ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






Action7 −温泉−








 ニル・ヴァーナ艦内で起きた一連の出来事の全報告が全く同時刻に送られてきて、メインブリッジにいたマグノやブザムが頭を抱える結果となってしまった。

マグノ海賊団を統括する両名に本当の意味での休日はないにしろ、長期停泊中の現在打ち合わせも終わって、ゆとりある時間を送っていた最中だったのだ。

休暇が取れない自分達とは違い健やかな休暇が与えられている若者達が、落ち着きなく各所で問題を起こしている。若さというものを嘆くべきか羨むべきか、マグノは真剣に悩んでしまう。


ブザムも頭の痛さに顔をしかめているが、ともあれまずは緊急性の高い地点より対策に取り掛かる。


「お湯が出ている?」

『イエス、マム』


 クリーニングチーフのルカが頷くのを見て、ブザムは理解に及ばず首を傾げる。落ち着いた素振りだが、通信画面越しからは激しい噴出音が聞こえてくる。

同じ場所で作業していたであろう警備チーフの叫び声が、背景から木霊しているのが笑いを誘う。どうやら噴出そのものは、単純には止められないようだ。

このまま放置するとかつて瓦礫に埋まっていたカイ達の部屋が、今度はお湯に埋まる羽目に陥ってしまう。彼らの寝処探しは、延々と続くことになってしまう。


マイペースなルカの「ほうれんそう」は常に要領を得ないが、礼儀を逸しているのではない。問題が起これば、こうしてすぐ報告を行ってはくる。


「水道管が外れたと聞いているが、水道の元栓を閉められないのか」

『閉めているのに、この通り』

「何だと……!?」


 ルカはクリーニングの専門職、水仕事については清掃面のみならずあらゆる面に長けている。驚き慌てる警備チーフを尻目に、彼女は早速対処に取り掛かった。

水道管が壊れる事態は珍しいが、水道が壊れる事はたまにある。マグノ海賊団のアジトは隠密性に優れているが、機能面はあらゆる箇所で脆い。

隠れ家に一流の設備を求めるのは難しく、水道も間に合わせの上に多用される。蛇口が壊れたりして、水が止まらなくなる事もあったのだ。

その為修繕そのものの専門家ではないものの、水道の整備くらいは行える。今の事態は、行った結果なのである。


「つまり、水道管を外したことによる事故ではないと?」

『水道管を外した事がとどめとなったと思われる。元々問題のあった水道管をこれまでカイ達が使用し、無人兵器侵入による事故で欠陥が生じた。
その後改修はされていたが作業途中のまま長く放置していた為、再び欠落が生じたと思われる』

「やれやれ、メイアの懸念が現実となったね」


 耳を引っ張られて泣いているディータを連れて、マグノに大掃除の許可を求めに来たメイア。彼女はニル・ヴァーナ各所の問題点を洗い出し、放置されている現状を指摘した。

指摘自体は正しいが、珍しく鼻息の荒いメイアに気圧されつつもマグノやブザムが承認。再びディータを引っ張って、メイアはニル・ヴァーナの大清掃を皆に促した。

彼女はライフラインの欠陥を問題視していたのだが、その一つが浮き彫りになった形である。


水道管の故障、今現在使用されていない部屋の事故だが笑い事ではない。


「パルフェ達や整備の人間には連絡したのかい?」

『連絡済み。ただし修繕だけではなく、調査も依頼』

「調査……水道管の?」


『先程報告した通り、お湯が噴き出してる。温度も高く、匂いも妙。何か含まれているかもしれない』


「――なるほど、それで緊急の連絡か」

「ニル・ヴァーナはアタシらの海賊船と、男共の軍艦が合体したもんだ。カイ達の話だと、野郎共の軍艦は植民船が使用されているらしいからね。
この広い船の中、全部確認した訳じゃない。何が含まれているのか、分からないよ」


 ニル・ヴァーナのエネルギー源であるペークシス・プラグマも、軍艦の中で眠っていた。侵入した無人兵器の残骸、植民船時代の古びた物資類もある。混ざれば一大事だった。

ペークシス・プラグマ本体やニル・ヴァーナの覚醒により艦内も除染されてはいるものの、使用されていない倉庫類も多くあり、まだ整理されていないのが現状だった。

長期停泊中において艦内大掃除の提案は、思いがけず大掛かりかつ必要不可欠な作業となるかもしれない。推奨ではなく必須案として、命令レベルを上げる必要があるかもしれない。

そこまで考えて、ブザムは別の場所で発生した問題に直結する。ルカとの通信を終えた後、取り急ぎでかかって来ていた通信と繋げる。


「ピョロ、先程の緊急連絡について詳細を報告しろ」

『だからピョロは止めろと言ったのに、こいつらが好き勝手に穴を開けたせいで浄水管を壊したんだピョロ!』

『違うもん!? ユメが上手くやるって言ったのに、このポンコツロボットが力一杯持ち上げて壊しちゃったの!』


 ニル・ヴァーナ艦内を繋がる浄水管は、特別な役割を持つ。生活排水等を行う配管とは経路が異なり、ドレッドやSP蛮型を始めとするエネルギー系統の洗浄を行っているのである。

エネルギーの動力源はペークシス・プラグマの結晶、つまりペークシスより排出される不純物を洗い流して、浄水を行う配管。浄泉されて、エネルギーの可動が速やかに行われる。

この配管が壊れてしまうと、ペークシスの不純物が垂れ流しになってしまう。ペークシスは公害を生む結晶ではないが、それでも垂れ流していいものじゃない。


こっちもあっちも配管の破壊とあって、ブザムもマグノも顔をしかめる。


「それで、お前のところの倉庫内も水浸しということか。大掃除をしていて、余計なゴミを増やしてどうする」

『ベ、別に遊んでいた訳じゃないピョロ!? それに浄水管が壊れたのにも、ちゃんとした理由があるピョロ』

『そうよ、そうよ! ソラが勝手に自ぶ――ペ、ペークシス本体の出力を弄ったりするから!』

「……? ペークシスが何だって?」


『だーかーら、ペークシスのエネルギー出力を急に上げたりするから一時的に不純物が大量に排出されたの。
浄水管がちょっと壊れた程度ならすぐ修繕できたのに、不純物が爆発的に噴出したら止めるより前に溢れちゃうでしょう。

ユメ達は悪く無いわ、あの子が全部悪いの』


『ひとのせいにしてやがる。大人ってずりーよな、やだやだ』

『ツ、ツバサちゃん、聞こえるよ……』

『コラ―! リーダーの悪口、禁止―!!』

『わっ、追っかけてきやがったぞ!? 水道管の中に逃げろ!』

『えええっ、溺れる、溺れちゃう!?』

『お尻ペンペンしてやるぅー!』

『コラコラ、ピョロを一人にしちゃ駄目ピョロ!?』


「……逃げたね」

「……後で全員呼び出して、叱りつけます」


   つまり、同時期に各所で大量に排出した為に起きた噴出爆発事故ということだ。ペークシス・プラグマより排出された不純物が浄水管に大量に溢れ、水道管へと流れ出して噴出された。

水道管よりお湯が出たというのも頷ける。ペークシスの不純物はエネルギー物質だ、低温の浄水もエネルギー物質を洗浄すれば熱くもなる。

火傷する水温にまでならなかったのは、不幸中の幸いだろう。ただここまで順序良く壊れてしまうと、どこか一箇所の修繕では済まなくなる。


もはや清掃ではなく、改装になりそうだった。


「申し訳ありません、関係各所を問い質して早急に改修させます」

「そうしておくれ。ただ直すのにも時間がかかるだろうし、今噴出している液体を分析させるべきだね。万が一にでも有害だと大惨事になっちまう」

「了解致しました。まずはパルフェに依頼して、水質調査させましょう」

「本格的に休日返上となりそうだね……やれやれ」

「おや、肩凝りですか?」

「艦長なんてのは所詮座り仕事だからね、身体も固くなるさね」


 若干場を和ませるブザムの質問であったのに、思いの外嘆息気味にマグノは返答する。休暇が取れないと嘆いているより、休暇の過ごし方にもむしろ困っているようだ。

確かに全長三キロメートルとはいえ、船の中での生活なのに変わりはない。得には大きく伸びをして、開放感を味わいたくもなる。


マグノ海賊団の今の心配はむしろ、心身のケアにあるのかもしれない。そう思っていた彼女達にとって――



今回の事故はいわば、お宝発見であった。
























<to be continued>







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