ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 18 "Death"






LastAction −段階−







 奇跡とは簡単には起こらないから、奇跡と呼ばれるのだろう。今までは当たり前のように起きていたので、彼女達は忘れていたのかもしれない。

どれほど願っても、神様は決して救ってはくれない。どれほど請うても、国は何も助けてくれない。どれほど望んでも、奇跡はなかなか起こらない。


何も起こらないまま、当然のように終わった。



「……」



 誰も、何も言おうとしない。ありのまま起きてしまったことを、呆然と見送った。何とかなるだろうと安易に思っていたからこそ、何ともならずに終わった。

巨大な地球母艦に激突した二隻の船、ヴァンドレッド・メイアとデリ機。両機は激しい勢いで激突し、そのまま母艦の装甲に衝突して、爆発して砕け散った。


砕け散って、しまった。それ以上でも、それ以下でもない。分厚い母艦の装甲に空洞が生じる程の爆発に、機体は耐えられずに破砕された。


どういう結果となりそうだったのか、完璧に想像出来た者は誰もいないだろう。誰もが何となく助かるのではないかと、一足早く勝手に安堵していたのだから。

現実はそう甘くないことは、誰もが皆分かっている。艱難辛苦を乗り越えた者達、死にそうになったことは数えきれない。命はとても安っぽい。

分かっていたはずなのに、分かっていなかった。今までが奇跡のように勝ち続けていて、誰も死ななかったから当然のように思っていた。


けれど今、死んだ。



「……っ」



 作戦は継続中、戦闘はまだ続いている。茫然自失となりながらも、誰もが手を休めない。持ち場についたまま、童のように言われたままに行動している。

本能的な行動では、恐らくない。本人にだって、分かっていない。仲間が死んだ悲しみも、仲間が殺された怒りも、まだ沸かない。

母艦を破壊し、刈り取りを阻止する。崇高な使命と鮮烈な義務感に従って、一人一人の戦いを継続している。手を、休めない。


戦いは、続いている。たとえ、仲間が死んだとしても――



「……か」



 ――作戦が、失敗に終わっているのだとしても。



「……たか」



 カイ・ピュアウインド、メイア・ギズボーンの戦死。ガスコーニュ・ラインガウ、バーネット・オランジェロの事故死。ピョロの機能停止。五人の仲間が、死んだ。

戦死者ゼロだったのに、一気に五人が死んだ。機体反応は完全に消失、通信は途絶えている。目で見ても、声を聞こうとしても、何も見えない、何も聞こえない。

二つの機体が激突して壊れ、母艦の装甲に衝突して粉々になった。そうとしか思えず、そう考えるほかなかった。助かったかも、とはどうしても思えなかった。


現実がどれほど厳しいか、肌で感じているから。



「……またかっ!」



 どうして夢見る乙女で、いられなかったのだろう。どうして、夢を見せ続けてくれなかったのだろう。どうして、裏切られてしまうのだろう。

悲しみよりも、怒りよりも、全員を襲ったのは強い落胆だった。底知れぬ深い失望は、もしかすると絶望よりも暗いかもしれない。

期待は、裏切られた。信頼も、裏切られた。絶対も、裏切られた。約束も、裏切られた。何もかも、裏切られた。


死とは、終わりではない。死とは――最上の、裏切りである。



「また、死んだのか!」



 また、死んだのか。またお前は、死んでしまったのか。またお前は――裏切るというのか。


カイ・ピュアウインド、彼の死は一度ではない。同じ地球母艦の戦いで、彼は過去に戦死している。今まで生きていたのは単に偶然であり、幸運でしかない。

死ぬというのはつまり、そういうことだ。一度しか、訪れない。一度でも訪れてしまえば、決して覆せない。何物にも、何が起ころうと。

死ぬ以上の、裏切りはない。一度死んだ人間を、もう二度と信じない。



「また、お前は――死んだのか!!」



 メイア達の、愛する仲間達の死よりも深い失望。これ以上ない、何物にも変えられない、強い落胆。

これは、裏切りだ。これは――裏切りだ!



「また、お前は――仲間を守って、死んだのか!!!」



 ガスコーニュ・ラインガウを、助けようとして死んだ。バーネット・オランジェロを、庇おうとして死んだ。仲間を、救おうとして死んだ。

これが裏切りではなくて、何だ。仲間を守るためならば、自分の命くらいどうでもいいのか。結果として、救えなかったというのに。


何も、成長していない――マグノ海賊団は、心底彼を軽蔑した。


吐き気がする。自分を少しも顧みないあの男が、気持ち悪くて仕方がない。仲間の犠牲を嫌うのであれば、何故自分が死ぬのを肯定するのか。

理屈が成り立たないではないか。自分達がどれほど悲しもうと、知ったことではないのか。自分さえ満足ならば、それでいいというのか。

この戦場にいる全ての人間が、激しく憎悪する。仲間を殺した敵ではない。仲間を救おうとした、あの男に対してだ。

メイアやガスコーニュ、ピョロはまだいい。これで、一度目なのだから。あの男は、二度目なのだ。


二回も、死んで――二回も、自分を救おうとはしなかった。



「作戦を、継続する!」



 誰かが、声を上げる。



「敵を、一気残らず倒す!!」



 誰かが、応える。



「あの大馬鹿を、どつき倒すぞぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

『ラジャー!!!』



 そして――誰もが。


カイのフザけた死なんて、認めてやらなかった。



























<to be continued>







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