ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 15 "Welcome new baby girl"






Action4 −案内−






 融合戦艦ニル・ヴァーナに訪れた新しい宇宙人、ミスティ・コーンウェル。エズラの案内の元、彼女は艦内を見学に出る。

長い冷凍睡眠から覚めたばかりで本調子ではないが、眠ってばかりなのも健康に悪い。身体の慣らしという理由で、ドゥエロに許可を貰う。

カイまで一緒に行く義理はないのだが、基本的に出撃が無ければ暇な身分。エズラの笑顔に勝てず、同行する事になった。


ドゥエロ達とは違って、ミスティは女の子。向かう先々で、彼女は好意的に迎えられる。



「此処がメインブリッジ、故郷まで安全に航海出来るようにクルーの皆が頑張っているの。私の職場でもあるのよ」

「星が綺麗……宇宙がこんなに広く見渡せるのね」



 ニル・ヴァーナのメインブリッジは基本的に誰でも入れるが、ブリッジ内の機器に触れるのは原則禁止だ。

お頭であるマグノや副長のブザムも居るので、憩いの場所には向かない。エズラも、自分の職場を見せたかったという理由が大きかった。

そのお頭と副長が幸いにも席を外しており、ブリッジクルー三人娘とミスティは雑談に華を咲かせている。


基本的にミスティが好きではないカイは、自分の友達と喋っていた。


「バアさんは茶でも飲んでるんだろうけど、ブザムまで職務中居ないのは珍しいな」

『副長さんなら、さっきピョロを連れてコンピュータールームへ行ったぞ』


 ニル・ヴァーナの操舵手はバート一人、交代も出来ないので彼は基本的に忙しい。

今日も通常勤務で操舵席に入り、故郷へ向けて針路を取っている。とはいえ扱いにもだいぶ慣れており、自動操縦もこなせている。

こうして友達と通信画面越しに、お喋りするくらいの余裕はあった。


『あの子が持っていたカプセルの中身を解析するんだとさ』

「そういえばあいつ、何か持っていたな……でも、データの解析なら此処でやればいいんじゃねえの?
ピョロまで連れて、わざわざ本格的にやる必要もないだろうに」

『データディスクか何かみたいだけど、パルフェと君のエンジニアの話だと分析出来ないデータが一部あるらしいぜ』

「分析不能のデータ……? 何か、やばそうだな」

『副長もそう言ってた。コンピュータウイルスとか入っている可能性もあるらしいよ。
ほら、刈り取りの連中だって――』


「バート、仕事中お喋り禁止!」

「アンタは黙って船の操舵をしていればいいの!」
「気が散る」


「――容赦がないな、お前ん所の同僚」

『うう、あの子達だって喋ってたのに……』


 悪口に近い注意だったが、バートは泣きながらも黙って頭を下げる。彼女達が何を必死で注意しているのか、悟ったからだ。

ミスティが眠っていた救命ポットを狙っていたのは、マグノ海賊団だけではない。無人兵器を率いる、地球側もだ。

ガスコーニュがリーダーの回収班を攻撃し、護衛のメイア達ドレッドチームを改良兵器で散々苦しめた。


ヴァンドレッドシリーズを使用すれば容易く撃破も出来ただろうが、彼女達はカイを休ませる為に自分達の力だけでやり遂げた。


冷凍睡眠していたミスティは勿論の事、休暇中で休んでいたカイも知らない事実。彼女達は、何も知らせなかった。

嘘はよくない事かも知れないが、知らなくていい事実もある。平和であるに越した事はない。

泣く泣く口を閉ざしたバートを見て、叱られて落ち込んだのだと誤解してカイは笑う。三人娘はその顔を見て、ホッとした。


「そろそろ私達、仕事に戻るわね。またお昼ご飯でも一緒に食べようよ、ミスティ」

「うん、ありがとう! じゃあ私、行くね」

「お仕事中、ごめんなさいね」


 最初は物怖じしていたミスティも、アマローネ達と喋っている内に少しは歩み寄る事が出来たようだ。

明るく手を振って別れ合う彼女達を、エズラは優しく見守っていた。反面、カイは複雑である。


気兼ねなく会話出来るようになるまで、半年もかかった俺は一体――初めて、自分の人徳の無さに肩を落とした。















「あらあら、カイさんじゃありませんか。貴方のザラザラなお肌は、わたくしのエステシャンでもどうにもなりませんわよ。
紙ヤスリでお肌を丁寧に擦った方が綺麗になるのではなくて? オホホホホホ」


「……何、あんた。ここの人達とも仲が悪いの?」

「……出会い頭にここまで嫌味を言われるとは、俺も思わなかった」


 次に案内したのは女性のお肌の味方、エステルーム。海賊船には不釣合な施設だが、女性の利用率は此処が一番高い。

エステルームの管理者であるチーフはエステの第一人者とだけあって、見目麗しい女性である。

そんな彼女だがカイを強烈にライバル視しており、害意こそないが会う度に敵対意識を向けられる。

カイ本人は特段意識していないだけに、チーフとしても面白くなく殊更嫌味をぶつけられる。


「ところで、貴女。今日新しくいらしたお客様ですわね?」

「は、はい。ミスティ・コーンウェルと言います。よろしくお願いしま――きゃっ!?」

「冷凍保存されたお肌というのは、このような感触なのですか……実に、貴重な素材ですわ。
長い間氷漬けで眠っていて、貴女もお肌が気になるのでしょう。特別に、わたくしが手入れして差し上げますわ!

さあ、どうぞ。そちらのベットの上に」

「い、いえ! 今日は遠慮しておき――やああああああぁぁぁぁっ!!」


「……連れて行かれてしまったけれど、いいのかしら?」

「お肌の具合が気になる年頃なんでしょうよ」


 エステクルー総員で運び出されたミスティに、カイは満面の笑顔で手を振って見送る。エズラも流石に、困り顔だった。

お客様に、無礼な真似を働かない。決して弱い者虐めには発展しないと、カイも分かっているから笑っていられる。

エステチーフの崇高な職務意識と高きプライドは、女性の美を守る為に在る。無粋な涙で、頬を汚したりはしない。


――とはいえ、遊び心も過ぎるのが彼女の欠点でもあるのだが。



「おお、お肌がツヤツヤじゃないか! 可愛いぞ、宇宙人」

「……裏切り者」



 十分後――血色の良いお肌に磨き上げられた少女が涙目で、囃し立てる少年を蹴り飛ばした。















「服を脱いで」

「な、何ですか、いきなり!」

「君、ここで服を脱いで」

「……ちょっと、この船変態しかいないの!?」

「何故俺に言うんだ!?

……ずっとその服を着たままで、冷凍睡眠で長い間眠っていたんだろう?
冷凍されていたから汚くはなっていないだろうけど、一応洗濯するから脱いでほしいと言ってるんだ」

「この子小さいけれど、クリーニングチーフなの」


 エズラさんの紹介で、ようやくミスティも胸をなで下ろす。エステルームでの出来事が、とんだ恐怖体験となってしまったのだろう。

クリーニングルームは特段見学するような場所ではないが、生活には欠かせない施設である。

ミスティが今後ニル・ヴァーナで生活を営むのであれば、施設に案内しておいた方がいいというエズラの配慮だった。


エプロンに三角巾のチーフは、今日も元気に働いている。


「でも、私この服しか無くて……脱げと言われても、困るんですけど」

「エプロン、かしてあげる」

「いや、エプロンだけかりても!?」


「カイが喜ぶよ」


「やっぱりアンタも変態じゃない!」

「何故俺に弁明の機会を与えないんだ!?」


 丸裸にエプロンのみ――少女は羞恥に震え、少年は寒さに震える姿を想像するに留まる。妄想に悶々とするには、少年は若すぎた。

ミスティと一緒に行動していく内に気付いたが、やはり同じ女性でもメジェール人とは価値観が若干異なる。

水の星アンパトスや惑星メラナスで住んでいた住人に似た、男女が隣り合う世界の文化が少女に根づいているようだった。


だからこそ、理解し合うのが大切だと分かっているが――そもそも相性が合わないので、つまらない理由で揉めてしまう。


「靴下もあるよ。ソックス」

「ハイレベル、ハイレベルだわ!? 乙女には無理ですって!」

「ニーソなんぞいかがでしょう?」

「エプロンの方がまだマシです!」


「……どんな次元で揉めているんだ、お前ら……」


 結局ミスティの衣服は洗濯機行き、その代わりに運動用のジャージを支給されて渋々着替える。

地味な格好だが、見栄えのする容姿の少女。野暮ったい服装でさえも、少女の可憐さを惹き立ててしまう。


エズラに褒められて、ミスティは恥ずかしそうに俯いたという。















「ハァ……わたし、何だかお腹が空いちゃった」

「俺も腹が減ったな……おふくろさん、カフェテリアにでも行く?」

「ごめんなさいね、色々連れ回しちゃって」

「いえ、楽しかったです。皆、本当にいい人――じゃ、若干変だけど、その、優しくて……」

「素直に変人揃いと言え」

「アンタほど、憎たらしい人はいなかったわよ!」


 ニル・ヴァーナ主要施設を巡って、ミスティもすっかり元気になっていた。体力は戻っていないが、精神的に落ち着いている。

カイとも相変わらず言い争いばかりだが、険悪な雰囲気ではない。仲の悪い友達が小突き合いしている感じだ。

カイもミスティも、根は善人である。喧嘩はしても、相手を陥れたりはしない。

二人の間に流れる空気が少しずつ変わってきて、見ているエズラの表情も穏やかだった。


「喧嘩ばっかりしては駄目よ。美味しい御飯を一緒に食べて、仲直りしましょう」

「うん! ねえ、カフェテリアってどんなメニューがあるの?」

「今日はデザートの日で、美味しいケーキが――」


 言葉が途中で止まる。連れ立って歩いていたエズラが、急に視界から消えてしまった。


怪訝な顔をしてカイが振り返ると――エズラが、蹲っていた。


「エズラさん……エズラさん!? どうしたの、大丈夫!?」

「うっ……う、う……」

「どうしたんだ、おふくろさん!? しっかりしろ!」



「……う――生まれ、る……」



 妊娠が発覚して、半年以上が経過。新しい宇宙人に、新しい生命――

男女関係が変わりゆく中で、少年と少女は今試されようとしていた。






























<to be continued>







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