ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 17 "The rule of a battlefield"






Action1 −補給−







 故郷へ向かう旅、男三人と女海賊達の呉越同舟。タラーク・メジェールへの旅路で、当初より二つの大きな問題があり懸念されていた。

一つは人間関係、男と女の問題。女性蔑視、女尊男卑と、価値観の違う男女が共同生活を営んでいくのだ。衝突は不可避であった。

結局懸念は的中、殺し合いにまで発展してしまい、深い亀裂が生じて、共同生活は崩壊。全滅の危機にすら陥った。


問題を解決したのは、皮肉にも彼ら共通の敵の存在。一致団結して事を進めて敵を倒し、男女関係は正常化していった。


無論、彼ら自身の心の在り方もある。人間関係の促進には正常な心が不可欠で、社会から飛び出しても彼らは人間で在り続けた。

地球の最大勢力である母艦を倒し、メッセンジャーであるミスティを仲間にし、立ち寄った惑星の住民シャーリーを家族として迎え入れた。

正体不明の味方ソラやユメも加わり、エズラの赤ん坊も無事産まれて、人間関係にも多様性が出て心にもより良い変化が出始めている。


そんな彼らに今、もう一つの問題が厚い壁として立ち塞がった。物資の不足である。



「長距離センサーが捕らえた映像です」



 融合戦艦ニル・ヴァーナの会議室にて、海賊団お頭であるマグノを筆頭に最高幹部が集まっていた。彼女達は、一つの映像を見ている。

会議室の中央モニターに映し出されているのは、赤い恒星に照らしだされた基地。中規模の廃棄基地が、岩石群に紛れて浮かんでいた。

旅を続けていたマグノ海賊団が発見した、中継基地。植民船時代の遺跡であるこの基地の名前を、彼女達は知っている。


『ミッション』――過去に地球が建設した、植民船の航海での休息地点である。


「識別コードは『デルター6』、観測データによれば稼動中とのことです」


 副長であるブザムが淡々と説明する。会議の開催を望んだのは彼女であり、本会議の進行役を担っている。

主な聞き手はマグノ、そしてレジ店長であるガスコーニュ・ラインガウ。彼女が呼ばれたのは、幹部であるというだけではない。


薄々察しているマグノが、口火を切った。


「情報収集と――物資補給の為に是非、と?」

「はい」


 ミッションへの滞在と交渉を求め、ブザムは今回会議を通じて進言する。マグノは難しい顔を崩さなかった。

ブザムの希望は海賊達を率いるマグノにも理解出来る。ガスコーニュに至っては物資の管理も務めている、補給は願ったりであった。


先刻立ち寄った、病に冒された惑星での救命活動――多くの人間を救う事は出来たが、物資も多く消費してしまう結果となった。


彼らとて、海賊だ。物資の大切さは見に染みて分かっている。本来であれば、無料で提供するお人好しな真似はしない。

地球の企てを阻止する目的もあったが、貧困や病に喘ぐ彼らの苦境は他人事には思えなかったのだ。義賊である以上、無視は出来なかった。

身を削るほどではない。旅に必要な物資は今も確保している。ただ目減りしているのは事実であり、今後も消費する一方だ。

惑星アンパトスやメラナスで物資援助も受けているが、故郷はまだまだ遠い。出来れば、確保はしておきたかった。


「だが、必ずしも諸手を上げて歓迎してくれるとは限らないからね」


 物事をプラスに考えず、まずはマイナス方向に疑っていく。最悪を可能な限り潰していく事で、最善を導き出していくのだ。

過去一度立ち寄ったミッションではラバットと衝突してしまい、手痛い目にあった事がある。その件もあり、事前に調査していた。

結果ミッションに大勢の人間が居る事が、観測を通じて明らかとなっている。交渉が、必要とされる。

海賊という生き方が、見知らぬ人を疑う習性を与えていた。


「敵の巣窟という可能性もありますしね」


 ガスコーニュも、マグノと同様の意見だ。人を肯定せず、まず否定から始めている。彼女達には多くの部下が居る、失敗は許されない。

海賊であれど、危険を好んではいない。生きる為に選んだ選択であり、破滅願望などありはしない。危険があるのであれば避けるべきだ。

ブザムとてマグノ海賊団の副長を務める者、性善説など信じてはいない。お人好しから死んでいくのが、この世界だ。


「可能性ばかりを論じていてもキリがありません」


 けれど、この船には度の過ぎたお人好しが居る。英雄願望のある、真っ直ぐな少年。誰であろうと、性別を問わず助けようとする。

愚かにも程がある。実際彼はこれまで何度も裏切られ、傷ついてきた。死にかけたことも、一度や二度ではない。


けれど――そうした彼の生き方に、彼女達は救われた。彼が助けなければ、今生きている事はありえない。


そして救われた人達は皆彼に感謝して、強力な味方となってくれた。アンパトスの援助にメラナスの同盟、地球打倒を掲げる同志達。

危機を告げた故郷から何の返答もない以上、孤立無援な海賊達にとってこれほど心強い事はない。今は一人でも多くの味方が必要。

物資だけではない。人出という意味での、補給も必要なのだ。


「指揮は私が取ります。ぜひ、ご許可を!」


 珍しく熱のこもった進言に、マグノやガスコーニュは目を丸くする。ここまで熱心にブザムが他者の接触を望むのは、極めて稀だ。

ミッションに接触する危険性も考慮した上で、それでも危険を恐れずに進む決断。それを蛮勇だと笑う者は、この場に一人も居ない。

見知らぬ他人というのであれば、この船にいる男達三人が最たる例だろう。一番疑っていた彼らが、他の誰よりも信頼出来る隣人だった。

構築された人間関係が、新しい力を生み出している。危険があっても、跳ね除ける自信があった。


「いいだろう」


 熟考した後に、マグノが許可を出す。ブザム・A・カレッサに指揮権を与え、自分が総責任者となる。全てを任せる形だ。

物資に関する交渉事はガスコーニュが担当となり、相手側と接触する。貴重な物資ともなれば、相手も気前良く譲渡はしてくれないだろう。

刈り取りへの警戒も、決して怠らない。他の惑星同様、このミッションも地球の手が入っている可能性もありえるのだ。

加えて、無人兵器に対する対処も必要だ。一箇所に長く留まれば、彼らも攻めてくるだろう。

段取りや役割をまず決めていき、最善かつ最適な対処を検討する。事前準備にやり過ぎなどない。十分に打ち合わせする。

一度決めたら、彼女達の行動は早い。会議を滞り無く終えて、彼女達は行動に移していく。


「その前に」


 意気揚々と会議室を出て行こうとするブザムを、やんわりとマグノが押し留める。勇み足気味のブザムに、ガスコーニュも苦笑い。

ややたしなめるように、マグノは一応釘を差しておいた。


「まずは、相手に話しかけてみなきゃいけないね」

「――了解」


 ようやく自分自身の心持ちに気付いたのか、ブザムは足を止めて頷いた。浮かれている訳ではないが、力が入っていたようだ。

新しい人達との出会いが、どのような結果を生み出すのか。良くも悪くも、自分の手腕にかかっている。

それでも否定的な思考に陥らないのは、これまで出逢った人達との関係が良好に結ばれたからだろう。人々の笑顔は、目に焼き付いている。


そうして、気付く――人との出逢いを、楽しみにしている自分を。


人間関係は、未知なる領域。新しい発見があり、予期せぬ落とし穴もある。そして何より、己自身の心に変化をもたらしてくれる。

このような考え方は危険だということは、ブザムも分かっている。「本来の職務」から外れた思考、今後にも支障をきたす。



それでも――信じては、みたい。人と出会う事の、素晴らしさを。



それがきっと、孤立した地球への何よりの武器となるだろうから。


中継基地ミッション、此処が次なる彼らの試練の場となる。





























<END>







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