ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 21 "I hope your day is special"






Action6 -名誉-








 カイとメイアがメインブリッジへ移動したと報告を受けて、各部署の各部隊が一斉に動き出した。メインブリッジはニル・ヴァーナの最先端、今なら艦内を気兼ねなく動ける。

メインブリッジは司令塔であり、艦内全ての状況が中継出来るのだが、ブリッジクルー達が味方であれば情報の流出は行われないので安心。

お頭や副長には毎度呆れられているが、それでもサプライズパーティの意味は理解してくれているので黙認。漏らすことは断じて無い。


今年はタラークの男達も協力してくれていて、かつてないほど順調に事を進められている。


「艦内の動向を探るのであれば、僕は操舵席に居たほうが良かったかもしれないね」

「ニル・ヴァーナと共有している君であれば確かにメイアの動向を探るのは不可能ではないだろうが、彼女は他人の視線には敏感だ。
セキュリティカメラなどを通じた監視であっても、見破られてしまうかもしれない。持ち得る能力を過信しない方がいい」

「なるほど、納得」


 ドゥエロは頭脳労働担当、バートは肉体労働担当で忙しなく働いている。明確に分かれているが、両者の扱いそのものには今のところ大きな差はない。

バートはかつて軽い性格から軽視されていたが、シャーリーという女の子を家族に引き取ってからは女性の見る目も劇的に変わっていた。

見ず知らずの子供を引き取って育てる、その苦労だけでも大変であるというのに加えて、異星の少女を家族に迎え入れたのだ。


女性の味方であるということを彼はある意味、カイより明確な形で証明したのである。バートを応援する声は高い。


「あの二人、お頭達と作戦会議とかで詰め込むんだろう。出来ればその間に、持ち運びが大袈裟な分とかは全て会場に運び入れておきたいね」

「同感だが、我先にと運び出してしまうと却って滞ってしまう。指示系統を明確にして、作業員の整理に努めよう」


 何とも物悲しい話だが、メイアの相手をしているカイが一番大変な苦労をさせていると、女性陣から同情と憐憫を向けられてしまっている。

それ程までに過去メイアには誕生日の度に逃げられてしまい、サプライズが行えなかったのだ。メイアは人望ある女性ではあるのだが、誕生日の時だけは難敵だった。

その難敵を今、カイが一人で押さえてくれているのである。男が率先して一番危険な任務をやってくれているのであれば、女性陣もやる気を出すというものだ。


バートやドゥエロも親友が孤軍奮闘してくれている分、自分達も成果を出すつもりである。お互いの名誉をかけて、それぞれが奮起していた。


「サプライズパーティの準備はいいけど、名目とはいえ艦内清掃や改装を任された以上こちらの手を抜くわけにもいかないのよね」

「サプライズパーティはあくまで、極秘任務。成果として挙げられない以上、艦内の大掃除が進んでいなければ職務放棄と受け取られてしまうな」


 メイアの行動を制限する為とはいえ、メイアの任務を引き受けてしまったパルフェ。会場の準備に加えて、艦内の大掃除も進めなければならない。

サプライズパーティさえ成功すれば任務を引き受けた理由も分かってもらえるだろうが、そもそも成功させる為に引き受けた任務だ。疎かには出来ない。

パルフェの苦悩をドゥエロもよく理解する。両立しなければならないが、メイアを拘束する会議の時間は限られている。効率よく進めなければならない。


となれば、ポイントを絞るべきであるとドゥエロは即断する。


「艦内大掃除のそもそもの目的は、永らく放置していたニル・ヴァーナ艦内の調査と改装の不備が原因だ。
明確に出ている問題点をまず潰していって、メイアの目に留まる成果を上げるべきだろう」

「『清掃』は後回しにして、『改装』に力点を置くべきだと?」

「改装であれば、君のスキルを生かせる。メイアに良い報告を送れるだろう」


 ドゥエロの提案はもっともであった。事の発端は水道管の破裂であり、遡れば母艦来襲による破壊であり、ニル・ヴァーナ誕生にまで到れる。

清掃も確かに重要ではあるが、艦を運行する上で改装を行うのは優先度が高い。艦内施設の不備さえ無くなれば、清掃に遅延が生じても挽回は出来る。

無論クリーニングクルー達には清掃に集中してもらうが、他の人員は艦内の改装に当たるべきだろう。パルフェは首肯した。


メイアから任務を引き受ける上でまず、艦内に不備が生じている点について凡その分析は行っている。


「まずは格納庫。カイの蛮型とメイア達のドレッド三機が大幅な改造が行われているのに、保管庫が旧式のままで騙しだまし使われているわ」

「……あのスーパーヴァンドレッドとやらで、更なる進化を遂げたとも聞いている」

「うん、決定的なのがあれだね。おかげで整備一つにも大きな手間がかかっちゃってる」


 ペークシス・プラグマによる改造で、蛮型もドレッドも通常規格から大きく逸脱した設計となっている。

バージョンアップして戦力が上がったのは事実なのだが、肝心の機体を格納する大元がそのままの状態で使われているので整備や修繕に困っている。

しかも悪いことになまじ整備班のパルフェ達が優秀なので、旧式の状態でも運用出来ているから余計に改善されない悪因となってしまっているのだ。


改善の提案は現場が出していかないと、どうしようもない。優秀であるがゆえの欠点だった。


「ならば、丁度いい。作戦会議を終えた後メイアが実践訓練に入ってしまう事も考慮して、真っ先に工事に取り掛かろう」

「なるほど、メイアは軍事訓練に入っちゃうと長くなる傾向がある。外に出てくれる事自体は歓迎だけど、帰ってこなくなるのは困るからね」


 過去サプライズパーティが行えなかった理由の一つが、軍事訓練による欠席である。真っ当なだけに抗議もできない。

その時は既にメイアがサプライズの気配に気付いての逃亡であり、今回には当て嵌まらないが、それでも軍事訓練に入られるのはまずい。

格納庫の整備は前々から出ていた問題点だったので、これを機に改装しているといえばメイアも納得するだろう。ドゥエロも賛成する。


ドゥエロの了承を得て気分よく、格納庫同様の難題点を取り上げた。


「後は『救命システム』のテストと改善だね」

「救命システム?」


「最初の母艦と戦った時ニル・ヴァーナに無人兵器が侵入されて、ドクター達のお部屋とか壊されて大変な目にあったでしょう。
通常こういう軍艦で大きなトラブルが起きた際、救命処置として『脱出装置』が働くはずなのよ。

なのにあの時、ドクターが危険な目に遭っても何の作動もしなかったでしょう。だから一度全体的に見直して、修理をしたんだ」


 ――ニル・ヴァーナに無人兵器が侵入した際、ドゥエロは崩落に巻き込まれて死にかけた。当時起きた事故は、パルフェの心にも深い影を落としていた。

救命システムが働いて船から脱出しても、無人兵器に囲まれている以上安全ではない。だがそれで何らかの救命システムが働いてくれれば、ドゥエロは危険な目に合わなくて済んだかもしれない。

元タラーク軍艦の救命システムが働かなかったのはニル・ヴァーナ誕生による規格変更が原因だが、問題点を放置していたのは事実だ。


パルフェの心中を思い遣って、ドゥエロは珍しく何の因果も含まない微笑みを浮かべた。


「私はこうして元気に生きている、気に病むことではない。改善する要因となってくれたのであれば、何も言うつもりはない」

「……ありがと、ドクター。安心して、今度はアタシのシステムで皆を守ってみせるからさ」


 改装すると決めたからには、徹底的にやるべきだろう。ドゥエロから励ましを受けて、パルフェも気分一新で気合を入れなおした。

格納庫と、救命システム。船の外を守る機体を保管する施設と、船の中を守るシステム。2つの重要な問題点を一日で解決すれば、メイアも納得してくれるだろう。


方針が決まったからには、迅速に行動するべきだ。二人は各部署に伝達して、事を進めていく。


「工事の現場監督が君がやるべきだ。私は救命システムの点検に取り掛かろう」

「助かるよ。ドクターが点検してくれるのなら、アタシも安心だからね。点検が終わったら、動作チェックをするね」

「緊急時にきちんと動くのかあらかじめ確認しておくのか、慎重だな」

「動かなかったら何の意味もないからね。今は別に緊急事態じゃないけど――」



 ――パルフェとドゥエロはこの時、迂闊だった。



「チェックするべく救命システムを稼働させるから、絶対触れないように周知しておくね」


























<to be continued>







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