ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 22 "Singing voice of a spirit"






LastAction -原物-








 マグノ海賊団が荒野の惑星でカイを発見した時の感情は歓喜ではなく、当然だった。

カイが荒野の惑星へマグノ海賊団が迎えに来てくれた時の感情は歓喜ではなく、当然だった。生きているのは当然、再会できるのも当然。

仲間達が到着した時泥だらけになっているカイに呆れ、カイが再会した時呆れている仲間達に肩を落とした。


感動も何もなく、ただお互い無事な顔を見て満足していた。


"生まれ変わった若者よ、よく試練に耐えた。お前は立派な戦士だ"

「あんたには何もかも、見透かされていた気がするよ」


 そして、ラバット。試練を終えたカイを前にした時、ニヤリと笑みを向けるのみ。この男にもまた、見透かされていたのだろう。

この惑星を紹介したのも、彼だった。精霊の存在を知りながら、自分には何も言わなかった事にカイはジト目を向けてしまう。

精霊の存在を知っているのであれば、ソラやユメの正体も知っていた筈なのだ。自分だけ知らなかったというのは怒りよりも――


恥ずかしく思ってしまう。子供のままであれば、素直に怒ることも出来たのに。


"――これを"


 精霊の試練へと導いた村長ココペリは、カイの額に空のように蒼く透き通った石を付けた。ほのかに光っている、神秘的な石だ。

抵抗することも出来たが、あまりにも自然な動作に無抵抗。彼の飄々とした姿勢は達観しており、自分の未熟さを痛感させられる。


カイは、額に手を当てた。


"この石がある限り、我々はいつもお前と共にある"

「あんた……」


 知っているのだと、分かった。自分が一体何者なのか、これから何者へとなっていくのか――ココペリは、カイのことを理解していた。

待ち受ける、過酷な宿命。追い付いてきた、因果な運命。逃げられない、自分の過去。見据えるべき、仲間達との未来。

どれを取っても、楽ではない。まして、これからやろうとする事は果てしなく困難だ。失敗すれば、破滅だった。


それに、何よりも――


"お前は、此処で試練を乗り越えた。この地で、生まれ変わった。

この星は――今日からお前の、新たな故郷だ"

「……っ」


 ――自分の故郷を、地球を断罪しなければならない。自分をゴミのように捨てたあの星だが、それでも自分にとっては故郷だというのに。


子供から大人になる瞬間とは体や心の変化ではなく、もしかすると故郷から旅立つ時かもしれない。

カイにも、ようやくその時が訪れた。だがそれは決して祝福ではなく、惜別だ。どう転んだところで、故郷に迎えられることはないだろう。

分かってはいる、覚悟もしている。そんなカイに対して、ココペリは告げた。



"いつでも、戻ってくるがいい。辛い時でも、嬉しいときでも、必ずお前を迎えよう。

遠慮は、無用だ――何故なら我らは、お前の家族なのだから"



 ――この野郎……カイは下を向いてしゃくりあげながら、ラバットを睨んだ。大人の男は、ニヤリと笑ったままだった。


最初から、これが目的だったのだ。この旅の終わり、最後の試練。地球と戦う上で必要なものとは、何なのか。

ラバットは知っていて、この惑星を紹介したのだ。カイには、なにが足りないのか――なにが必要なのか。


ラバットには、分かっていた。



「ありがとう」



 言葉を、飾らない。カイは自分の心のままに、口にした。

もはや、憂いは何もない。全ての謎は解けて、全ての迷いは晴れた。自分は完璧にはなれなかったが、自分らしくはなれた。

仲間がいる。友だちがいる。そして家族も出来た――ならば後は、旅立つだけだ。


見果てぬ荒野、過酷な旅路であろうとも。



いつでも帰ってこれる、故郷がある。















「この嵐を乗り切ったら、いよいよアタシらの故郷だよ。皆、気を抜くんじゃないよ!」

「……皆って、ユメも入ってる?」


 ニル・ヴァーナの艦長席から上がる号令に、精霊が首を傾げて話している。彼女達は今、堂々と乗船している。

精霊の存在は、カイを通じて明らかとなった。試練を乗り越えたカイには、伝えるべき資格と義務があった。その上で、問うた。


自分とは、何なのか。


「勿論です。貴女も、"私達の"家族ですよ」


 答えたのは、同じ精霊。されど、その枠には自分以外の全てが込められている。

結局の所、誰だって自分が何なのか分からない。探し求めても、全ては明らかとはならないだろう。


自分以外の誰かを、認識するその時までは。























<END>







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