ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






LastAction −極秘−








 地球より奪取した母艦のシステムが初期化され、無人兵器製造並びに運用、各施設の詳細把握と機密所持の調査。その全てが完了するのは、まだ時間が必要と判断された。

ここ数日のカイ達の働きにより作業工程の基礎段階は概ね終了しているが、母艦の全てを掌握するには時間がかかる。理由は至極シンプルに、構造の広さであった。

把握するのに時間と人手がかかるというだけで、作業そのものは単純。難しい部分はパルフェ達が全て行っており、後は膨大な単純作業のみだった。

故郷への旅はタイムリミットがあるのだが、カウントは母艦の撃破と奪取で大幅に遅らせられている。主力を二隻も失った挙句、その一隻は敵側に奪われてしまったのである。

刈り取り作戦を決行する地球は傲岸不遜に人間を駆逐しているが、戦力バランスが崩れた以上は強行軍が行えない。中止にはしないだろうが、無理な強行が行えなかった。


この与えられた猶予に、マグノ海賊団は戦力強化と陣営調整を行うことを決定した。


「つまり、俺達男は暇になったということか」

「仲間はずれじゃないのは救いだけどね。ニル・ヴァーナの大掃除と全体改修工事、母艦の運用及び改築作業を行うんだってさ。
女性には僕達男には見せられないものが多いらしいからね、作業は手伝わなくていいんだって」


 厳密に言うと、今回の大規模作業は非戦闘員全員が行う事となったのである。毎日最前線で戦う彼らを労って、彼女達が嘆願を申し出たのである。

非戦闘員とて海賊達、決して毎日遊んでいる訳ではない。通常業務に危険性は少ないが、宇宙船での生活を支える上で彼女達の存在が必要不可欠である。

ただ彼女達も命を削って戦っているカイ達に対して、共に戦うことは出来ない。今回の陣営立て直しは彼女達にとっての本懐であった。


カイ達も、蛮型やドレッドも、ニル・ヴァーナも傷付いている。来るべき決戦に備えて、今は休むべきだと訴えていた。


「ありがたい申し出じゃないか。お前だって操舵手としてここのところ休暇も与えられず、働いていたんだろう。
転職活動とかかましていたくらいなんだし、今は休めよ」

「僕だって休むつもりだったよ。言っただろう、相談がある――正確に言うと、相談を受けた」

「誰に?」

「ミスティだよ。あの子、フリージャーナリストとか名乗っているけど、今はイベントクルー見習いとして働いているだろう。
非戦闘員である女性達から直々に、相談を受けたそうだよ。で、僕達にも手伝って欲しいんだって」


 溜息を吐くバートの言葉に、カイは苦笑いした。女性陣がミスティに相談したのは恐らく、異星人ならではの知恵を頼ってのことだろう。

そして肝心のミスティは相談内容に困り果てて、男達に手伝いを願った。何だかんだ言ってもミスティは同じ女性よりも、むしろカイ達男陣営との方が交流は深い。

カイの承諾によりバートの案内で、別室に移動。密談するのに相応しい人の気配のない部屋には、バート達調査チームの面々と相談者のミスティ、同じ男のドゥエロが揃っていた。


何故かソラも同席しており、カイの存在を確認した途端頭を下げて、当然のように彼の隣に着席する。ユメは膨れっ面をするが、同じチームのシャーリーやツバサを並んで座る。


「全員揃ったわね。いい? これは人類存亡をかけた、重大なミッションよ」

「何故人類の存亡がかかった作戦をまずお前に相談したんだ、その女共は」

「あたしが頼りになるからでしょう」

「無駄な行動力を発揮する点を考慮すれば、頷けなくもない」

「引っ叩くわよ、あんた」


 明らかにカイへの危害を示唆しているが、ソラもユメも何一つ口出しはしない。恒例行事、いつも出会い頭に口喧嘩している二人。挨拶のようなものだった。

最初こそユメがムキになって殺す発言を繰り返していたが、今では慣れっこになってしまっている。手出しすれば容赦しないだろうが、今は問題ないと見なされている。

基本的にカイには激甘な二人ではあるが、ようやくというべきかそうした人間の機微に気付けるようになってきていた。


彼女達にも、仲間や友人が出来たことが大きい。


「さて、問題です。近日、世界的に祝福されるべき記念日があります。それは何でしょう?」

「何だ、その唐突な質問。お前の世界観が分からん」

「冥王星の祝事――ではないのだろう。はて、何かあっただろうか」

「僕達タラークの記念日といえば建国記念日だけど、女の子達には関係ないし――あっ、メジェールの建国記念日か!」

「ブー、違います。スケールが小さいわ」

「世界的とか言っておいて、一国の建国を袖にするとはふざけた奴だな」


 ミスティの思わせぶりな質問に面倒見のいい男達三人が答えるが、これまた思わせぶりな態度で否定される。男三人揃って、首を傾げる。

タラークの住民には分からないとなれば、各それぞれの文化と価値観を持つ者達が答えるしかない。


子供は、クイズが大好きなのである。


「分かった、ピョロがピョロUのパパになった日だピョロ」

「事実無根な記念日なんて存在しないわ」

「はいはーい、ユメがますたぁーに名前をくれた日!」

「何であたしが知っているのよ、それを」

「馬鹿だな、てめえらは。アタシと同じく、お偉いさんに出世したんだよ」

「出世記念日って、何か苦労が滲んでいるわね……」

「分かった。きっとお友達が出来た日なんだよ!」

「泣きたくなるからやめて」


 ツバサやシャーリーまで喜々として回答するが、どれも的外れ。それでもそれなりに面白い回答だったのか、ミスティは気を良くして司会者顔をしている。

すっかりクイズ番組になってしまっているが、こういうやり取りもまた仲がいい証拠なのだろう。


正解に近しい回答を行ったのは、理性的なソラであった。


「人間が記念する日に、誕生日が挙げられます」

「おっ、正解!」

「コールドスリープしていた分際で、誕生日なんぞ祝うのかよ」

「あたしじゃないわよ。あたしの最愛の人である、お姉様の誕生日!」


 ――衝撃的だった。カイ達はおろか、ソラやユメまで絶句してしまっている。


ミスティが慕っている人といえば、メイア・ギズボーン。彼女に、誕生日というごく当たり前の記念日が存在していた。

メジェール人とはいえ人間、誕生日があって当たり前なのだが、メイアという凛々しきパイロットに俗世間的な記念日が結び付かなかったのだ。

全員が驚きの顔をしている中、ミスティは熱く盛り上がっている。


「お姉様の誕生日を皆で祝いたいと、アタシに直接相談を持ちかけてきたのよ。素晴らしい人選だわ、あの人達はよく分かっている。
お姉様に相応しいこのあたしこそが、お姉様の誕生された記念日を祝うのよ。ほら、拍手はどうしたの!」

「お、おう……」

「お、おめでとう……」

「よかったじゃないか……」


 ミスティの気迫に押されて、男三人が先導で拍手し、他の面々もそれぞれ乾いた拍手を打っている。適当だが、本人はご満悦だった。

自分にも他人にも厳しいメイアはプライベートでの交流はあまり行わないが、職務熱心で仲間思いな彼女はクルー達から畏敬と尊敬を抱かれている。

個人の誕生日に全員で祝いたいとするその気持ちこそ、人望の表れである。どれほど階級の高い人でも、義務でなく好意で行われる誕生日会というのは少ない。


素晴らしいことではあるのだが――相談とは、何だか結び付かない。


「それで、何でお前に相談なんてして来たんだ?」

「分かっていないわね、あんた――誕生日といえば、サプライズでしょう!」

「記憶喪失の人間にどんな常識を期待しているんだ、お前」


「あっ、そうか……ごめん。サプライズパーティという催しがあって、本人には当日まで秘密にして誕生日会を企画するのよ。
当日全員で本人を囲んで、お誕生日おめでとうとお祝いして驚かせるのが趣旨よ」


「ほー、なるほどな。確かにそれは、企画する側も面白そうだ。だから異星人であり、イベントクルーのお前に依頼が来たのか」

「そうよ。お姉様に秘密にするのは心苦しいけど、当日まで内緒にして派手に盛り上げるわよ!」


 大好きな人の誕生日を、素敵な思い出とする。この企画はお祝いする本人にも喜ばれ、企画する側も満足できる一挙両得の企画なのである。

ミスティがカイ達に相談したのは"男や異星人"が女を祝うという、別の意味でのサプライズも狙っている為だ。生まれた星も、性別も、何もかも違う人達が、誕生日を祝うサプライズ。

そして何より、この場にいる誰もがこうした企画が大好きな事。男達三人は勿論、子供達も秘密のドッキリ企画に早速ワクワクしていた。


しかし当然、サプライズパーティーには大前提が存在する。


「話は分かったがこの企画、本人が誕生日だと知っていればサプライズにはならないのではないか?」

「うっ――それは」

「多分、大丈夫だよ。あいつ、自分の誕生日なんぞ欠片も興味がねえだろうから絶対忘れている」

「……なるほど。ごもっともではあるが、悲しい話だな」


 あのメイアが自分の誕生日を気にするようには、到底思えない。そこまで彼女が自分を愛しているようには、到底思えなかった。

他人だけではなく、自分にも厳しい女性。節制を心掛け、自己研磨に励んでいる人間に、己が生まれた日への愛着があるようには見えない。

それどころか、自分の年齢にすら無頓着な可能性が高い。誕生日が来ても、平日のようにごく当たり前に過ごすだろう。


ドゥエロの言う通り、とても悲しい話だった。


「だからこそ、あたし達で盛り上げるのよ! 絶対の絶対、忘れられない日にしてあげましょう!」

『おー!』


 こうしてミスティが団長の元――空前絶後、類を見ない異星人達による誕生日パーティが決行されようとしていた。

――ただし。



「あのメイア・ギズボーンに、気付かれないように決行するのは難しいのではありませんか、マスター?」

「――あっ」



 本人に気づかれれば、サプライズにはならない。その時点で任務は失敗、自分達の敗北となってしまう。

今度の敵は地球ではない。メイア・ギズボーンという、最強の味方であった。























<END>







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