ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 19 "Potentially Fatal Situation"






Action12 −雷同−







 ソラとユメのサポートもあって、カイのSP蛮型とメイアのドレッドの修繕は比較的スムーズに進んだ。人力では困難な作業を、怪力のピョロが手伝ったのも大きい。

本来制御が精一杯のペークシス・プラグマの結晶体も驚異的な安定率を誇り、蛮型とドレッドにエネルギーを供給していく。二つの機体は、何とか立ち直りつつあった。

母艦との衝突で派手に横転した機体をピョロが持ち上げて、何とか体勢を立て直す。そうして二人は自分の愛機に乗り込んで、計器類のチェックに移った。

多くの実戦を積み重ねているとはいえ、カイはまだ経験半年のパイロット。精密機器のチェックはソラが適時サポートして、何とかコックピットの状態を確かめることが出来た。


「モニターに操縦桿は、何とか動かせそうだな。ただ全体的に、システムが安定していないな」

『私がペークシスを通じてシステムに介入しておりますが、軽度のエラーが多数発生しております。
メンテナンスを推奨しますがどうしても時間を要します、申し訳ありません』

「お前が手伝ってくれなかったら、そもそもまともに動いていないだろう。操縦出来るだけでも、御の字だ」


 恐縮する立体映像に、カイは笑って手を振った。一時は死ぬかと思う事故だったのだ、生きているだけでも御の字。戦えるのであれば、僥倖というものだろう。

主の心境を知りながらも申し訳なく思っているのは、主の仲間を思うが故。ガスコーニュとバーネットは敵に囚われている。その一事が、主の心を痛めているのに違いはない。

戦えないもどかしさは主を通じて、臣を患わせる。それでも平静を保てているのは感情無き故か、主への全幅の信頼か。きっと本人も、理解していないだろう。


計器のチェックを終えて、通信機器をオンにしてみる。


「青髪、聞こえるか」

『こちらメイア、声は聞こえている。音声は良好だが、映像は非常に荒い。リアルタイムでは声のみでやり取りする必要がありそうだ』

「通信出来るだけマシだと思うしかないな。外へはやはり、完全に遮断されている」

『確認した。遮断しているのは予想通り、母艦の外壁だな。どうする? あれだけの衝突だ、恐らく今も外壁には大穴が空いているだろう。
取り急ぎ戻って、ニル・ヴァーナへ救援を求めるのも手だ』


 悪くはない案である。計器をチェックしてようやく判明した、明るい情報。光明を見出したというのは、こういう時を指すのだろう。

計器類を確認し通信状態を把握して、通信が遮断されている最たる理由が母艦の外壁にあることが分かった。言わば、物理的に遮断されているのだ。

大穴が空いている箇所へ戻れば外へ?がり、ニル・ヴァーナへ救援を要請できるだろう。マグノやブザムに指示を求めるのも手だ。

今の状況を顧みた上で少し考え、カイは選択した。安全か、それとも――


「二手に分かれて行動するのもありか」


 どちらも取るという、選択肢。作戦を継続する上でメインシステムへ向かう人間と、作戦を維持する上で仲間に助けを求める人間。ここには男と女、二人がいる。

敵陣に半ば囚われた状況で数少ない戦力を更に分断するのが愚かの極みだが、その戦力そのものが既に絶望的なのだ。戦闘になれば、間違いなく負けて死ぬ。戦う選択肢はない。

ならば別行動をとっても、戦力面ではさほどの影響はない。カイの提案は、現状をふまえての意見であった。


メイアは一考し、反対する。


『我々はいざとなれば、ヴァンドレッドへ移行出来る。合体しても戦える状態にまではならないが、逃走くらいは図れるだろう。
今敵側が脅威を感じているのはニル・ヴァーナと、我々のヴァンドレッドだ。だからこそ、奴らは偽物を作っている』

「なるほど、戦えなくても合体するだけでハッタリくらいはかませるか」


 無人兵器に恐怖はないが、警戒はある。戦闘プログラムは基本的に破壊されるまで襲いかかってくるが、自爆を望んでいるのではないのだ。

蛮型やドレッド単体では何の脅威にもならないが、ヴァンドレッドであれば敵はその戦力を考慮して警戒するだろう。迂闊な真似は絶対にしない。

その慎重さが、今のカイ達に必要な時間なのだ。隙を見出す意味でも、敵に攻めて来られたくはない。


「だったら、さっさとメインシステムへ急行しよう。仮に通信が可能でも、味方の救援が来るまではどうしても時間が掛かる。
仲間に無事を知らせる意味はあるが、敵にだってこちらの生存がバレる可能性が高い。慎重に行こうぜ」

『ふっ、お前の口から慎重という言葉が出るとは驚きだ』

「ちぇっ、お前こそ冗談が上手くなったじゃねえか」


 一長一短、利点もあるし欠点もある。通信を傍受するのは本来難しいのだが、通信そのものが行われた形跡を追うのは不可能ではない。

通信そのものを暗号化しても、通信が送られた事が母艦に知られてしまう。その通信元を追えば、自動的にカイ達の存在が発覚してしまうのだ。

戦う力がない以上、そうなれば逃げるしかない。救援が来れば何とかなるが、急行してくれるかどうかは分からない。

仲間を信じられないのではない。仲間への信頼と同時に、敵の脅威についても理解しているからだ。


「あ、そうか。ピョロを一人システムへ行かせて、俺達が助けを求めれば――」

「言うと思ったピョロ、絶対に離さないピョロよ!?」

「この野郎、俺の相棒にしがみつくんじゃねえ!」

「ますたぁー、ユメも抱っこして―!」


「……では、参りましょうか」

「――お前も、苦労しているな」


 四苦八苦させられたが、急拵えの修繕が終わった蛮型とドレッドが発進する。あくまで飛ぶのではなく、地を這うように進んでいく。

まずナビゲーションロボのピョロが先頭に立ち、母艦内を探索。敵影を警戒し、セキュリティによる罠を識別しながら、カイ達を先導する。

ユメは母艦のシステムに強制介入して、敵システムを無力化する作業。ソラはペークシスを通じて、蛮型やドレッドの機能向上と破損したシステムの復旧に務める。

そうして母艦内を探索、彼らは地球が生み出した最大戦力の中枢へ向かっていく。


「考えてみれば俺達、敵の懐に潜り込んでいるんだよな。母艦の破壊しか頭になかったけど、母艦の構造を知るチャンスでもあるな」

『今更か。私がピョロに、撮影を頼んである』

「それであいつ、さっきからキョロキョロしているのか!?」


 聞いてみれば、ソラやユメも母艦のあらゆるデータを保存しているらしい。思いがけない土産にカイは胸が高鳴るのと同時に、自分以外の全員が既に行動しているのに自嘲する。

目標を定めて行動するのはいいことだが、目標ばかり見据えて突き進むだけしか頭にないのは問題だ。常に視野を広げ、アンテナを張っておかねばならない。

メイアはその点、さすがである。どんな事態に陥っても、最善の行動が取れる。カイは感心させられるばかりだった。


『ぷぷ、分かってないピョロね』

「? わざわざプライベート回線にしやがって、何が言いたいんだコラ」

『こんな状況でもメイアが落ち着いていられるのは、誰かさんを頼りにしているからだピョロ』


 ――問い返さなくても、それが自分だということくらいは分かる。話としては分かるが、信じられない心境だった。

メイアという女性は基本的に他人に甘えたり、仲間を頼ったりはしない。信頼はしているのだろうが、なるべくなら一人でやろうとするタイプだ。

今までのように悲痛な使命感こそなくなってきているが、人間そう簡単には変われない。まして行動原理というのは、長年培った経験だ。心情面に変化があっても、変えられない。


もしも彼女の信頼が、その行動原理よりも高いのであれば――


『マスター、問題発生です』

「どうした……?」

『あいつら、ますたぁーの仲間の船を解体しようとしているよ』

「くそっ、目の前の敵より手元の餌を喰らい尽くすつもりか!」


 人質を取るのは戦争においても有効な手段なのだが、無人兵器には人質という概念すらない。彼らの目的はあくまで、刈り取りなのだから。


「こうなったら隠密行動なんて言ってられない。助けに行くぞ、青髪!」

『しかし、我々も満足に動けない。下手に助けに向かっても、囲まれる危険性が高い!』

「じゃあどうすればいいんだよ!?」


 カイもメイアも、分かっている。こうなってしまった以上、全てを選ぶのは無理だ。手の中にある可能性から、何かを捨てなければならない。

自分達の命を捨てるのなら、ヴァンドレッドを強行してガスコーニュ達を救える。作戦を継続するのなら、ガスコーニュ達を見捨ててメインシステムへ急行するチャンスである。

作戦を破棄すれば仲間に救援を頼み、ガスコーニュ達と合流して防衛戦を行える。どれでも選べるが、どれかは捨てなければならない。

折角ここまで苦労したのに、全てが水の泡となりかねなかった。


「くそっ……ここまでか!」





『"パニックン"、発射!』





 ――前触れは、一切なかった。劇的な変化もない。大いなる歓声も、派手な演出も、感動的な物語も、何もない。静かに、速やかに、事が起きた。

母艦が急停止、無人兵器の大群が行動不能、メインシステムが遮断。ほんの束の間の、空白。瞬きすれば消えてしまいそうな、時間の余白。



決定的な、隙であった。



「行くぞ、ピョロ、青髪!」

『合点承知だピョロ!』

『分かった!』



 何の申し合わせもなかったのに、カイ達は即座に行動に出た。蛮型とドレッドが合体、ピョロが着座して新たなヴァンドレッド・メイアが出現。

航路は、メインシステム。ガスコーニュ達の救出も、仲間の救援にも一切振り向かず、真っ直ぐに自分達の目標へ向かっていく。

このチャンス、この機会を、一瞬たりとも無駄にできない。横を気にするのも、後ろを振り返るのも、彼らへの侮辱でしかない。


そう、彼らの胸にあるのは――



「やるじゃねえか、ミスティ」

『しっかりやりなさいよ、馬鹿』



 どこまでも、信頼だけであった。


























<to be continued>







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