ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 17 "The rule of a battlefield"






Action16 −経路−







 刈り取り襲来により、中継基地ミッションの全セキュリティシステムが作動。シャッターが全て閉じられて、外敵用迎撃装置が作動して敵の掃討にあたった。

外部からの侵入に備えて防壁以外にも隔壁が下ろされて、予測出来る侵入経路は全て閉鎖される。ほぼ鉄壁に等しく、対人用としては万全である。ミッションが、建設当時であれば。


地球から植民船団が旅立って、幾星霜。長い年月を経て老朽化が進み、システム関連も最新化されていない。加えて専門家がいないので、メンテナンスもされていなかった。


反面、敵は地球。恐るべき技術の進化により誕生した、最新型生体兵器。生体とはいえ、最新技術により生み出された代物。古びたシステムなど、相手にもならない。

シャッターが簡単に溶かされ、外壁は破壊。隔壁も難なく突破して、ロックされている扉は全て解除される。セキュリティシステムは、時間稼ぎにしかならなかった。


セキュリティシステムの敗北に一番早く気付いたのは、やはり専門家であった。



「げげっ、セキュリティゲートまで突破された!?」


 マグノ海賊団機関長のパルフェが、手持ちのタブレットを見て悲鳴を上げる。敵の動きは監視カメラを通じて補足出来ており、その動きの速さに改めて驚愕させられていた。

生体兵器だけあって、人間の生体反応まで読み取れるようだ。行動を開始したカイ達の動きを補足して、真っ先に彼らの元へ向かってきている。

もしもミッションの人達と今でもぶつかり合っていたら、恐らく避難が間に合わなかっただろう。素早い決断が功を奏したのである。


「連中のしつこさは、今に始まったことじゃないさ」


 ミッション内の人達全員を避難誘導しながら、ガスコーニュが苦笑する。現状認識が早い彼女は、危機一髪だった自分達に、冷や汗をかいていた。

彼女は、過程の話は好きではない。さりとて、思う。もしも――もしも、自分達が生来の家業である海賊行為、物資の略奪に乗り出していたらどうなっていたか?

当然、リズ達も応戦するだろう。彼女達の気性を考えれば、最後の最後まで徹底抗戦するに違いない。となれば撃ち合い、殺し合いとなり、戦況は更に拗れていた。


そうして、地球が来ていたら――少なくとも、ミッションに来ていた交渉班は全滅していた。リズ達に足を引っ張れて、右往左往した挙句殺されていただろう。


一致団結とは言い難いが、少なくとも一緒に避難は出来ている。この状態に上手く持ち込めたのは武力による物資略奪ではなく、直接交渉による奪い合いに持ち込んだ為。

代表者同士のファイナルマッチとなったが、少なくとも公平であった。ゆえにお互い納得ずくの結果となり、行動も共に出来ている。

変化は確実に、訪れている。そして、その辺かも良い方向に働き出していた。


(……そういえばあの坊やも、あの胡散臭い兄ちゃんと同盟にまで持ち込んでたか)


 自分達マグノ海賊団に新たな変化を与えたのは、あの三人の男達。その一人であるカイも、自分達との関係を経て心境にも変化は訪れているようだ。

出逢った頃の意固地な正義感なら、絶対にラバットと同盟など結ばなかった。頑なに悪を許さず、少しでも怪しければ心を閉ざす。杓子定規な生き方が今、軌道修正されている。

清濁併せ呑めれば、この先もっと着実な変化が訪れるだろう。それはきっと少年を今よりもっと成長させ、立派な大人とするに違いない。

そうまで考えて、笑いがこみ上げてくる。海賊を見習うなんて、悪い子供になったものだ。


「さあ、急ぐよ!」

「おう!」


 リズの腰巾着であるパッチに声をかけて、ガスコーニュは人々を誘導していく。考えるのは落ち着いた時でいい、今は行動あるのみ。

変化を見守る大人達と、変化していく子供達。正悪入り乱れる中、彼らは人類の敵に挑む。















 ミッションの外のセキュリティ、迎撃システムも木っ端微塵に破壊。丸裸となった中継基地だが、刈り取り部隊は攻められずにいた。無人兵器も後退させられている。

マグノ海賊団主力ドレッドチームと、融合戦艦ニル・ヴァーナ。地球母艦すら破壊した戦力がミッション側に加わり、刈り取りの優位は消え去った。

ではマグノ海賊団側の優勢かといえば、そうでもない。彼らも彼らで戦力を上回れど、無人兵器の群れを完全破壊出来ずにいたのだ。


極論を言えば彼らの今回の任務、最終目的は無人兵器の破壊ではない。中継基地ミッションの防衛であり、地球の目的を阻止する事になる。


圧倒的な火力で焼き尽くすのは至極簡単だが、ミッションにも被害を及ぼしてしまう。ここに来て、ミッションのセキュリティの低さに足を引っ張られていた。

丸裸に近い今の状態では誤射の一つで、簡単に穴を開けてしまう。ミッション内には多数の人間が動き回っており、犠牲者を出す羽目になる。

ブザム達が避難を完全に終えるまで、カイとメイアが迎撃に出れるまでは、多少であっても無茶は出来ない。慎重に、慎重を重ねなければならない。


リーダー候補生、ディータ・リーベライはそう分析した。


「て、敵さんの注意をあたしたちに引き付けて下さい。今副長が皆さんを避難させていますので、出来るだけミッションから引き離して下さい!
あとあと、えーと……」

『半人前が、欲張らないの。引き離せ、でいいから』

「じゃ、じゃあ、敵を引き離して下さい!!」

『ラジャー!』


 チームリーダーであるメイアは別任務遂行中の為、ディータが仮のリーダーとして纏め上げている。恐る恐るで先輩から尻を叩かれているが、本人なりに懸命だった。

まだまだ貫禄も自信も持てないようだが、病の惑星での戦闘で一度はチームを率いている。その経験が上手く生きており、手放しでは褒められないがそれなりに出来ていた。

新米にチームを任せる事には支障も不安も当然出るが、不平不満は今のところ出ていない。新米リーダーの戦況分析は、そう的外れではないからだ。


ディータの見る視点は、メイアの観察とさほどの差はない。毎日のように続けられたメイアのリーダー教育が、確実にディータに息づいている証拠だった。


やる気だけでは、短期間でこうも伸びない。ディータは決して資質が高いとはいえない分、多大な努力で補ってきたであろう事は容易に想像出来る。

メイアの厳しさは、パイロット全員が見に染みて思い知らされている。リーダー教育ともなれば、それこそ鞭打ってシゴキあげてディータを鍛え上げたのだろう。

ディータは泣き言を言いながらも、決して逃げ出さなかった。そうした日々の行いの賜物が、今日の統率力になっている。鍛え甲斐のある後輩は、可愛いものだ。


無人兵器との戦闘経験、チームメンバーとの人間関係――ディータは今、大きく変化を遂げつつあった。


「運転手さん、お願いがあります!」

『えっ、僕に……?』


 奇跡的に無傷でドッキング解除に成功したバートがホッとする間もなく、緊急回線。慌てて通信を開くと、ディータのど迫力ある顔が画面いっぱいに飛び込んでくる。

仰け反りながらも、バートは必死で返答。ディータは比較的男性陣との交流も厚いが、操舵手のバートと個人的に話す機会は実は少ない。

やはりカイとのコミュニケーションを第一にしていたのもあり、バートとの関係は進展していなかったのだ。仲が悪い訳では決してないが。


まして、個人的にお願いされるのは今回が初めてといっていい。バートも思わず、生唾を飲み込んでもらう。


「出来るだけミッションから敵を引き離すつもりですが、ディータの指揮だと……ミッションに攻撃が当たってしまうかもしれないんです」

『だ、大丈夫だよ。メイアに毎日鍛えてもらっているんだろう? 自信を持って!』

「ありがとう、運転手さん。でも、無理なんです」


 ディータの悲しげで、それでいて悔しそうな顔を見るのも、バートは初めてだった。脳天気と言っていいほど朗らかで、明るい笑顔が絶えない娘だったから。

メイアによって磨き上げられた、現状分析力。皮肉にも能力の向上により、自分の無力を痛感させられている。子供のままなら、知らずに幸せであったかもしれないのに。


似たような悔しさは、バートも最近味わっている。病の惑星でのテラフォーミング、一体何度失敗してしまったことか――


ディータが個人的に通信してきたのも、ようやく納得できた。オープンチャンネルになんてしてしまったら、指揮が低下することおびただしい。

どれほど無力であっても、部下達の前で自分の力不足を公言してはならない。出来る事をするのが、上に立つ者の責務だ。


「なので、ドレッドチームは牽制と回避に徹底します。何とかミッションから敵を引き離すので、運転手さんがあのバビューンと撃つ感じの――」

『ホーミングレーザーね』

「そうそう、そのレーザーで一気に敵をやっつけちゃって下さい!」


 バートは即答を避けて、吟味――上策である。自分の能力不足を逆に生かして、敵への牽制に徹底する。ドレッドチームが注意を引きつけてくれれば、照準も定まりやすい。

ニル・ヴァーナの武器はホーミングレーザーと、ペークシスアーム。エネルギー結晶ペークシス・プラグマの力を用いた、兵器である。

遠距離兵器ホーミングレーザーと、近距離兵器ペークシスアーム。この二つの武器は非常に強力ではあるが、強力であるがゆえに欠点がある。


防衛戦に、むいていないのだ。ホーミングレーザーは敵だけを狙えるが、遠距離兵器の為に今回のように近距離で使用するのは望ましくない。


テラフォーミング成功により生まれた力も、今回ばかりは役立てないと半ば諦めていたところであった。自分も大いに活躍できるとあって、バートの顔も輝き出す。

今回の戦闘ではいつも戦闘の主役だったカイも、女性陣の花形であるメイアもいない。今こそ、自分達の活躍の場である。


『分かった、僕に任せてくれ。敵は一機残らず、僕が倒してみせるよ!』

「お願いね、運転手さん。ディータも、頑張るから!」


 意外なところで、名コンビが誕生。未熟者同士固く手を握り合って、皆を守るべく戦場に出向く。こんなところでも、変化は訪れていた。

任務達成条件はなかなか厳しいだが、誰も逃げずに立ち向かう。無感情な兵器にはない、人間ならではの力であった。


――お頭に報告もせず作戦に出た彼らに、後できついお叱りを食らった辺りはまだまだと言えるかもしれない。




























<to be continued>







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