ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 17 "The rule of a battlefield"






Action2 −生活−







 幹部会議の結論としてミッションへの上陸の前に、まずはミッションに住まう者達とコンタクトを取る事になった。

交渉役は上陸許可を願い出たブザムが担当、ミッションの調査をブリッジクルーに念入りにさせた上で通信を行う。

門前払いされる可能性もあったが、程なくして通信画面がオープンする。まずは一安心、という感じではなかった。


応答したのは一人の男。紳士的には到底見えない、スキンヘッドのチンピラであった。



『今時植民船時代の通信パターンを使うたぁ、何処の田舎者だ?』



 歓迎されているとはお世辞に言えない、口調。初対面の人間を平気で見下ろす、相手を馬鹿にしきった表情を浮かべていた。

通信パターンの波形に違いが出るのは、ニル・ヴァーナが元々軍艦イカヅチと海賊船との融合で生まれた戦艦であるのが理由だ。


イカヅチはタラークに上陸した植民船を利用して造られた船、通信機器も当時の物を使用している。


「何よ、あの態度」

「下品な奴」


 ブリッジクルー各員が、不愉快げに眉を潜める。不快には思っても、凶悪な顔立ちをした男には微塵も怯えていない。

男はチンピラであるならば、彼女達は海賊。国家を相手に戦う彼女達に、チンピラ程度物の数ではなかった。


「フッ……」


 ブリッジクルー達の余裕ある態度に、ブザムも鼻で笑う。頼もしくは思いつつも、咳払いをして彼女達を窘めるのを忘れない。

相手は無人兵器ではない。敵対行動に出る必要はないのだ。明らかに相手は喧嘩腰であっても、交渉は行う。

歓迎されない事など、考慮にも値しない。物怖じ一つせず、ブザムは堂々とうったえかけた。


「我々はメジェールから来た。長旅の為物資の補給と休息を必要としている」


 マグノ海賊団副長ともなれば、一見するだけで相手の大まかな実力は把握出来る。その人となりを含めて、知性レベルも明らかとなる。

相手が自分より格下と見定めても、ブザム・A・カレッサに侮りはない。端的かつ相手に理解しやすい話し方で、接点を探っていく。

まずは希望を伝えて、要求する。頭越しではなく、さりとて上目遣いにも訴えない。対等に、求める。


「しばらくの間、停泊させていただきたい」

『物資を分けろだぁ、ハン! 冗談じゃねえ、こっちは火の車なんだ』


 要求は一蹴されてしまう。話し合う余地も無い態度だが、ブザムはおろかブリッジクルー達にも失望はない。

海賊を相手にして友好的に接してくれる人間など、居ない。少なくともこの旅に出るまでは、出逢ったもの全てが敵となった。


変わったのは何時頃か、誰と巡り会ったからか――男達三人の顔を思い浮かべて、ブザムは内心苦笑する。


他者への期待は今も消えていない。現実はこうして相手に拒否されてしまっても、対話を求める心は今もしかと胸に在る。

拒絶された程度で落ち込んでいるようでは、交渉など成り立たない。断られてからが、本番なのだ。

相手の態度や会話の内容を吟味しながら、交渉の余地がないか探り続ける。


『寝ぼけた事ぬかし……ジッ……てねえで、とっとと‥…ジジッ……失せろ!』


 通信画面が揺らぎ、ノイズが走る。半ば一瞬の出来事だが、ブザムは素早くブリッジクルーの一人に目を走らせる。

セルティック・ミドリはコンソールを操作、一秒足らずで顔を上げて首を振る。通信機器に不備はない、そう告げた。


システムに、何の問題もない――ニル・ヴァーナ側の、システムには。


『こっちには優秀なエンジニア達が乗艦している。お望みならシステム修復の手助けも可能だ』

「……っ」


 男は、舌打ちする。見せるつもりもなかった弱み、避けようのないシステムエラーが出てしまった。

言い訳も許さず相手を攻め立てる交渉に、男は一瞬とはいえ怯んでしまった。吊り下げられた餌も、何とも魅力的である。


通信画面に走ったノイズは、ミッション側の通信機器に何らかの不備があった。それも、無理からぬ事。


そもそもミッションは地球が植民船時代に建造した中継基地、古い建造物で設備も時間が経過してガタが来ている。

人の住める設備もあるにはあるのだが、快適な環境とはお世辞にも言えない。所詮は旧建造物、維持するのが精一杯な状態である。

通信機器は必要不可欠な設備であり、そのメンテナンスすら怠っているというのはエンジニアがいない事を意味する。


中継基地の設備は住民にとって生命線、修復可能なエンジニアともなれば彼らにとっては救いの神に等しい。


さすがに男も断りきれず、通信画面を開いたまま顔を横に向ける。一言二言話しては頷き、承諾を得る。

やはり、ミッションのボス役は他にいる。男がその器ではないことは、最初から分かっていた。

ブザムが提示した要求も男にではなく、恐らく聞いているであろう上役に告げたものであった。


再び画面の前に立った男は、居丈高に告げる。


『此処のルールは食うか食われるか、だ。どうなってもかまわねえなら、好きにしな!』


 交渉成立、とはいえ出迎えてくれる様子もない。それどころか命の保証すらしない、手荒い挨拶で締め括られた。

上手くいったようには到底見えない荒々しさだが、対する副長の表情もふてぶてしい。


始終消えなかった微笑をそのままに、ブザムは余裕に満ちた表情で快諾する。


「マナーはわきまえているつもりだ」

『……けっ』


 こうして、ミッションとの初めての交渉を終える。上陸許可は得られた、ブザムとしては首尾は上々である。

一番最悪なのは交渉どころか会話も通じない相手、水の星アンパトスとの交渉の方がよほど難航させられたものだ。

友好的な態度であっても、こちらの意思が通じないようでは交渉など成り立たない。その点、今回の相手はやりやすい。


暴力を匂わせた交渉など、マグノ海賊団にとってはオママゴトに等しい。力でしか相手を従える術がないと、公言しているのと同じだ。


力を見せつけるという点で、海賊に勝てる相手などこの世には存在しない。久しぶりに腕の鳴る相手であった。

ブリッジクルーに上陸準備の指示を出して、ブザムは今後の対応を検討する。


(技術提供するエンジニアはパルフェが適任だろう。問題は彼らではなく、ミッションそのもの。
通信機器にも不備が生じている老朽施設、時間の経過によるガタツキか――外的要因によるものか。


万が一を考えて、メイアやカイにも指示を出しておくか。交渉の邪魔はされたくない)


 内外に敵が潜んでいる、この状態。ミッションは穴蔵そのもの、荒くれ者達が餌場としている中継基地。

危険に敢えて飛び込むという判断に、今更臆する者達はこの船には存在しない。彼らは、世界の危機にすら立ち向かえる。


平和とは程遠い、暴力の世界。救命活動にウンザリしていた海賊達は、久方ぶりの戦いにギラついた。





























<END>







小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けると、とても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。


<*のみ必須項目です>

名前(HN)

メールアドレス

HomePage

*読んで頂いた作品

*総合評価

A(とてもよかった)B(よかった) C(ふつう)D(あまりよくなかった) E(よくなかった)F(わからない)

よろしければ感想をお願いします





[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ]

Powered by FormMailer.