ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 21 "I hope your day is special"






Action1 -当初-








「青髪、話がある」

「突然どうした、カイ」

「相談事でな、二人きりで話したい。よければ朝、付き合ってくれないか」

「かまわないぞ」


 カイ・ピュアウインドとメイア・ギズボーン。二人の職業はパイロットであり、同じ職場ではあるのだが、毎日仕事を同じくはしていない。

以前は男と女という性別差で職務を分けていたのだが、正式な同盟が結ばれた後は共同で行っている。同じではないのはあくまで、職場での立場。

メイアはドレッドチームを率いるリーダーで、カイは一パイロットに過ぎない。率いる者と率いられる者、仕事の量や種類にどうしても違いが生じる。


なので朝二人が同じ時間を過ごす事は珍しいのだが、メイアは比較的気軽に応じた。


「話には聞いていたが、朝の食事はセレナチーフの手作りとは贅沢だな。あまり個人の面倒を引き受けるのは、チーフの負担となるのだが」

「正式な団員じゃねえから、注文が限られてしまうんだよ。部外者でも食える献立を増やしてくれ」

「妙な意地を張って、いつまでも部外者の立場でいるからだ。お前ならば、申しであればいつでもセキュリティカードは与えられる」


 ニル・ヴァーナに唯一存在するカフェテラス、此処はキッチンクルーが料理を作っているのだが、オーダーはあくまで機械で賄っている。

タラークと比べてメジェールは技術が発達しているので、日夜体制で開店するカフェテラスで自動オーダーによる食事が行えるのだ。

だがカイはマグノ海賊団入りを頑なに拒否しているので、セキュリティレベルは0のまま。カードがないので注文も行えず、無料の水か野菜しか注文できない。

その点を不憫に思ったキッチンクルーはカイ個人のオーダーを受け付けており、朝御飯はチーフのおにぎりを馳走になっている。好意に甘えた対応に、メイアは呆れていた。


「そういうお前こそ、注文がいつも同じだとチーフが嘆いていたぞ。朝も常にパンと珈琲で済ませているそうだな」

「食事は栄養補給だ、きちんと取れていれば問題ない」

「味気ないというより、贅沢な話だ。タラークではペレットが主食なのに」


 食事の文化に乏しいタラークでは、労働階級には最低限の食事しか与えられない。メイアの言う栄養補給食が、ペレットに該当する。

栄養カプセルに等しいペレットは日々食べていれば補給こそ行えるが、貧しいの一言に尽きる。楽しみも何もあったものではない。

カイはアカバの親父に拾われた身で重労働からは逃れられていたが、食事の貧しさは変わらなかった。軍事国家タラークでは、労働階級に出世はない。


カイの何気ない言葉にメイアは一瞬不憫げな表情を浮かべたが、カイ本人に気負った様子はないのでそれ以上何も言わなかった。


「それで、相談というのは何だ?」

「お前の予定を聞きたい」

「……何故お前が、私のスケジュールを気にする?」

「母艦の調査は一通り終わったのに、なし崩し的に一緒の部屋で寝泊まりしているのが気になっている」


 終わったと言ってはいるが、カイ達の調査が終わったというだけで母艦での作業そのものは今も急ピッチで進められている。

カイ質の調査結果を元にマグノ海賊団の非戦闘員が動員されて今、母艦内の各施設を調査・分析を行い、機能を発揮すべく改善作業を行っている。

作業フェーズが次の段階へ移行したので、カイ達の仕事はひとまず終了――なのだが。


母艦を宿泊先にしているカイ達とは違い、メイアはニル・ヴァーナに居住しているのにまだ同じ部屋に滞在している。


「特に迷惑をかけたつもりはないが、なにか問題があるのなら言ってくれ。改善する」

「肝心の男女同居について、リーダーとして何か問題には感じないのか」

「私一人ならともかく、ミスティもいる。それにお前達を知るいい機会でもあるからな」


 カイ、バート、ドゥエロ、ミスティ、メイア。今この五人が同じ空間で寝泊まりしている状態。たまにお頭や副長との打ち合わせ等で、ニル・ヴァーナを行き来している。

異星人であるミスティは別にして、メイアは手荷物一つで同居している状態。元々母艦が広大な事もあって、スペースによる手狭はない。

ただ男と女という生態の違いはそのまま文化や価値観の違いを生んでおり、倫理的な面で問題視出来なくもない。カイもその点は気になっていた。


今特に破綻していないのは、カイ達男三人もメイア達女二人も、私生活では簡素に過ごしているからだ。プライベートをあまり重視していないから成り立っている。


「何だ、相談というのはその事か。まさかスケジュールを各自把握して、生活を分けるつもりなのか。
問題も起きていない今の生活状態では、無駄な論議にしかならないぞ」

「お前が問題視していないことを前提に、この相談をしたかったんだ。
今後もしばらく同じ空間で生活を共にするのなら、いっそ俺とお前で仕事をしてみないか?」

「……私とお前の、二人で?」


 コーヒーを飲む手を止めて、メイアはカイを一瞥。忌避感はなく、むしろ興味深そうに対面の相手を見つめている。

見つめ返すカイに、特別な動揺はない。だがメイアと改まって二人で静かに語り合うことが少なかったので、少し居心地が悪いのも感じていた。

男にはない美しさを持つ女性を前にして、カイとしても当惑はあった。


「連携して今まで仕事を行ってきてなかっただろう。赤髪もようやく新米リーダーとしてモノになってきているし、仕事も任せられる。
だからヴァンドレッド・メイアの操縦訓練や、あのスーパーヴァンドレッドの試験運用等を進めていきたい」

「なるほど、私も前々から気にかかってはいた。お前とのチームワークも構築出来つつあったので、より深く練度を高めるのは悪くないな」


 そしてそれは、メイアも同じだった。カイという一人の人間に注目していたのは最初から、その感情に特別な変化が訪れたのは最近だった。

今までは注視していたのは警戒心だが、今は期待を持って注目している。パイロットの実力のみならず、自分にはない考え方や価値観が気になっていた。

だからこそ今、同じ生活を共にしている部分もある。同じ空間で少しでも長く過ごしていれば、新しい発見があるかもしれない。


カイもメイアも気持ちを同じくして、見つめ合っている。


「決まりだな。今後しばらくはスケジュール感を共有して、職務を行っていこう。こうして朝二人で話して、スケジュールを決めていかないか?」

「いいだろう。共に助け合い、力を高めていこう」


 微小を含んだメイアの快諾に――内心、カイはほくそ笑んでいた。


スケジュールの共有となれば、当然だがメイアのスケジュールは完璧に把握できる。杓子定規な彼女が、スケジュールを破ることは絶対にない。

共有して行動を行っていくということは、常に目の届く範囲に本人がいるという事。監視するには、打って付けだった。

孤高を望む彼女が、自分のスケジュールを打ち明けられる。その意味が示すのは、たった一つだった。


他人に見せられないスケジュールは、彼女にはない。つまり――


(やはり自分の誕生日には気付いていないようだな、青髪。くっくっく……予想通りだ)


 メイアの気持ちも知らぬままに、カイは自分から女性を自分の空間に招き入れた。

招き入れて、しまった。 























<to be continued>







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