ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






Action27 −博物−








 不完全生体区画、地球の恐るべき狂気が秘められているフロアを発見したメイア達調査チーム。子供も大人も等しく、その狂気に身を震わせる。

常識の根幹を揺るがす狂気に触れた彼らは独断での深入りは避けて、明日マグノ海賊団の最高幹部達を急遽招く事となった。言葉での報告では到底表現できない。

深入りを避けるという点では一致したが、彼らの目的はそれぞれ違う。ミスティにとって地球の秘密こそ最重要だが、カイ達が知りたいのは母艦の秘密だ。


"刈り取り"そのものには触れず、彼らはその日不完全生体区画を探索する事にした。


「まるで博物館か何かを見学しているみたいだね」

「博物館?」

「――ああ、そうか。カイは労働階級だから、その手の施設の見学は禁止されていたんだったね」

「? どういう意味だ、カイ」


「軍事国家のタラークでは、労働階級にあたる三等民は娯楽施設の立ち入りは禁止されていたんだよ」


 博物館を知らないカイにタラーク人のバートは納得したが、メジェール人のメイアには分からず聞き返してくる。こうした社会制度の違いは、常識の違いとなる。

カイとバートの関係は既に階級の壁などありはしなかったが、他人同士だった過去の関係までは変えられない。

博物館を娯楽と呼ぶかどうかは意見が分かれるが、少なくとも三等民が自由に出入り出来る施設ではなかった。

タラークの階級制度の厳しさはメイアは呆れるが、メジェールとて貧富の差は強かったので何とも言えない。


「見栄えのする施設でもねえけどな、此処」

「入館料を取られないだけ、まだマシじゃないかな。無料でも好き好んで来たい居場所じゃないけど」

「馬鹿な事を言い合っていないで、少しは調査に取り掛かれ。私はミスティと一緒に、保管庫を調べてみる」

「その辺は明日、バアさん達と一緒に調査するんじゃなかったのか」

「開封はしないさ。正確に言えば保管庫の中身ではなく、保管庫そのものを調べるのだ。設備の状態を知っておくのも重要だからな」

「ああ、なるほどな」


 刈り取りの目的は人類の臓器、刈り取った臓器は再利用するので保管が重要となる。保管する上でどのような施設を用いているのか、調査を行う必要がある。

メイアは保管庫の調査をカイ達に強要しなかった。立ち入るのは覚悟が必要、中身を見ずとも安易な興味で触れていい施設ではない。

カイには地球を止める使命感を持ってはいるが、メイアやミスティとは毛色が違う。それに何より、カイには家族同然の同行者がいる。


ズボンを掴んでいるツバサを見下ろすと、実に嫌そうな顔で首を振った。


「肉なら食えるものがいい。女を気取るつもりはねえけど、そんなものをアタシに見せるな」

「やれやれ、注文の多い奴だな。じゃあ、女の子にも満足して貰える食料でも探してみるか」

「兵器が載せた船だろう、食い物なんてあるのかよ」

「地球人だって飯を食わないと死んじまうだろう。連中の星はかなり荒れ果てているみたいだからな、食い物に困って略奪している可能性はある。
此処は保管には最適だからな、奪った食い物をたらふく貯蔵しているかもしれないぞ」

「早く言えよ、それを! ほれ、さっさと探すぞ!」


 興奮して突っ走るツバサに連れられて、カイも探索開始。カイの言い分を聞いていたメイアは、半ば感心混じりの苦笑を滲ませる。

カイの言い分も一理ある。彼らの最重要は臓器だが、彼らもまた人間だ。地球の荒れた環境を考えれば、食料の略奪も当然考えられる。

常に物資に悩んでいるマグノ海賊団にとって、食糧問題は重要だ。貯蔵されていれば、しめたものだ。


その言い分は理解できるのだが、カイは多分ツバサを此処から遠ざけたかったのだろう。家族が出来て、また変わったのかもしれない。


「だったら僕は、運搬車の整備をしておこうかな。調査した物とかも持ち変えるだろうしね、運べるように段取りしておくよ」

「おにーちゃん、わたしも手伝う!」

「シャーリー、君はなんていい子なんだ! 君のような家族を持てて、僕は最高に幸せだよ!」

「お、大袈裟だよ、おにーちゃん!? えへへ、でもありがとう!」


 家族が出てきて変わったという点で見れば、バートはより顕著だ。君子危うきに近寄らずの精神は、家族の為に役立っている。

シャーリーが良い子なのは間違いないが、あの子が良い子でいられるのはバートという存在があってこそだ。この二人は支え合って生きている。

自分達が生きていく上で必要な存在、それを家族と呼ぶのであれば血の繋がりがなくても、バートとシャーリーは家族であった。


一方、家族であろうとスキンシップだけを求めない。


「うーん、ますたぁーと一緒に行動したいけど、人間の食べ物に興味はないし――どうしようかなー」

「暇ならピョロを手伝ってほしいピョロ!」

「なんでユメがアンタなんか手伝わないといけないのよ、ベーだ」

「この施設のデータを調べて見るんだピョロ、大発見したらカイもきっと大喜びだピョロよ」

「それを早く言いなさいよ、馬鹿!? 仕方ないから手伝ってあげる、ユメに感謝しなさいよね!」

「ピョロが活躍したら、ピョロUもきっと喜んでくれるピョロ〜」


 家族と一緒に頑張るのではなく、家族の為に敢えて別行動して貢献する。ユメとピョロはお互いの家族を思って、行動に移した。

二人の家族に対する思いは人一倍強く、依存度も相当強い。共に行動できない辛さを感じてはいるが、役に立ちたいという気持ちが今は強かった。

その環状の芽生えは、彼らが人外であることを考慮すれば奇跡的と言っていい。だからこそ、二人が輝いて見えるのだ。


まるで、生き生きとした人間であるかのように。


「アンタはミスティと一緒に行かないの、ディータ?」

「ジュラこそリーダーと一緒に行動しなくていいの?」

「……」

「……」


「……ジュラ、血とか見るのは苦手なのよね」

「……ディータも、内臓とかそういうのはちょっと」


「面白くも何ともない施設だけど、一応地球から来た船なんでしょう。地球ならではの変わった品とかないのかしら」

「珍しい宇宙人の物とかあるかもしれないね。探してみようよ、ジュラ!」


 探索というよりは、探検であった。持て余したジュラとディータは各自の興味に惹かれて、不完全生体区画をくまなくチェックしていく。

彼女達にとって不完全生体がどうとかではなく、地球そのものへの感心が強い。恐怖や嫌悪も多大にあるが、好奇心もまた強かった。

こうした好奇心による探検は、ある意味義務感の探索とは別の観点での発見があるかもしれない。本人達は自覚していないが、発見の可能性は大いに高まる。



――母艦の根幹に触れたドゥエロ達分析チーム、地球の根幹に触れたカイ達調査チーム。



彼らの手によって、地球の全てが奪われようとしていた。























<to be continued>







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