ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 19 "Potentially Fatal Situation"






Action21 −復讐−







 ――終戦。作戦は、完了した。


カイやメイア、ガスコーニュ達の生存。刈り取りの主力である、地球母艦の沈黙。その全てをマグノ海賊団側が確信したのは、全てが終わった後であった。

繰り広げられていた攻防戦において、敵側の無人兵器が突然停止。一瞬罠ではないかと警戒するが、ガス星雲を漂うだけ。強烈な磁場の中で無防備なままの状態となり、次々と自壊していく。

全員が固唾を呑んで見守る中、何事も無く、何も起こらず。それでも警戒を解かないのは、前回の教訓があってこそ。あの時は最終的に同盟軍の協力を得て、ようやく破壊出来たのだ。


五分、十分――やがて緊張が解けて、歓声が沸き上がった。



「や、やった……僕達、勝ったんだ!!」



 撃墜数で競争すれば間違いなくトップを飾れる撃墜王、バート・ガルサスがガッツポーズ。操舵席でボロボロになりながらも、歓喜の雄叫びを上げた。

バートの勝利宣言を受けて、メインブリッジクルーが総員で黄色い歓声を上げる。疲労困憊だが、疲れも吹っ飛ぶ完全勝利。ようやく、独力で母艦を倒したのだ。

産後で急復帰したエズラは疲労と安堵で顔を俯かせるが、表情は明るい。いつも厳しい副長も、この時ばかりは何も叱責せずに勝利の余韻を味わった。

握り締めていた杖を手から解いて、マグノ・ビバンは大きく息を吐いた。


「やってくれたね、あの子達は。全く、呆れるしぶとさだよ」


 艱難苦難を容易く想像出来る、作戦の困難さ。予想外の事故もあって、生死不明だったのは間違いない。これほどの事態でも、彼らは作戦を成し遂げたのだ。

見事という以外は、ない。途中で救援に向かったミスティも含めて、手放しで褒めてやりたい武功である。大変だったであろうに。

予断は許さないが、恐らく全員無事なのだろう。欠員が出ていたら、この勝利はありえなかった。


「救難信号も確認できました。ミスティを載せたディータ機がガスコーニュ達と合流し、カイ達の元へ向かうようです」

「デリ機も恐らく、大損害食らっちまってるだろうね。赤字の多い戦争だよ」


 大人ならではの損得勘定、これもまた勝利ゆえの余裕に違いない。皮算用にはならないようにだけ、自分達を戒めておく。

デリ機は大破、事故の余韻を受けたヴァンドレッド・メイアの被害も大きいだろう。SP蛮型やメイア機の損傷も気にかかる。

ディータ機が救援に向かっているが、全員の救助は難しいかもしれない。増援を送るべきだろう。

その判断を下した後に、戦場の跡を見渡した。


「――これまで死傷者こそ出ておりませんが、我々は地球に大きな損害を被っております。不利益を多々、強いられている。
ですが今回、この戦いこそが、反撃の契機です。今こそ全てを取り戻し、奪い尽くしましょう」

「ふふ、海賊をあれほど否定するあの坊やの口から、略奪作戦が提案されるとは夢にも思っていなかったね。
しかも地球側の主戦力だ――これほどの規模の船、旗揚げ以来の大物さね」


 ミスティが持っていた、メッセージカプセルのウイルスプログラム。性質はペークシス・プラグマ侵食タイプ、ペークシスに取り憑いて強制停止させる。

大規模建造物である母艦を動かしているのはペークシス・プラグマであり、無人兵器もその恩恵を受けて活動を行っている。

ペークシス・プラグマが停止してしまえば、母艦も無人兵器もプログラムを動作する力すら失ってしまい、システムもダウン。何もかもが、停止する。

思考を失った脳は、死を意味する。残されたのは、身体のみである。


「至急救援隊を派遣するのと同時に、調査班を編成いたします。母艦のシステムをこちらで操作出来れば、今後大きな力となるでしょう」

「母艦内部も一度、見てみたいもんだね。地球の情報や刈り取りの詳細も見つかる可能性が大きい。
ミスティの嬢ちゃんが持っていたメッセージの裏が取れれば、地球の思惑も明らかになるだろうよ」


 ミスティの故郷からのメッセージにより、地球の現状や企みを知ったマグノ達。疑っているわけではないが、何事も情報の裏付けは必要である。

もしも裏付けが取れれば、現時点で何の返答もないタラークやメジェールへの第二のメッセージが送れるかもしれない。故郷に危機が迫っているという、確信を伝えるべく。

最悪握りつぶされている可能性も考慮すると、ますます母艦が必要となる。母艦は残り三隻、依然勝ち目は薄いのだから。

そこまで話し合って、二人は笑い合った。


「ともあれ先ずはあの子達を救い出し、休ませるとしましょう」

「無事じゃないだろうけど、どうせ無駄に元気だろうけどね。自慢話を聞かさせる覚悟はしておきな、BC」


 母艦内の状況は今も、分からない。母艦そのものは破壊したわけではないので、厚い装甲が今も通信を妨げてしまっているのだ。

作戦上仕方がないとはいえ、ガス星雲の磁場の影響もあって、マニュアル操作を強いられたまま。通信を繋げるのは困難だった。



そう――今母艦で何が起きているか、マグノ達には分からない。















 ――作戦は完了。ようやくの、終戦。


作戦は何とか完了したが、戦いそのものは収まらなかった。生体兵器は自立稼働している状態、ペークシス・プラグマが停止しても襲い掛かってくる始末。

影響そのものが全然ないのではない。エネルギー源がなければ、生体兵器であっても行動出来ない。ただ完全な機械ではないので、システムそのものが停止しても動く力は残っているのだ。

放置すれば自然と停止するとはいえ、呑気にしてはいられない。カイとメイアは勝利の余韻を味わう間もなく、必死で戦いを強いられ続けていた。


何の実りもない、消耗戦。怪我に疲労の二重苦だった二人だけでは、もしかしたら生き残れなかったかもしれない。


『宇宙人さん、大丈夫!? ディータが助けに来たから、もう大丈夫だよ!』

『お姉様、貴女の愛するミスティが助けに来ましたよ!』


「……も、もうちょっと早く来い、ボケ……」

「……さ、さすがに、もう駄目かと思った……」


 生体兵器の残骸の山に埋もれて、カイとメイアが機体の中でへたり込んでいた。顔を上げる気力も、礼を言う余裕も、ありはしなかった。

SP蛮型はかろうじて手足が繋がっている状態で、装甲は完全に剥がれてしまっている。二十徳ナイフは根本から折れて、生体兵器の山に突き刺さっていた。

メイア機は翼が金属疲労で折れ曲がっており、出力エネルギーは底。通常兵器は全弾使用の上、先端からボロボロに砕けている。飛行も難しいだろう。


両機、大破。使用不能である。


『やれやれ、うちは銃器持ち込み禁止だったんだけど、趣味程度は許してやろうかね』

『やった! ふふふ、役に立ったでしょう!』


 間一髪のところで、ガスコーニュ達を載せたディータ機が乱入。歩兵役としてガスコーニュとバーネットが降りて、銃器を持って暴れまわる。

ディータ機はミスティ応援の元全弾を撃ち尽くして、生体兵器を破壊。床も、壁も、天井も粉々に壊しまくって、一掃してしまった。


まさに、全員一致の行動。全戦力を使い切っての、勝利だった。


「それにしても――まあ、あんたが無事でよかったよ」

『死んでたまるもんかい。そっちこそ生きていて安心したよ、カイ。それにメイアも、よく頑張ったね』

「ガスコさんこそ、ご無事で本当に何よりでした。バーネットも、助けに来てくれて感謝する」

『まさかメイアに、お礼を言われるとは思わなかったよ。引退するんじゃなかったかな』


 誰も相手の非を責めず、自分の責任を高々に訴えたりしない。大きな事故であっても、生きていて良かったの一言で全て許される。それが、仲間。

ディータやミスティの救援も、改まってお礼は言わない。生きて元気な姿を見せて、勝利を喜び合う。それだけで、何もかもが報われる。


怪我して汚れた顔でも輝いて、笑っていられるのだ。


「ピョロ、お前もご苦労だったな。ウイルスはちゃんと仕込めたか」

「ばっちりピョロ。母艦は沈黙、立ち上がりかけていたシステムも落ちたピョロよ、うしし」

「やったな、お前。殊勲賞ものだぞ、おい。カルーアも大喜びだな」

「うおおおお〜、ピョロU! ピョロは頑張ったピョロよ―!」


 おおはしゃぎである。作戦継続中は恐怖と不安で叫びまくっていたが、勝ってしまえばその醜態もまた思い出となる。

いずれは苦労話から笑い話となるのだろうが、それもさほど先の遠い未来ではないかもしれない。今だってこんなに、嬉しいのだから。

全身全霊を尽くした、何も言うことはない。


「やれやれ、空調が利いていてよかったな。コックピットも穴だらけ、空気がなければ死んでたよ」

「お頭達も我々の現状を把握されているだろう。遠からず救援は来る、それまで動かず待とう」

『ディータが皆を連れて行きますよ!』

『いくら何でも全員入れるのは無理でしょう!? カイとロボ置いて、帰りましょう』

「……おい、ピョロ。あの異星人の口に、カプセルを放り込んでこい」

「……任せろピョロ」

『ちょっとそれ、あたしのカプセルでしょう!?』


 だからこそ、だろう。彼らは、忘れてしまっていた。作戦の結果のみに目を奪われて、作戦の経過を顧みなかった。

本作戦の途中に何があったのか――



中央の柱の根本――メインシステムに墜落する、真紅のドレッド。



「……ジュ、ラ……?」



 誰が――何を、足止めしていたのか。

その場にいた誰もが、目を奪われる。砕け散った味方、顕在する敵、その全てを。



偽ヴァンドレッドが、ジュラ機を踏み潰した。


























<to be continued>







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