ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 19 "Potentially Fatal Situation"






Action13 −白刃−







「当たった……上手く母艦の中に当たったよ!」

「自信無さそうにしてたのにやるじゃない、あんた!」


 心苦しくもジュラ・ベーシル・エルデンに偽ニル・ヴァーナの足止めを任せ、ミスティを載せたディータ機が母艦に急行。この間、幾つもの人間ドラマがあった。

偽ニル・ヴァーナは確かに母艦の護衛役を担っていたが、母艦本体を守っているのはこの新兵器のみではない。接近する度に、無人兵器が大群を為して襲いかかってきた。

無理もない話である。何しろ一度接近を許した上に、やむを得ない事故とはいえ装甲に大穴が空いたのだ。これ以上の損害は絶対に防がなければならない、敵も必死であった。

リーダー候補であってもディータはまだ新人パイロットであり、経験を積んだと言っても半年。一体一体はどうにか出来ても、大群ともなれば対処しきれない。


決死を覚悟したディータに突破口を作ったのは、立場上彼女の部下であるドレッドチームだった。


『話は全部、副長から聞いたわ。行って、リーダー!』

『絶対決めてきなさいよ。いつものようなドジは許さないからね!』

『アタシ達だって信じるわ。カイもメイアも、ガスコさん達も生きてるって!』


『ありがとう、皆!』
『カッコイイじゃない、あんた達!』


 カイの立てた作戦は、ここでも生きた。大群を相手にチーム単位の彼女達が戦えるのは、ガス星雲の磁場が今も強烈に働いているからだ。

マニュアル操作にも慣れてきた彼女達が、環境変化に苦しむ無人兵器を圧倒し始めたのだ。数では負けていても、実力で上回りつつある。

人間は脳で経験するが、無人兵器はプログラムで学習する。そのプログラムが磁場により悪影響を及ぼせば、学習能力も低下するのである。


これは作戦を立てたカイにとって想定外の、嬉しい誤算。機能低下にばかり目を向けていたが、彼らの学習能力も奪っていたのだ。


マニュアル操作による新戦法は、地球側もまだ学習していない。経験にない戦いに対して、兵器は応用できない。要の学習能力も、封じられている。

となれば、機能で圧倒するしかない。彼らは偽ヴァンドレッド・シリーズで対抗しようとするが――


『邪魔はさせないぞ、このパクリ連中!』

『運転手さん!?』

『早く、助けに行ってやってくれ。口の悪い憎たらしい奴だけど、あいつは僕の大事な友達なんだ!』


『……あんた、普段からそれくらいビシッとしてなさいよ』


 君臨した、本物のニル・ヴァーナ。カイ達を救いたいという願いは操舵手だけではなく、艦内にいるクルーたち全員が共有している。

内外一体となった者達の想いが伝わったのか、ペークシス・プラグマの出力エネルギーはかつてないほど解き放たれている。エネルギー率は、過去最高であった。

ホーミング・レーザーが速度に特化した偽ヴァンドレッド・メイアを打ち抜き、ペークシス・アームの両腕が偽ヴァンドレッド・ディータとジュラを握り潰す。


戦場に立ったバート・ガルサスの勇姿に、少女達は惜しみない賞賛と尊敬を送って先へと進んだ。


『見えた……母艦!? あいつに直接撃ちこめばいいんだね、ミスティ!』

『ちょっと待って!』


 艱難辛苦を乗り越えて、ようやく辿り着いた敵の本陣。大将首は目の前、秘密兵器は手の中。引き金を引くだけで、大将を討ち取れる距離。

この瞬間を誰よりも待ち望んでいたミスティが、待ったをかける。既に引き金に指をかけていたディータの方が、つんのめってしまった。


慌てて振り返るディータの目に、ミスティのエゲツナイ微笑みが見えた。


『折角だし、あそこに撃ち込んじゃおうよ』

『あそこって……あれ!?』


 ミスティが指し示すのは一点、巨大な母艦に空いた大穴。未だに修復する様子もない深い開口に撃ちこめと、ミスティは悪魔のごとく囁いた。

ディータは、正気を疑う。大穴と表現してはいるが、あくまで人間としての尺度と比較しての大きさである。母艦全体から見れば、針穴に等しい。

眼前まで迫れば撃ち込めるだろうが、接近しているとはいえ距離がある。ディータは必死で首を振った。


が、振った首の根っこをミスティに掴まれる。


『装甲に当たっても、影響が少ないかもしれないでしょう。お酒だって口から飲むより、血管から注入した方がきくのよ!』

『理屈は分かるけど、実行するのは無理だよ〜! そ、それに、中にいる宇宙人さんに当たるかも!?』

『人体に当たっても影響はないのよ、これは。あくまでネットワークを破壊するだけなんだから』


 ――この時ミスティは分かっていなかったが、"パニックン"が直接人間に当たったら物理攻撃と変わらないので、容赦なく大怪我をしていたのである。

効果のみに気を取られて、"パニックン"があくまでポットに積んだプログラムだということを忘れていた。ポットは金属製、直撃すればもちろん危ない。

ブザムやパルフェなら指摘していただろうが、相手が同レベルのディータだと納得させられてしまった。


『う、うーん……でも、外れたら』

『外れた時のことなんて、考えないの!』

『考えちゃうよ、どうしても!?』

『よし、分かった。二人で引き金を引こう。一人じゃ無理でも――』


『二人なら、やれる!』

『そうよ!』


 ――受ける側に居るカイやメイアが聞いたら、大慌てで止めるだろう。何だその理論は、下手くそとド素人二人じゃどうにもならない、と諌めていたに違いない。

元より彼女達は、勢い任せ。助けたいという気持ち一つで、戦場に乗り出してきた。尊い思いだが、戦場に私情を思いっきり持ち込んでいる、駄目な二人。

けれど、彼女達はそうして強く想い――奇跡を、起こしてきたのだ。


『いっけぇぇぇぇぇぇーーーーー!!』


 狙いをつけて、発射。邪魔や妨害が入るとは、夢にも思っていない。仲間に背中を預けている、これ以上確かなことなどありはしない。

確率なんて、知った事か。これから何度も失敗しようと、今この一回だけ成功すればいい。自分達ならやれる、その思いに揺らぎなどない。

だって、彼らが生きているだけでもう――奇跡、なのだから。


――こうして、この奇跡は成就した。


もしこの戦いが無事に終わったら、こっぴどく叱られるだろう。何もかも勢い任せ、あらゆる意味で反省点が多すぎる。まったくもって、子供の暴走と変わらない。

結果が良ければそれでいいなんて、子供の理屈だ。自分達は大人の世界で生きている。大人と共に戦っている以上、子供ではいられない。


分かっていながらも、二人は子供のように笑い合う。


「……あんた、名前なんて言うんだっけ?」

「さっき、自分で呼んでたよ!? ディータ、ディータ・リーベライ」

「あたしは、ミスティ。ミスティ・コーンウェル」

「う、うん、知ってるけど……」

「馬鹿」

「……?」


「よろしくって言ってるのよ、ディータ」

「あっ……うん、よろしくね。ミスティ!」


 ディータ・リーベライ。彼女が子供の頃より心から望んでいた異星人――


本物の"宇宙人"の、友達である。


























<to be continued>







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