ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 21 "I hope your day is special"






Action28 -屍鬼-








「エズラはレーダー室へ、ナビゲートチームと協力してポットを探すんだ」



 カイとメイア、カルーアの三名が行方不明。事が発覚した後は迅速かつ的確に行動に移す面々だったが、関係者であるエズラだけが半ば取り残されていた。

言わずもがな、カルーアを危険に追いやったカイとメイアを恨んでいない。真相は不明であっても、彼らがカルーアに危害を加えるなんてありえない。

こうなってしまったのは、母として至らぬ自分の責任。自分への反省と後悔、仲間達への感謝とも合わさって、心は浮き沈みを繰り返す一方であった。


そんな彼女に、副長のブザムは命を下した。私情ではなく、任務として我が子の探索を行うように命じたのである。


「は、はい……!」


 気遣われている事を承知の上で、感謝と共に受諾する。心の整理は今も付いていないが、戸惑ってばかりではいられない。

同じく命令を受けたナビゲートチーム、ユメやピョロも似た心境であった。他の皆から背中を押されながらも、有効的な手立てが打てず戸惑っている。

分からないのであれば、ともかく行動に移して探せばいい。けれど彼らが恐れているのは、結果であった――発見できなかったという結果も、最悪ではあるのだが。


発見が遅れることの無駄も同じく、怯えている。


(うう、一体何処に居るの……ソラはいつまで時間をかけているのよ!)


 時間を無駄に出来ない。廃棄処分の脱出ポットであれば、エネルギーも酸素も不足しているだろう。時間がかかってしまうと、酸欠で死んでしまう。

優秀なブリッジクルーであるエズラも、その可能性には気付いている。そして三人の中で一番早く死ぬのは、赤ん坊のカルーアである事も。

同乗するカイやメイアが必死で救護を行うだろうが、焼け石に水だ。元々の酸素量が不足しているのだから、早いか遅いかの違いでしかない。


命を受けても悩んでしまう面々を前に、ポニーテールの少女がブリッジに飛び込んできた。


「話はこいつに聞かせてもらったわ。エズラさん、あたしも手伝うわよ!」

「ちょっとちょっとちょっと〜〜〜!?」


 ――意外と知られていない事だが、ピョロには足がある。普段浮いているので気付かれないが、一応手足の稼働が可能なナビゲーションロボットなのである。

そんな彼の細い足を掴んで引き摺りながら、ミスティが力強い微笑みを浮かべている。状況にはそぐわない、明るさの宿った笑顔であった。

人間の笑顔については知識こそあれど、感情面での理解が及んでいないユメ。彼女の笑顔の意味をそのまま受け取って、思わず柳眉を逆立てた。


映像に怒り顔いっぱいで迫り、猛烈な勢いで抗議する。


「ちょっと人間、何笑っているのよ! ユメの妹やますたぁーがピンチなのよ!?」

「そんなの、大声出して言われなくても分かっているわよ。役立たずは黙ってて、シッシッ」

「や、役立たずぅーーー!?」


「副長さんから命令されたのに、ボケっと何をしているのよ。こいつも狼狽えてばかりで、何もしないのよ」

「のおおおおおおおおおおお!?」


 掴まれた脚を豪快に振り回されて、ピョロは激しく目を回している。三半規管など無いのだが、視覚的な感覚で目を回しているようだ。

何の役にも立っていないと宣言されて、ユメは思わず頭が真っ白になる。万能に近い能力を持つ彼女が今まで、一度も言われたことのないレッテルであった。

殺したいほど反論したいのだが、実際に今カルーア達を見つけていないので何も言えない。先程の彼女なら言えていたのだが、セルティックやソラに論破されている。


言い淀むユメにフフンと鼻で笑って、ミスティはピョロを持ち上げた。


「あんた、宇宙空間でも活動できるのよね?」

「うう、一応出来るけど……それがどうしたピョロ?」

「探しに行きなさい」

「は……?」


「物覚えの悪いロボットね。いいから脱出ポットを探しに行きなさいと、言っているのよ!」

「物理的に探しに行くピョロ!?」


 当然としか言いようがない事実だが、宇宙空間は広い。広大すぎては手が見えず、どこまで広がっているか分からないほど広い。

だからこそブザムはレーダー室で分析して捜索を命じたのだが、あろう事かミスティは正に自分の"足"で探しに行けと言ったのだ。


普段は喧嘩ばかりしているが、さすがにユメが止めに入った。


「あんた、バカでしょう。ウロウロ探して見つかるはずはないでしょう!」

「脱出ポットだって燃料切れで今、ふよふよ漂っているじゃない」

「ほんと、バカじゃないの!? それも考慮した上で、捜索範囲が広すぎると言っているのよ!」

「人間よりも優秀な分析能力と案内機能を持っているのよ、こいつは。宇宙空間だって迷わず探せるでしょう!」

「だーかーら、それでも広いと言ってるピョロ!?」


「探しにしないで、あんたらは文句ばかり言っているのよ!」


 ダン、とミスティは床を鳴らした。細い足首で想像も出来ない力に、ブリッジの床から激しい打音が鳴り響いた。全員が固唾を呑んでしまう。

ミスティは、怒っていた。彼女は、正しく怒っていた。自分への無力、事態への懸念、仲間への心配、エズラ達が患う気持ちの全てを彼女は抱えている。


その上で、彼女は怒りを漲らせていた。


「無駄かどうかなんてやってみなければ、分からないでしょう。悩んでいる暇があるなら行動しなさい。
あの馬鹿だって、そうやって今まで生き抜いてきたんでしょう!」

「ミスティ、ちゃん……」

「あいつは、諦めていない。お姉様はちょっと心配だけど、あいつがいればきっと大丈夫。カルーアちゃんは、二人が守ってくれている。
後は、あたし達よ。あたし達が手を伸ばしてやればいいのよ」

「人間……」


「一人じゃ間に合いそうにないなら、皆で頑張ってどうにかすればいいのよ――ピョロ、あんたは絶対ポットをその馬鹿力でここまで運んできなさい。
あたし達も懸命に探して、ポットの居場所を突き止める。でも救助活動する時間までないかもしれない、だからあんたが間に合わせるの。


副長さんの言う通り、ここがナビゲーションの見せ所でしょう」


 メイアは計算で算出した限界を――ミスティは勘で感じていた。探しているだけでは間に合わない、今すぐにでも救助に向かわなければならない。

発見してからでは遅いのであれば、発見する前に救助を出してしまえばいい。そこでピョロの出番、救命道具である酸素ボンベ類も運んでもらってとにかく救助をまず急ぐ。


少しでも救助が間に合えば、救援できる可能性も広がるのだ。


「エズラさん、あの子はあたしとあいつが抱き上げた子よ。あの時だって諦めなかったでしょう、頑張ろうよ」

「ミスティ、ちゃん……うう、ありがとう……!」

「あんたは、ピョロのフォローを頼むわ。あたしとエズラさんも懸命に探すから、とにかく手伝って」


「む、むむむ……!」


 ミスティの言っていることは、実に無駄が多い。恐らく結果が出たとしても、その大半は無駄で終わるだろう。

けれど報われるべき結果は、最高だ。多くの無駄があったとしても、たった一つの結果を出せれば最高なのだ。


人はそうして、進歩してきたのだ――


「わ、分かったわよ! リーダーであるユメについて来なさい、アンタ達!」

「ふふ、ようやくらしくなってきたわね」



 ――その様子を目の当たりにしたマグノは、笑みを深くする。

やはりカイによく似ていると、彼女のエネルギッシュな明るさに希望を見出した。






































<to be continued>







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