ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 19 "Potentially Fatal Situation"






Action20 −完了−







 地球が作り出した生体兵器は人間の刈り取り用ではなく、人間の抹殺を目的としたバイオ兵器。取り付いた相手を骨まで溶かし、人体を破壊する対人間用の破壊兵器なのである。

蛮型やドレッドのような兵器ではなく、人間の破壊用に作られた兵器。ゆえに戦闘能力そのものは低く、単体の蛮型やドレッドでも倒せる程度の低さ。人間で挑まなければ、さほどの脅威はない。

銃のような旧型の銃器でも破壊は可能で、移動の早さも遅く、逃げ場さえ確保出来るのであれば対応は可能。惑星規模の制圧といった、大規模な破壊も行えない。


言い換えると逃げ場のない密閉空間に取り囲まれると、なかなか厄介な敵となる。


「こいつら、どうやら人間を補足して動いているだけのようだな」

『ピョロやウイルス注入の動きを察したのではなく、我々二人の生体反応を感知して敵対行動に出たのだろう』


 地球母艦はパニックンを打ち込まれて、全システムが再起動中の状態。あらゆるセキュリティがデバッグやスキャン等を行っていて、母艦そのものがまだ動き出せていない状態。

母艦のシステムに操作されない生体兵器だけが今、何とか活動出来ている。バイオ兵器は擬似的ではあるが生体活動を行っており、この兵器自体がそれぞれ単独で動いているのだ。

目的は人間の抹殺、その一点。侵入者がどうとかではなく、恐らく人間に反応して動いているのだろう。カイやメイアは、そう推測した。


そこで、カイが一計を案じる。


「だったら俺達が此処を離れれば、こいつらも残らず追ってきそうだな」

「ちょっと待つピョロよ!? 一人にしないでしないで欲しいピョロ〜!」

「俺らがここに居るから襲われているのかもしれないんだぞ。離れたほうが、かえって安全かも」

「他の兵器だって、そろそろ動き出す頃ピョロ。此処に一人取り残されたら、為す術がないピョロ!」

「だったら早く、ウイルスを仕込めよ。無駄に数も多いから、徐々に迫られているんだ」


 SP蛮型の主武装である二十徳ナイフを、ナギナタ型に変換して振り回す。基本的な型も満足に学べていないが、敵とて単純に襲いかかるだけの生体兵器。何とか倒せてはいた。

メイアはドレッドの主武装であるビームやミサイルを惜しみなく発射して、殲滅に励んでいる。通常武装の火力ではあるが、生体兵器を効率よく破壊出来ていた。

単体行動の多いカイと、チーム戦が多いメイア。対称的ではあるが、ヴァンドレッドという共同作業を行っている彼らの息は合っている。


メイアが遠距離で生体兵器を一掃し、接近してくる撃ち溢れをカイが薙ぎ払う。その繰り返しだった。


「ハァ、ハァ……それにしても今日は、予想外の多い日だな」

『しかも、良い方向での予想外だ。これは本当に、運が向いてきたのかもしれないな』

「……? どういうことだピョロ」

「やっこさん。自分の船のセキュリティまで勝手に破って、此処を攻めてるんだよ」

「えええっ!?」


 リズ達のいたミッションでの戦いでも、生体兵器は逃走するリズ達を追っていた時セキュリティを次々と破って攻め込んでいた。システムに取り付く性質があるのだ。

敵陣に攻め込む上では確かに必要な機能ではあるのだが、味方の船でやってしまうとマイナスにしかならない。何故自陣の防衛システムまで、破壊してしまうのか。


恐らくこの生体兵器は、自陣が攻め込まれることを想定していない。製作者である地球の傲慢が浮き彫りになった、兵器だからだ。


人間の臓器を兵器な顔で狩り尽くす絶対者達、彼らにとってカイ達は獲物でしかない。獲物は食われるだけの存在、それ以上でもそれ以下でもない。

学習能力は確かに備わっているが、敵を脅威に感じて搭載されたのではない。獲物を狩るデータを参考までに取っているだけ、実験動物扱いなのだ。

だから攻められているのにシステムを再起動したり、自分達のセキュリティまで破壊する馬鹿な真似をする。そうした対応しかとれない、出来ないのだ。


常に危機管理を欠かさないカイ達からすればある種予想外の、馬鹿げた対応だった。


「何にしてもこれで敵さんがシステムを再起動しても、セキュリティはもう動かない。逃げ場は確保できたな」

『ディータ達後続の部隊も、此処まで乗り込んで来られる。まだ安心は出来ないが、選択の幅は確実に広まった』

「よかった、ピョロUにもう一度会える可能性が高まったピョロよ!」

「でも最終的にお前がちゃんとやらないと、敵は倒せないんだからな。見せ場はくれてやるから、早く何とかしてくれ」

「了解ピョロ、うおおおお〜〜〜!!」


 状況は好転しているが、限界もある。カイ機は破損がひどく、メイア機はエネルギー不足なのだ。どちらも戦力は激減しており、限界も近づいている。

頼みの綱のヴァンドレッド・メイアは、密閉空間では役に立たない。今必要なのは火力であって、速力ではない。個別に戦った方がまだ、敵を倒しやすい。

二人は必死で戦っているが、作戦開始から連続で戦い続けていて、疲労も負傷も激しい。途中事故で死にかけただけに、機体もパイロットも傷つき過ぎていた。

軽口を叩いているが、二人が血を流してもまだ戦えているのはピョロの存在あってこそだ。ウイルスを仕込めばこちらの勝利、だからこそ戦える。

ピョロもそれを自覚しているからこそ、弱音は吐かない。悪態はついているが、背中を守る二人を信頼している。だから、作業に集中している。


そんな"人間達"の果てなき闘争を、人間外が観測し続けている。


「マスターが勝利すれば、地球の戦力が3分の2まで低下します。貴女はどうするのですか、ユメ」

『ユメは、ますたぁーの味方だよ』

「ですが、貴女の本体は今も――」

『この母艦をマスターが制圧すれば、母艦のメインシステムを掌握出来る。後はソラ、お願いしていい?』

「! まさか私に、貴方の本体に介入する権利を?」

『もう、分かってないなソラは。言い方が違うよ』

「と、いうと?」


『背中を預けると言うんだよ、こういうのは』

「……ありがとう、ユメ。貴女の信頼に応えて、必ず貴女を取り戻してみせます」


 男と女とロボット、タラークやメジェールでは存在が違うとされている者達。そのどれもが皆同じ目的を掲げて、背中を預けて戦っている。

逃げ場はある。此処に留まらなくても、安全圏まで逃げられる。誰かを見捨てれば、誰かが助かる。希望を前にしながらも、絶望の淵にしがみついて彼らは戦っている。

勝てる保証は無い、負けるかもしれない。けれど、仲間を見捨てる事だけは絶対に嫌だ。仲間の死だけを否定して、自分の死を否定はしない。自分の犠牲を恐れずに、戦い続ける。


ナギナタは折れ、ビームの出力が底をついた。戦う武器を失い、敵はまだ残されている――であれど、逃げたりはしない。


絶体絶命でありながら、ピョロは背中を見ない。カイはピョロを急かさず、突撃する。メイアは地上を見ずに、宙からミサイルを落としていく。

逃げようともせず、立ち向かい続けるだけの獲物が相手でも、生体兵器は何も思わない。殲滅を目的としたまま、黙って同じ行動を繰り返すだけ。そして、数を減らしていく。

蛮型は既に耐久限界を超えており、武装は壊れて装甲が剥がれ落ちていく。ドレッドは限界を超えた出力に機能が低下し、各部品が出力限界に燃えていく。


「……まだやれるか、青髪」

『ああ、勿論だ」


 修繕は恐らく、もう不可能。SP蛮型も、ドレッドも、壊れていくのみ――それでも二人は後悔せず、よくやったと褒めるのだ。


馬鹿げたやり方、愚かな生き方。目の当たりにした人外二人には、理解不能な概念。学習する価値はないと地球側が破棄し、学習する価値有りと彼女達は学ぶ。

この戦いで得たものを、カイ達は本当の意味で理解することはないだろう。彼らにとっては当たり前の生き方であり、当然の行動なのだから。

今から敢えて言えば、カイ達の勝因は仲間を信頼したこと。地球側の敗因は、仲間を作らなかったこと。学習機能がありながらも、表面上でしか伺えなかった。



「見てろ――ウイルス、起動!!」



   だからこそ、この結果となった。


























<to be continued>







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