ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 16 "Sleeping Beauty"






Action21 −白夜−







「奴らの目標はこの惑星の住民か……なるほど、この戦力ならば我々で迎撃出来るな」


 久しぶりに良い意味で予想を裏切られたものだと、メイアは微笑する。今回の敵戦力に、新型らしき機影は見受けられない。

敵の主力はユリ型、恐らくはキューブやピロシキと同じ改良型。改良タイプは厄介だが、攻撃及び防衛手段に大きな変化はない。

余裕で当たれる相手ではないが、こちらとて敵の分析は怠らない。ユリ型については、アンパトス戦で学習済みだ。

カイやジュラを待たず出撃したメイアはドレッドチームを指揮、後衛に続くディータにも命令を下す。


「ディータ、出撃前にも説明したがお前にはBチームの指揮を任せる。出来るか?」


 良い機会だと、思った。決して侮れる敵ではないが、いざとなればフォロー出来る戦況。こんな状況は恐らく、二度と無い。

実戦経験半年の新人パイロットに、チームの指揮を任せる。異例の抜擢だが、戦力の追加が行えない以上新人を強化しなければならない。

特に、ディータはヴァンドレッドの要となるパイロット。必要不可欠であるがゆえに、必要とされる局面を増やしていく必要がある。

バーネットもパイロットを引退し、指揮官の不足も懸念されている。才能不足でも、補っていかねばならない。


『勿論です! 宇宙人さんもいないんだから、ディータがその分頑張ります!』

「分かった、任せたぞ」


 やる気に関しては、この通りだ。たった半年で見違えるほどパイロットとしての自覚も出て、心構えも出来ている。

まだ背中は預けられないが、自分の育てたチームなら任せられる。チームメイトに揉まれて、彼女はまだまだ強くなっていくだろう。

後顧の憂いもなくなり、メイアは自分の戦いに挑む。


「全機、私に続け。敵本体を、叩く!」

『ラジャー!!』


"宇宙人さんもいないんだから"


 カイは結局、戦場に姿を見せる事はなかった。この期に及んでもまだ、メイアはカイが敵前逃亡を図ったとは思えなかった。

今此処で逃げ出すくらいならば、地球母艦戦で命からがら生き残った時に逃走している。あの男の勇気と行動力は、並外れている。

となれば、考えられるのは唯一つしか無い。実験の失敗――人を救えなかった事に、嘆き苦しんでいる。


(馬鹿が……私には仲間を頼れと言いながら、自分は一人で勝手に悩むのか)


 これまで何度も、カイには助けられている。自分も、そして仲間も、命も心も救われた。自分が変わったのも自覚している。

他人を救うのには一生懸命になれても、自分を救うのには悪戦苦闘するらしい。カイの苦悩など、メイアには手に取るように分かった。

本人がどう言おうと、カイより自分の方が人生経験豊富であると自負している。忠告くらいしてやれるというのに。


(馬鹿が、いちいち悩んでいてどうする。お前は考えるよりも、まず行動に出ろ!)


 敵主力であるユリ型に向かって、標準装備のミサイルを全弾発射する。軌道はランダム、目標はユリ型の巨大な口。

ユリ型は巨大なコンテナの口を大きく広げている。この惑星で亡くなった人達の亡骸を運び出す算段だったのだろう。

水の惑星アンパトスでも、捧げられた生贄の回収に来ていた。このユリ型の役割は運搬役だった。


敵も当然、その認識はある。発射されたミサイルは、ユリ型を庇ったキューブに直撃した。


メイアは舌打ちして、ホーミングレーザーを発射する。ミサイルとは違って、ホーミングレーザーは速度がある。

ユリ型への一点集中は変わらず、爆散したキューブには目もくれない。雑魚にかまっていては、惑星に上陸されてしまう。

レーザーは複雑な軌道を描いてユリ型に襲い掛かるが、これもキューブが盾となって防ぐ。


「数に物を言わせた防衛か。知恵をつけたつもりなのだろうが、こちらは経験も積んでいる!」


 加速するのはレーザーだけではない、ドレッドもだ。レーザーを発射した瞬間、メイアはドレッドを最大加速。

ホーミングレーザーはキューブに防がれたが、彼らの横を通り抜けてメイア機がユリ型に接近。

改良型キューブが慌てて飛んで来るが、既に照準は定まっている。


「私の取り柄は足の速さだが、今日は土産を積んでおいた。存分に受け取れ」


 出撃前にオーダーした爆薬を小型機に積んで、火を噴かせて発射。次々とユリ型に飲み込まれ、口内で大爆発する。

荒れ狂う火炎に見とれず、メイアは冷静な判断で退避。キューブ型が追い付いて来た時には、メイア機は距離を置いていた。

奇襲は成功、敵の裏もかけた。敵主力にダメージも負わせたのだが、


「……やはり、改良がされていたか」


 ユリ型は、健在。無傷ではないが、行動に支障をきたすダメージではない。もう一押しが、必要となる。

アンパトス戦で得たデータを元にした攻撃手段、以前のユリ型ならば倒せていた火薬量。落胆するが、絶望には到底至らない。

少なくとも、コンテナは閉じられなくなった。敵は口を開けたまま、ミサイルでもレーザーでも入れ食い状態だ。

再度攻撃に移そうとしたその時、改良型キューブが赤く輝き出したのを見て目を細める。


「あの攻撃を食らえば、行動不能に陥る。対抗策が無い以上、回避するしかない……か」

『Bチーム、フォーメーションを崩されました!』

「何っ!?」


 攻め倦ねていたメイアに届く、戦況の悪化。観測モニターを切り替えて、戦力分布図を表示させる。

ディータが指揮するBチーム、ディータが取っているフォーメーションは防衛。攻めではなく、守りに入っている。

敵に対する恐怖でも、リーダーとしてのプレッシャーでもない。状況は悪くなったが、メイアは感心した。


「惑星の防衛を第一としたか、ディータらしい指揮だ」


 メイアは敵を一刻も早く倒す事で、惑星を救おうとした。ディータは惑星そのものを守る事で、住民の盾になろうとしている。

前向きなのはメイアだが、前向きに戦う指揮官が別チームを率いているのならば、防衛に回るのは良策だ。


二人の指揮官を念頭に置いた、フォーメーション。ディータは自分なりに、きちんと考えて行動している。


フォーメーションが崩されたのは、むしろ自分に責任がある。攻め倦ねているあまり、敵を招き寄せてしまったのだ。

新人の足を引っ張るようでは、リーダーも交代しなければならない。メイアは意思を固めた。


「惑星の防衛は、Bチームに任せる。我々は、敵の撃破を最優先とする!」


 敢えて、救出に行かない。自分達が動く事で、戦局を動かす。守りの要を新人に委ねて、メイアは一気に行動に出た。

背中を預けるには早い、その認識をメイアは苦笑と共に撤回する。予想以上に良く出来たリーダー候補だ、教育してやらなければ。


マグノ海賊団の新しい戦力、国家すら脅かす修羅達が狩り場へと出向く。















 カイ・ピュアウインド、ジュラ・ベーシル・エルデン、バート・ガルサス。申し合わせたように、三人は同時刻連絡を取った。

三人は互いの顔を見て、己の意思を告白するのを止める。顔を見れば分かるとはよく言ったもので、三人共に笑い合った。

声を上げて、笑う。自分の悩みなんて馬鹿馬鹿しかったのだと、言わんばかりに。


「いい顔してるじゃねえか。まだ落ち込んでいやがったら、ぶん殴ってやろうと思ったのに」

『お前こそ、彼女と同伴かよ。悪くはないけど、僕の可愛い友達には勝てないね』

『女の子に慰められるなんて恥ずかしいとは思わないの、アンタ達。ジュラはちゃんと親友を励ましてきたのよ』


 お互い良い友達を持ったものだと、相手を馬鹿にしながら褒めちぎる。自分一人では答えは出せなかった、結局その程度なのだ。

誰かを救おうのを当然とする思い上がり、ベクトルこそ違うが誰かと似ている。


「――連中、来ているぞ」

『ああ、懲りずにノコノコやって来たみたいだね。僕達がいるのも、知らずに』

『思い知らせてやりましょうよ、ジュラ達三人で!』


 地球人、自分達の故郷を救うべく他人を犠牲にする者達。彼らの狂気の源もまた、思い上がりから来ているのだろう。

神様気取りで力を行使して、惑星を荒らしている。人の命を、稲穂を刈るかのごとく平然と捌いていく。


彼らは、反面教師だった。今だからこそ、そう思える。


「行くぞ!」

『おう!!』


 自分で何でも出来るのならば、神様だって必要ない。出来ないことがあるから、人間なのだ。

一として生きる事を選んだ者達が今、団結する。





























<to be continued>







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