ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






Action1 −戦後−








 マグノ海賊団の戦後処理は、常に慌ただしい。海賊家業では早期決着が鉄則、獲物を奪ったら即時撤退。この世の影から飛び出して、再び影の中に潜む。日陰の商売なのである。

タラーク・メジェールへ向かう旅が始まっても、変わっていない。常日頃地球の刈り取り兵器に狙われる旅では敵を倒し、一刻も早く故郷へ向かわなければならない。

時間に追われる毎日、人生にゆとりなどありはしない。のんびり生きていたら、すぐに死んでしまう。急き立てられているかのように、毎日を生きている。

宿命とも言えるその日々に、不満などはない。止まっていたら死んでしまうのだ、慌ただしくても生きていく。彼女達の生き方は、まさに生命活動そのもの。戦いも然りである。


ゆえに珍しく長期停泊が決まると、時間の使い方にすら困ってしまう。


「何だなんだ、お前ら。だらけた顔をしやがって」

「……ブリッジクルーってね、ずっと船が動いていないと地獄なの」

「忍耐が無さ過ぎる!?」


 カイがニル・ヴァーナのメインブリッジに訪れると、だらけきった空間が広がっていた。ブリッジ名物の三人娘が揃って、コンソールに突っ伏している。

一応休憩時間なのか、副長のブザムも取り立てて叱責はしていないようだった。常日頃油断できない状況下ではあるが、嵐が過ぎ去った後では宇宙の海も穏やかになるものだ。

休憩中でも背筋を伸ばして作業をしているのは、船医のドゥエロ。カイと同じくブリッジへ訪れた一人なのだが、空いた時間を使って作業をしているようだ。

勤勉な労働ぶりにカイは呆れたが、よくよく考えると余暇の過ごし方とも言えるかもしれない。遊ぶか、作業をするか、人それぞれである。


作業が一段落ついたのか、ドゥエロが顔を上げる。


「来たか、カイ。君も今日は休暇のようだな」

「戦後処理で色々大変だったからな、今日くらい休ませてもらわないと。身体やら、機体やら、隅々まで検査させられたからな」

「"スーパーヴァンドレッド"なる現象で、傷付いた身体が蘇生したのだ。大事を取って調べる価値はある」

「……せめて患者の前では必要があると言ってくれよ、そういうのは」


 人機合体、スーパーヴァンドレッド。あの究極合体が起きた現象は母艦内であり、当事者のみでしか実体験していない。帰還後判明して、ドゥエロやパルフェに追求されたのだ。

人間の身体も機体のボディも、完全に治されている。ジュラにいたっては瀕死状態だったのに、蘇生したのだ。機体も、人間も、調べ尽くして当然だ。何があるか、分からない。

ただドゥエロの場合心配もあるが、知的好奇心旺盛なのも事実だ。念入りに検査されると、人体実験でもされている気分だった。


メインブリッジの通信モニターが展開されて、操舵席のバートが顔を出す。


「あれ、お前も今日は休暇だろう。何で停泊しているのに、操舵席に入っているんだ」

『君からもドゥエロ君に言ってくれよ。ニル・ヴァーナとペークシス・プラグマとのリンク率が上がって、ドゥエロ君に分析させられているんだ』

「なるほど、さっきまでやっていた作業はそれか」


 人機合体の影響は単に、カイ達やドレッド等の機体だけではない。全ての事象の鍵となるペークシス・プラグマにも、大きな変化が起きていた。

ヴァンドレッドなどの超常現象が起きる際は常にペークシス・プラグマが関係していたが、今回の人機合体では驚くほど安定してエネルギーを出力していたのである。

爆発的なエネルギーを見事な高密度で安定させ、エネルギー率の効率を飛躍的に向上。動力としているニル・ヴァーナの機能も、格段に上昇していた。

操舵席を通じてリンクしているバートにハッキリとしたエネルギーが感じられ、彼の操作性も目を見張る程高まっている。


「休みの日でも仕事が忘れられないというのは、どうかと思うわよ。切り替えができない男って、女の子に嫌われるわ」

「なるほど、実にタメになる意見だ。感謝する、ミスティ」

「そ、そう真面目に受け取られると、返事がしにくいけど……」


 席に座って畏まるドゥエロとは対称的に、ミスティはブリッジの床に三角座りしていた。だらしないの一言だが、スカートを守っているあたりは女の子であった。

現在暇なクルーは多いのだが、ミスティの場合特殊である。イベントクルー見習いではあるが、マグノ海賊団への入団は拒否している彼女。命令する権利も、命令される義務もない。

ならばやることがないのかというと逆で、彼女は自ら率先して現場に乗り込むハードワーカーだ。明確な目標がある女の子は、男顔負けに活動している。

そんな彼女だが毎日の活動をぶっ続けには出来ず、さすがに今日は休んでいる。


この四人が本日、メインブリッジに呼び出された。


「全員、揃ったな。休暇中に呼び出して、すまなかった」

「お前さん達は売れっ子だからね。休みの日でもなければ、集められないんだよ」


 副長のブザムとお頭のマグノが、揃って声をかける。重鎮二人が出揃ったとあっては、四人も不真面目な顔は出来なかった。

カイやミスティは自由な立場だが、バートやドゥエロは専門職がある。船医に操舵手、どちらも最重要な役職であり、勤務時間も不規則な激務である。

交代制は採用されて入るものの、代打は基本的にきかない二人。コンピューター任せとなってしまうので、緊急時は本人が必ず呼び出されてしまう。

となれば休暇中も完全にのびのびとは出来ず、休暇の日時も不規則になりがち。男達がたまに揃って喋れるのは、寝る前くらいしかなかった。


だからこそ全員休暇を与えられた上での、呼び出しである。勿論休暇なので、業務の話ではない。


「この面子が集められたということは――」

「前々からうるさく言われていた、部屋割りの話だよ」


 やったー、と男女四人が手と手を取り合う。マグノ海賊団にとっては極めてどうでもいい話であり、当事者四人には切実な懸案である。

男三人は元々捕虜として扱われており、当初あてられた部屋はなんと監房であった。出入りこそ自由だが、部屋の環境は最低最悪であった。

それでも住めば都というべきか、男所帯としてはそれなりに馴染んで、気に入ってもいた。思えば彼ら三人がすぐ仲良くなったのは、こうした隣部屋同士であったからでもあるだろう。


だが、破壊された――完膚なきまでに。


前回の母艦戦で男女同盟が決裂したため戦力が大幅に低下、無人兵器の侵入まで許してしまい、監房が踏み荒らされてしまったのだ。

ドゥエロ本人も巻き込む大惨事となってしまい、監房は瓦礫の山。悲惨極まりない状態で、男三人は荷物まで埋まって丸裸で追い出された形となった。

ミスティは漂流者であり、一応部屋そのものはあてがわれていたが、客人扱いに近い。マグノ海賊団入りは拒否しているので、半ば客室に近かったのだ。


「工事だの何だので、結局後回しにされていたんだよな。ほんと、辛かった」

「私は特に問題を感じなかったのだが」

「ドゥエロ君は医務室があったからね……僕、君のことはすごく尊敬しているけど、人体模型と並んで寝るのはどうかと思うよ」


 マグノやブザムも、別に意地悪で後回しにしていたのではない。最優先事項が多すぎて、本当に後回しにせざるを得なかったのだ。

思えば母艦戦闘後は紅い光対策にミスティの漂流、停電騒ぎにエズラの出産、病の星にミッション、極めつけは母艦との戦闘と、休む間もなかった。

こんな状況で工事も進むはずもなく、カイ達は日々寝所を探して移動していたのだ。


「そういえばあんた達、今まで何処に寝ていたの?」

「格納庫で寝泊まりしたり、女のところに転がり込んだりしてたな」

「パジャマパーティーに参加させてもらったり、キッチンで過ごしたこともあったよね」


「何で風紀や衛生上の問題にならないんですか!」

「す、すまない、本当に後回しにするしかなかったのだ」


 珍しく、副長が怒られてしまっていた。もっともこんな現状が発覚したのは、つい最近である。何と、メイアまでカイやバートの寝泊まりを黙認していたのだ。

男女関係においてはまだまだ素人な両者、男と女が揃っても友達であれば単に盛り上がるだけ。遊ぶ半分であれば、仕事ではともかくプライベートにまで口出しはしない。

ミスティが咎めるのはあくまで、男女が共に住む環境での感覚である。ブザムは大人なので、それとなく感覚でわかってはいた。


マグノは理解者なので、ニコニコしているだけだ。


「それで、新しい部屋は何処なんだ?」

「僕、次は大きい部屋がいいな!」

「研究資材を出来れば運び入れたい。適切な広さのある部屋を希望する」

「あたし、夜中も結構作業とかするので、周りが静かな環境がいいかな」


「つまり――新しくて、大きく、適切な広さがあって、周りが静かならいいんだね」


『え……?』



 ――四人揃って、嫌な予感がした。

























<to be continued>







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