ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 22 "Singing voice of a spirit"






Action33 -舞夢-








"時の刻み――そして、限りある生命"

「お前達には時の刻みはなく、俺達にはそれがある」


 精霊との対話を行いながら、カイは崖を登っていった。急激な高さの崖、ほんの少しの迷いがあれば手を滑らせて落ちてしまう。

環境による克服と考えれば、この精霊の試練はよく出来ている。精霊との対話とは、自然との会話でもあるのだろう。

ソラやユメは実体化こそされていないが、存在は確かに感じられた。今まであった溝を埋めていくように、会話を行っている。


足場の少ない崖を一つ一つ、手をかけて登っていく。


「人間は原始的な生き物だけど、その火その日を大切に生きていける」

"人間とは何か、何故存在するのか"


 ユメは疑問こそ投げかけているが、答えそのものは既に出している。彼女達もまた、時の歩みの中で育まれた。

エズラの子供カルーアの誕生からずっと、ユメは見守り続けた。可愛がりながら、すくすく育つ命を愛でていたのだ。

人とは何故存在するのか、人間とは何なのか。カルーアという存在そのものが、答えであった。


生きているだけで、愛おしい。愛おしいからこそ、存在を許される。


「生きる理由があり、生き続けていく目的がある。だから、俺は生きていける」

"それが、マスターである証"


 ソラは、変わっていない。決して変わる事のない忠誠を、彼女は価値観として持っている。

カイと出逢って手を差し伸べられ、名前を与えられた。その時から彼女は生まれ、そして生きている。

名も無き存在は不変であれど、価値はない。名のある存在は不明ではあるが、価値がある。


人として生まれ変わり、人を知り続けている。


「友と呼べる存在、仲間と言える人達、家族となれた子達。色んな人達と関係を持って、俺という人間が出来た」

"ユメも――い、一応ソラも含めて、大切な人達なんだよね"


 ユメは、実感している。やはり地球の連中は、決して自分の仲間ではない。見限っている。

人間というカテゴリーでは同じなのに、彼らとカイ達で何が違うのか。ユメは今まで一緒くたにして、嫌っていた。

たとえ地球側であろうともカイに認められて、ユメはようやく線引きが出来たのである。もとより、限界はあった。


カイ以外の大切な人達――カルーアを中心としたシャーリー達、友達と言える子達を持って。


「海賊であり、決して価値観を共有できないけれど、それでも大切だと言い切れる。そんな人達がいるからこそ、俺はこうしていられる」

"マスターがいるからこその、私。大切な誰かのために存在する、自分"


 ソラは、生きている。カイがいるからこそ、彼のために何処までも尽くすのだと誓っている。

そうした想いの源に、心がある。心があるからこその、人間。されど自分は精霊、違いなど何処にもありはしない。

精霊との試練とは、人と人ではない者との境界線を見出す事。差別や区別ではなく、境界線があると分かってこそその先へ行ける。


自分以外の誰かを認識してこそ、自分という存在が広がっていく。



「大切な人達のために強くなりたいと、今は心から思っている」



 カイはヒーローを目指していた。だが、ヒーローとは決して一人で成り立つものではない。それが分かっていなかった。

何を守りたいのか、何のために戦うのか。目的ばかりで意思はなく、自分のために突っ走るようなものは英雄ではない。

誰のために、何をしたいのか。何を守るべく、何と戦うのか。今はハッキリと、言い切れる。


マグノ海賊団、ソラやユメ、バートやドゥエロ――そして出逢った人達全ての為に。



地球という価値観と、戦う。



――上を見上げると、暗闇の先に光が見えてきた。























<to be continued>







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