ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 21 "I hope your day is special"






Action4 -警務-








 カイ・ピュアウインドが、メイア・ギズボーンを引き付ける。男が女の関心を引く行為はタラーク・メジェール両国家にとって、異端の戦略である。

敵対意識による注意であればあり得なくはないが、関心による興味はあり得ない。男の存在に慣れてきたマグノ海賊団であっても、半信半疑ではあった。

だからこそいけないとは分かっていてもついつい二人に目をやってしまうのだが、メイアはぎこちなさそうにしながらもカイとの行動に疑念すら持っていない様子。


作戦が上手く行っているのは歓迎すべき点なのだが、こうまで上手くいくと別の関心が生まれてしまう。


「……何だかメイア、カイと仲良くなってる?」

「うーん、作戦行動中は気の合った連携を見せていたけどね」


 作戦立案者はカイ、作戦遂行者はクルー達。そして状況確認者は艦内の動向を探る事が出来るブリッジクルー三人組に任されていた。

これはドゥエロの提案で、メイアが卓越した洞察力の持ち主であっても、システムカメラのような機械による監視まで注意を払えないという意見から行われている。

通常は業務以外での監視カメラ確認は禁止なのだが、メイアのサプライズパーティーという特別な理由でゴリ押しして、渋々だが副長より許可を得ている。


許可というより、半ば黙認に近い形ではあるのだが。


「よく考えている者達同士、気が合うのかもね」

「? どういう事よ、セル」

「生き方とか価値観とか、難しい事を考えてる者同士ということ」

「ああ、なるほどね」


 ヴェルヴェデールの疑問に応えるセルティックに、アマローネが納得の声を上げる。カイは堅物ではないのだが、試行錯誤しながら行動するタイプだ。

メイアについては言わずもがなである。彼女ほど、自分の生き方について熟考を重ねている人間はそういないだろう。

分かりやすく生きている人間と、分かりづらい生き方をしている人間。相反してはいるが、価値観が真逆であると分かり合えば型に当てはまる。


的を射た指摘ではあるのだが、セルティックの口調が尖っている事がむしろアマローネの疑問を生んだ。


「何だが機嫌が悪くない、セル?」

「賛同者が増えると、お調子者が浮かれる」

「メイアがカイの生き方に賛同しているかどうかは、別の話だと思うけどね」


 基本的にメジェール人はタラーク人には植え付けられた敵意を持っている。人見知りのセルティックの場合まず苦手意識が働き、そして敵対意識へ変わったらしい。

先の母艦戦争で男達を正式に受け入れてから、セルティックは着ぐるみを脱いでいた。彼女なりに、少なくとも男達への理解は深まりつつはあるのだ。

だがカイに対しては別で、彼の前では頑なにクマの着ぐるみを着用して顔を隠す。素顔は絶対見せず、口を利くこともままならない。


言葉に出るのは壮絶な毒舌で、お頭や副長さえ呆れさせている。その頑なさが、年長者であり親友のアマローネには微笑ましい。


「……カイとメイア、か」

「何よ、ベル。あんたも引っかかっている事でもあるの?」

「そりゃ気になるわよ、二人の関係」

「何でよ」


「何でと聞かれると返事に困るけど、こう……カイには、特定の人間に肩入れしてほしくないかな」


 思わせぶりに、ヴェルヴェデールが溜息を吐いている。意味が伝わり辛い発言は、そのまま彼女の心中を表しているのだろう。

カイとヴェルヴェデール、二人に対して付き合いのあるアマローネには何となくではあるが、ヴェルヴェデールの心中は察せられた。

気になるというより、むしろ気掛かりなのだろう。カイとメイア、二人の関係が進展すれば、より親密になって仲も深まっていく。


お互いの距離が近くなれば、当然だが自然と相手を見る時が増えていく。それはすなわち、他の人間を見なくなっていくのだ。


「カイはベルにとってヒーローなのね」

「げっ、何だかそう言われると無性に抵抗したくなるわ」

「でも、自分を守ってもらいたいんでしょう?」

「ア、アタシはそんなにか弱くは――!」


「あたしもそうだもん」


 アマローネが素直に認めると、ヴェルヴェデールは絶句する。アマローネは別段こだわりはなく、素直にカイへの気持ちを口に出した。

メジェール人は、同じメジェール人と結婚するのが常。女性国家のメジェールでは、同じ女性を好きになる。その価値観は、男を知った後でもそう簡単に変わらない。

カイ達男三人は言わばアマローネ達にとって新しい人間であり、選択肢なのだ。ただ性別の垣根を超えても、国家間の壁もあって恋愛関係には発展しにくい。


アマローネにとってカイはその壁すら超えて、信仰に近い信頼を寄せている。


「……今の言葉、本当?」

「うん。あたし達が生きて今旅が出来ているのは、率直に言ってカイのおかげでしょう」

「そ、それはそうだけどさ」

「一緒に子供を作って家族になれば、もっと大事にしてもらえるかもしれないと、時折思うわよ」


 ヴェルヴェデールは頭を抱えた、重傷である。同僚はイカれている、完全に。でも――気持ちは、すごくよく分かる。

海賊家業は完全に実力社会である。実力がある人間が重視され、実力のない人間が落ちていく。無能が廃棄される冷酷な世界ではないにしろ、肩身は狭い。

生き死にが激しい世界では、実力のある人間に身を寄せる事は人間の本能でもある。海賊家業では、そうした本能が顕著になりやすい。


カイは海賊ではないにしろ、その実力と存在感はお頭や副長に匹敵する。ブリッジでカイの活躍を間近に見たアマローネは、日頃の関係もあって心を寄せていた。


「そういう意味だと、あたしはメイアよりジュラの方が心配かな」

「……カイと子供を作ると公言しているから?」

「本当にやりそうでしょう」

「――むっ」

「お姫様を気取るのはいいけれど、人間関係ってのは変わっていくわよ。故郷も近いんだし、そろそろ考えておかないと」

「――むむっ」


 やばい、ヴェルヴェデールは直感した。アタシの友達は身を固める決意をしつつある、危機感が浮上してきた。

カイの関係は、友達である。元監房の部屋が壊れてからは女子の生活空間にも遊びに来ていて、夜通しお喋りしたことも数多くあった。ブリッジ任務の合間でも、普段のメンバーと交流したりして。

メジェールで憧れていたような、燃え上がる恋愛感情はない。男性であり、タラーク人だ。外国人、異星人相手だと思うと、やはり心の何処かに抵抗はある。


ただ――今のコミュニティを誰かに奪われるとなると、それはそれで惜しくなる。自分を守るヒーローでいて欲しい。


「ベル」

「な、何よ、セル」


「裏切ったら、絶交するから」



 ――普通に、考えて。

 普通に考えて、今の言葉は友情のもつれだ。カイを嫌うセルティックが、友人であるアマローネに男を好きになってほしくないと思っているからだ。


   その筈なのに。



 セルティックの目は、冷たい独占欲に凍っていた。























<to be continued>







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