髪。見ての通り、五体満足とは言えないが俺は元気だぞ』

『よかった、宇宙人さんと一緒なら絶対超えられるね!』

『超える……?』


『うん、この磁気嵐を超えないといけないもんね。宇宙人さんなら、何かいいアイデアがあるんでしょう』

『――あっ』


 ディータの無邪気な信頼に、カイの顔色が青くなる。そうなのだ――

カイは磁気嵐の中にいる敵を倒すことばかり考えていて、肝心の磁気嵐をどうやって超えるのか全然考えていなかったのである。


正確にいえば考えていなかったと言うより、磁気嵐という猛威を戦場として捉えていたのである。この状況でどうやって戦うのか、そのシュミレーションに必死だった。


『我々で、敵は全て倒している。その点については安心していい』

『悪かったな、肝心なところで戦線離脱してしまって』

『あれは事故だ、誰かの責任にするつもりはない。お前が無事でさえいればいい』

『青髪……』


 そして仲間達も一切責めないので、問題だけが浮き彫りとなってしまう羽目になった。こうして考えてみれば、敵よりも磁気嵐のほうが厄介である。

敵はどれほど強力でも戦えば倒せるが、磁気嵐はどう頑張って戦っても倒せない。なにかすれば消えるものではなく、攻撃しても無駄であった。

ニル・ヴァーナのペークシスアーム等の超兵器を使用すれば可能かもしれないが、自然現象を下手に歪めると大惨事を招く危険があった。


精霊との対話を実現したカイは、自然を傷つけることを拒んだ。あの人達の教えは、人として通じる尊い理念だったのだ。


『ピョロのスーパーヴァンドレッドなら、こんな磁気嵐ひとっ飛びだピョロよ!』

『俺らはそれでいいかも知れないが、ニル・ヴァーナや母艦を置き去りにしていくのか』

『ピョロ達には、精霊二人がついているピョロ。きっと守ってくれるピョロ!』


『……マスターのご命令であれば』

『……えー、疲れるし面倒くさい』


 解決案も出たのだが、全面的な賛同は得られなかった。カイ達も無力ではなく、大いなる力を手にしている。

精霊の加護にペークシス・プラグマの力、スーパーヴァンドレッドに代表する超兵器、地球より奪取した母艦。強力な力が揃っている。

しかしながら、力の行使となると賛否が出た。本人達も気乗りしていない。理由は単純で、消耗するからである。

ペークシスの力は無限ではあるのだが、精霊という意志を宿している以上精神への負担はどうしても生じる。


カイの命令であれば嬉々として従うが、さりとて力押しというのも確かに推奨できる案ではなかった。


『ユメ達が頑張らなくても、あんたがバリア張って全員守ればいいでしょう』

『えっ、僕が!?』

『えーと……お兄ちゃん一人で、大丈夫なの……?』


『シャ、シャーリーのためなら、僕は何でもやるぞ!』

『声が震えているぞ、バート。やめておけ、君の体がもたない。医師として賛同できない』


 精霊からの代案かつ挑発に人間の操舵手が過剰に反応するが、同じ人間の医師に止められてしまう。

ペークシスの力が無限である以上、ソラ達の協力を得られればバートは確かにニル・ヴァーナのシールドを永久的に展開できる。

しかしあくまで、理論上の話。精霊と同じく、精神を持つ人間にも疲労はある。ニル・ヴァーナという巨大な船を支え続けるには、バートに相当な負担がかかる。


今までの戦闘で籠城策が浮上しなかった、最たる理由がこれである。負担が、大きいのだ。


『ちっ、仕方ない。俺らでやるか』

『……何でそこでアタシをみるのよ、カイ』

『お前と俺のヴァンドレッドジュラで、全員抱えて飛ぶんだよ』

『今、疲れるという話をしていたばかりでしょう!? アタシだって嫌よ!』


『お前は最近サボり気味だから、ちょっとくらい貢献しろ。故郷を前にして、お前の戦績は今のところ最低だぞ。
一応言っておいてやるが、リーダー候補のディータに余裕で追い抜かれているからな』


『嘘!? 本当なの、メイア!』

『……残念ながら、事実だ。ディータはここ半年で飛躍的に成長し、功績を残している。お頭と副長には既に、ディータを幹部候補として推薦している』


 ――残された課題を、成績がよろしくないパイロットに見事に押し付けられてしまった。

妥当といえば妥当な解決の道筋ではあるのだが、いきなり禍根を残す結果となってしまい、先行きが危ぶまれる。


こうして故郷へ向けての、最後の旅が始まった。























<END>







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