ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






Action22 −解剖−








 バートが引率する現場案内チーム、カイとミスティが案内する調査チーム。それぞれが行動に移す中で、いち早く到着していた分析チームがデリ機に乗って出発している。

地球の母艦は惑星規模戦闘が行える巨大戦艦、全長はニル・ヴァーナを遥かに凌駕する。一つの町くらいは軽く収まる規模を誇っている。

徒歩で歩き回っていては何日もかかってしまうので、艦内は基本的に宇宙船で行動しなければならない。デリ機は母艦内へと乗り込んでいた。

デリ機はガスコーニュが操縦、レジクルー入りしたバーネットが周辺警戒。派遣された分析チームが各所を探っていき、要所を見極めてドゥエロが案内を行っていく。


彼らの目的は無人兵器と母艦の調査――本命は、システム心臓部の分析である。


「うん、ウイルス君は今もバッチリ効いているね。セキュリティも完全に停止しているから、堂々と心臓部まで行けるよ」

『システムにアクセス。行動する無人兵器もありません』

「残念じゃ。もしも敵が残存していれば、儂が整備したSP蛮型の新性能を思う存分確かめられたというのに」


 分析チームはチームリーダーのパルフェを筆頭に、ソラやアイが有能な働きぶりを見せている。デリ機のシステムを用いて、可能な限り安全に事を進めている。

地球の科学力は常識を遥かに超える。メジェールやタラークの技術では太刀打ち出来ず、こうして敵の母艦まで分捕っている。

母艦を停止できたのも冥王星が開発したウイルスの効果、ミスティやカイがいなければとうの昔に全滅していたであろう。


その功労者達は大した自覚もなく、他のチームの案内をしているのだから何とも微笑ましい。


「これほど有能なスタッフを揃えているのなら、私の出番はないかもしれないな」

「ドクターには悪いけど、医者の面倒がないってのはアタシらにとってはいい事だよ」

「ふっ、違いない」


 ガスコーニュの言い様には、ドゥエロも苦笑するしかない。医者が必要なのは緊急事態、暇であることは平和な証であった。

ドゥエロには母艦の案内役という重要な役目があるのだが、与えられた役割だけで満足するような男ではない。

それはドゥエロに限った話ではなく、カイやバートも職務や立場を超えて活躍している。だから彼らは、仲間として皆に慕われるようになった。


男とは何かと面倒が絶えなかったバーネットも、今は同じ船の中で平然としていられている。


「ドクターは、この母艦で今寝泊まりしているんだよね。実際、住み心地はどうなの?」

「不便はない。日々の暮らしに事欠く面も多少はあるが、私には二人の同居人がいる。彼らがいれば、私は生活を楽しめる」

「……こう言っては何だけど、ドクターって意外と友達を大切にするんだね」


 バーネットだけではなく女性陣全員から不思議そうに見られるが、ドゥエロは口元を緩ませたまま特に語ろうとはしない。

友人、タラークには一人も存在しなかった。エリート中のエリートだった彼に臆して、誰一人彼の孤高に踏み込めなかったのだ。

カイやバートは一般的な視点で見れば、劣等生の部類に入る。だがドゥエロにとっては、バートやカイは無二の親友であった。


彼らの代わりは世界中の誰にも務まらないと、今では断言できる。


『ドクターのお気持ちはよく分かります。マスターは素晴らしい御方ですから』

「まっ、ソラちゃんの賞賛はいつも通りとして――母艦での生活という面ではどうなの?」

「私なりに調べてみたのだが、戦艦に特化された面が強い。だが、人間の住めるスペースもある程度は用意していたようだ」

「刈り取りをする地球が、人間の生きる場所を?」


「――言い方を変えると人体、だな。彼らにとって、我々は臓器の塊にすぎない」

「――なるほど、部品の保管庫だね」


 医者らしい表現と見解に、同じく機関士らしい表現でパルフェが嘆息する。分析チーム一同も不謹慎であるが咎めず、押し黙るのみだった。

考えたくもないが、海賊であれば想像出来る話。単純に奪うだけではなく、奪ったものは有効的に活用しなければならない。新鮮に保存しなければならない。

特に臓器であれば、保存して鮮度を死守しなければならない。腐るどころか、傷めただけでも致命的なのだ。まるで人間のように優しく、丁重に扱わなければならない。


この話題はここで途切れる、彼らの本分ではない。調査はメイア達が行う、この物語はこの先メイア達が紡いでいくだろう。真実を暴くためにも。


彼らの役割は人間ではなく、機械の分析。その生命線である心臓部へと、デリ機を走らせる。一度行った道だ、道筋は覚えている。

あの時の偶発的な事故でセキュリティは一時遮断されていた、敵の懐へ苦も無く飛び込めると言うのは妙な気分にさせられる。



そして再び運命の場所、母艦の心臓部へ到達した。



「おお、ここでスーパーヴァンドレッドが誕生したのじゃな。この数々の破壊の痕、激しい戦闘が行われたようじゃのう」

「よく生き残れたものだと、我ながら今でも感心しているよ」

「何度も死にかけたものね、アタシ達」


 どこかはしゃいだ様子を見せるアイに、バーネットやガスコーニュが嘆息して出力を着陸させた。空調は十二分に利いており、生身で降りられる。

偽ニル・ヴァーナとスーパーヴァンドレッドの激闘は長引かず、一分足らずで終わった。性能差は圧倒的で、苦も無く秒殺できたのだ。

敵が弱かったのではない、新型機が強すぎたのだ。母艦相手でも戦えると、期待を高鳴らせる戦力であった。


アイが周辺状況によりスーパーヴァンドレッドの性能を確認、バーネットとガスコーニュが当時の状況を説明。


残る分析班は機材などを持ちだして、ドゥエロの案内の元システム心臓部へと移動。あらゆる機材や知識を活用して、作業にとりかかる。

心臓は今も停止しているが、人間のように鼓動が止まっても死ぬのではない。機械の便利な点は、動き出せば生き返る事にある。


とはいえ、ただ動かせばいいのではない。単純に母艦を再起動させると、また敵として襲い掛かってくる。


「どうするつもりだ。母艦を活用するにはウイルスを除去しなければならないが、除去すると母艦が復活する」

「ウイルス除去はやり方を知っているから出来るんだけど、単に除去するつもりはないの」

「と、いうと?」


「システムを"初期化"する」


 パルフェの提案に、ドゥエロは息を呑んだ。システムを初期化すれば、保存していたデータやカスタマイズ設定等、全てが消えて無くなってしまう。

システムの初期化はそれこそ、人間にとっての死と同様である。地球の母艦を活用する為に、地球の母艦を殺すのだと宣言してしまった。

ドゥエロの逡巡を理解した上で、パルフェはほんの少し寂しげに微笑んだ。


「可哀想だけど、この子は地球の狂気そのものなの。生まれ変わらせてあげなければ、この先もずっと人を殺し続ける。
母艦の運用に必要な設定はバックアップを取るけど、この子の根幹は私の一存で消すつもりだよ。わたしはこの子を殺し、この子を生き返らせる。


ドクター、こんなわたしを許してくれる?」


 ドゥエロは、胸を突かれた。システムの初期化はエンジニアにとっては苦渋の選択であり、それでいて一度は必ず経験する通り道である。

生命などという概念は、システムにはありえない。だが機械をこの上なく愛するパルフェにとって、システムは命ある存在に等しいのだ。


生命の大切さを知るドゥエロに、パルフェは許しを請うている――医者であるドゥエロにしか共感できない、機関士の苦悩であった。


「わたしでよければ、看取らせてくれ」

「……ありがとう、ドクター」


 ドゥエロの飾らない言葉に、パルフェは瞼を震わせた。他にもやり方はあったのかもしれない。けれどパルフェは敢えて最も効率的で、最も残酷な手段を選んだ。

地球の狂気を丸ごと消し去って、新しい価値観と命令を与える。その時初めて、この母艦は生まれ変わるのだ。生みの親を殺す、兵器として。


残酷であった――そして必ず、やらなければならないことだった。



"奪う"とは、そういう事なのだ。だから、海賊はいつの時代でも嫌われる。























<to be continued>







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